君たちはどう生きるか 感想


一昨日、スタジオジブリ制作『君たちはどう生きるか』を観てきました。
去年の夏頃、帰省中に2回見たきりだったので何だか久しぶりでどきどきしました。

というのも、私が宮崎監督を心から尊敬していて宮崎監督がつくる作品がだいすきだからです。美術の世界を選んだのも彼の存在が大きく影響しています。
そんな人の作品を見るんですから、いつだって心躍ります。


〈感想〉君たちはどう生きるか

※ネタバレあり
※個人的解釈あり
※考察・解説ではありません


初めて見たとき、アニメーションの凄さと物語に感動し恥ずかしながら劇場で何度も泣いてしまいました。
作品について何の情報も入れずに見たので特に難しいことは一切考えず、作品を見て素直に『あぁ、素晴らしい素晴らしい』と思いました。

◯アニメーションについて

人物の仕草や動き方、動植物の描き方とても面白かったです。冒頭の火事のシーンなんかは、父の後を追って階段を登る眞人の動きやそのカット割。
病院の方へ向かって走っているときの姿、熱が籠った火のねっとりとした激しい動き。
あっという間に作品の中に入り込んでしまいました。

余談ですが、階段を登る眞人を見て、子どものころのことを思い出しました。昔の古い家に住んでいたため、階段一段一段の幅が狭く傾斜が急でした。急いでいるときは手の力も使って安全に早く登れるよう自然と四足歩行になるんです。何気ない動作ですけど何だか懐かしい気持ちになりました。 

脱線したので話戻します...
青サギ、インコ、ペリカン、鯉、蛙と生き物もたくさん登場しますが、やっぱり青サギは印象的でした。青サギの飛ぶときの翼や魚を飲み込むまでの大きな動きとても良かったです。(青サギからサギ男が出てきたとき、映画ポスターを思い出して「お前かー!!」とすっきりしました)

他にもヒミが纏う炎やあちらの世界の荒波、インコたちが現世に戻り小さなインコに変わるシーン、大叔父のいる世界が崩壊するシーン、言い出したらキリがないくらい見応えがあります。
個人的に、ワラワラがいたあちら世界の描写が好きです。

そして、宮崎監督の過去作品を彷彿させるようなカットが多くありましたね。
具体例を出すと、眞人が玄関で焦って靴を脱ぐときに足をばたばたさせる仕草やヒミを助けるため青サギと眞人が壁を伝う構図などがとなりのトトロや天空の城ラピュタ、千と千尋の神隠しなどを想起させました。



◯キャラクターについて

先ほども書きましたが、やはり青サギの存在は大きい。とてもずるくてキュートなキャラクターですよね。
はじめは、お前を食ってやるなんて言ってたけど眞人と共に夏子のもとへ行くとき喧嘩しながらも助け合っている姿にフフ、としました。

のちに、眞人は宮崎さんでアオサギは鈴木さんがモデルになっていると雑誌で知りました。インコ大王も大叔父も...他の登場人物もまたジブリの関係者や実際の宮崎家がモデルになっているとか。
それらを知った上でもう一度見ましたが、これまた面白い。

そこで語りたい人物が若かりしキリコさん。
私、キリコさんお気に入りのキャラクターなんです。雑誌SWITCHの「ジブリをめぐる冒険」では、鈴木さんがキリコのモデルはスタジオジブリの色彩設計をしていた保田道世さんだと発言していましたね。
作品内では、眞人を導く案内人のような、理由は違えど同じ傷を負った戦友のような、眞人とサギ男を繋ぐ仲介人のような人物だと思いました。
眞人の先を歩く姿がなによりかっこいい。
強く逞しく、大胆でいて想う心もある。理想の女性像です。

そしてちょっとだけ最後に。
眞人のお父さん、勝一について。
何なんですかあの人は。眞人の登校初日に車で派手に登場したり夏子のつわりを疲労だと言ったり。悪い人ではないのですが、デリカシーがなく身勝手な行為を純粋な好意でやっていそうなところが何とも言えません。
あの父親の質感ったら本物でむずむずします。
私の父も勝一に少し似ているので、何だか自分のお父さんを見ているようでした。



◯物語について

いやぁ、なんというか、重い。
タイトルからちょっと構えてしまいました。
作品と同名の小説である吉野源三郎著、君たちはどう生きるかは高校生のときに読みましたが内容はほとんど覚えていません。
しかし、コペル君が叔父さんとのやり取りを通して大切なことは何か、誰かではなく自分で考えるということ、何だかリンクする部分があると思いました。
それから、物語の内容ではなく、当時その本を読んで思ったことを覚えています。
「これ、中学生のときに読みたかったなぁ」と。
確か、このセリフを母にも言いました。
なぜかそれだけは覚えてます。
忘れていることばかりなのでまた読み直そう。

話を戻しますが、本編は小説の内容とは異なり自伝的要素が多く含まれたファンタジー作品。
母親父親のこと、実際にあったエピソードを描き起こしているそうです。
宮崎さんの描くファンタジーたまらなく好きなんですが、今回は話の根底に人間の生々しい感情や生き方があるように思ったので、そのリアルさに引っ張られて異世界と現実世界の境界が曖昧にみえました。
また、大叔父の屋敷のように西洋的な建物もあれば疎開先の日本家屋もあるので現実世界にいても何だか不思議な感覚でしたね。

いちばん胸打たれたのは、眞人が学校の帰り道、クラスメイトと取っ組み合いをしたあと自傷行為をしてしまい、それがラストシーンで回収されるところ。大叔父の継承を断り「この傷は自分でつけました。僕の悪意の印です」と言う場面。
なんて正直で誠実なんだと思いました。
そう思えたのはきっと、アオサギやヒミに出会えたこともそうですが、母からもらった本が大きく彼の心動かしたんでしょうね。

眞人のいう悪意は、父と夏子へ向ける戸惑いや苛立ちなどの複雑な感情からなのか学校で喧嘩した生徒を悪者に仕立て上げるためだったのか、さまざまな悪意がきっとあるでしょう。
良いも悪いも全て受けとめて胸に刻み、自分の道を歩む。それが眞人の決めた答えだったのかなと思います。

◯最後に

「悪意」は、きっと誰にでもある。
私にもあります。子どもの頃だって、いじめられていた反動で家族や弱虫には生意気になったりクラスメイトの弟を悪く言って家に入れてやんなかったり...もっと醜いこともしました。
成人しても覚えているものです。

そんな思いもこめて「私はこう生きたい。こう生きよう。」と考えて約半年間、私はある1つの作品を制作していました。
(そこで、ちょっとした詩も書きました。
1個前の記事に『郷里』というタイトルで投稿していますので暇な時にでも読んでみてください)






眞人、年齢の割に対応が立派で声も落ち着いていたから大人ぽい子だなと思っていました。
しかし、青サギと啀み合ったりヒミから受け取ったパンを頬張り顔をジャムでいっぱいにしていたのを見て深く頷きました。

以上

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