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光るヘルメット

光るヘルメットを手に入れた。
バイク用ではなく自転車用で、スポーツタイプらしく流線形をしている。

最近自転車は車道を走らなくてはいけなくなった。しかし、世のクルマの運転手さんたちはまだ車道を走る自転車の存在に慣れていない感じだ。
特に夜などは暗くて自転車の存在が分かりにくく、危険が伴うので、自分の存在は自分でアピールせねばならない。
かくいう私は昔から自己アピールが得意なほうだ。
ということで、光るヘルメットを買った。前後にLEDがついていて、スイッチを入れると点滅する。前は孫悟空の頭の輪っかのようなラインが白く光り、後ろは中抜きされた正三角形が赤く光る。

その後、ヘルメットを買ってから中古の自転車を買った。自分ながら順序が逆だと思う。個人売買アプリを利用したので、夜に新宿で引き取りをした。引き渡し前に、ちょっと乗ってみてください、と持ち主が言うので乗ってみた。といってもビルの前で小さい円を1,2周描いただけだ。
持ち主にみられていると少し恥ずかしい。そして、こんな短距離で車両に異常があるかなどわかるわけがない。それよりも早くヘルメットを試したい!
持ち主にスマホの画面を見せながら、受け取り完了ボタンを押す。別れ際、寒くて風が強いから気をつけてください、と彼は言った。きっと大丈夫だ、私には光るヘルメットがある。

寒波で関東北部に雪予報が出るほど寒い日だった。甲州街道もビル風が凄い。
自転車がふらふらする。車道の左端を走っているつもりでも、時々車線の真ん中の方に吸い込まれそうになる。
クルマがいつもより間隔をあけて、自分の自転車を追い抜かしていく。
きっとヘルメットがアピールしてくれているおかげで、運転手さんが配慮してくれるのだ。

頭上で点滅するLEDのライトは本当に明るい。駐車禁止や止まれの標識が反射してピカピカしている。上を見上げると道案内の青看板もピカピカする。
これならUFOが襲来しても明るく照らし出して、地球防衛軍のみなさん、UFOはあそこです!、といち早く知らせられるかもしれない。もしかしたら、頼りない地球防衛軍よりも、自分が孫悟空の筋斗雲に乗って、如意棒で一撃かました方がいいかもしれない。

そうこう考えているうちに高井戸まで着いた。さすがに寒くなって、暖かいものを求めてコンビニに入った。
ペットボトルのホットレモンをレジに置くと店員が怪訝な顔をしている。
しまった、ライトの電源を切り忘れた。
光るヘルメットは油断すると少し恥ずかしい。

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