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組織開発×プロセスワークVol.3~組織課題の解像度を高める~

昨今の組織開発ではエンゲージメントサーベイ、360度サーベイなど組織・個人のサーベイ結果をもとにアプローチすることが当たり前になりました。一方、サーベイ分析だけでは、組織の本質的な課題を明確にできない、フィードバックをしても現場のアクションに繋がらないといった声も多く耳にします。

それは、サーベイだけでは組織の変化を阻害する重要なステークホルダーの感情や組織の力動を拾うことができてないからではないでしょうか。また、サーベイは「経営者や人事・組織開発担当者のためのもの」に留まり、現場にとって「自分たちのもの」になっていないとも考えられます。

今回は事業責任者や現場ミドルの皆さんが自分たちの悩みを解決していく手段として組織開発に取り組むための、プロセスワークの知恵を活用した「組織のプロセス構造分析」をご紹介します。もちろん、経営や人事・組織開発担当者の皆さんが現場目線で組織の課題を捉える上でも非常に役に立つのでぜひご活用ください。


マッピング&ドリーミングプロセス

まずは組織に関わる重要なステークホルダーを具体的に描き、起きている事象や事柄など事実ベースで情報を整理していきます。誰もが関わりやすく、共通のイメージを持ちやすい部分から始めていきます。

その後、組織やメンバー間の関係性について、役割や行動といった目に見えやすいものだけではなく、組織の中にある感情や対立、認識の違いなど氷山の下に隠れている部分を浮き上がらせることで、組織に対する見立てが立体的になります。

その後、バルコニービューとダンスフロアという二つの視点を行き来しながら気づきを得ていきます。より俯瞰した目線からそれぞれの立場について捉えていくと同時に、当事者として一人ひとりの声を明らかにしていくことで、これまで見えていなかった課題が立ち上がってきます。結果として「組織の客観的な課題」が「自分たちの生々しい課題」になり、より具体的なアクションへと繋がる可能性が高まります。

なお、このアプローチは人事や組織開発担当者などの支援者が取り組むことでも組織の見立ての解像度が上がりますし、実際に当事者となる組織メンバーで実践することでより大きなインパクトがあります。

バルコニービューでの対話

プロセス構造分析を深める鍵を握るのが「バルコニービュー」「ダンスフロア」での対話です。

「バルコニービュー」に立つ目的は、一段高い視点から物事、考え方、システム、自分自身を眺めることであり、「アウェアネス/気づき(≒メタ認知)」を高めます。組織開発における課題の多くは正解がなく、対話しないと解決できない適応課題が多く、以下のような観点から組織に関する洞察を深めていきます。

その際、役に立つのが「6象限モデル」というものです。個人・集団・社会という3つの観点それぞれに「見えるもの/見えないもの」があります。組織の変化には多様な要素が影響を与えており、1つの象限のみで問題は発生していません。これらの各象限から組織の状態を深めていくと、組織課題の真因が明らかになり、具体的なアプローチの順序・優先順位を決めやすくなります。

ダンスフロアのロールプレイ

次に「ダンスフロア」に降りていきます。ロールプレイ形式で役割になりきり、それぞれの言い分や主張について対話を深めていきます。「ダンスフロア」の目的は、当事者としての声を十分に味わうことです。俯瞰して見ているだけだと見失うものがあり、客観的にこうだろうと思っていることが当事者になりきってみると実際には全然違ったりします。

具体的にはステークホルダーマッピングで描いた組織図・人間関係、具体的な事柄を参考にしながら、テーマとなる組織の課題に関して、4つのステップでロールプレイを進めます。基本的には複数人で実施し、さまざまな立場になりきって組織の中にある声を明らかにしていきましょう。

なお、自分たちが当事者ではない組織の支援を想定してロールプレイをする場合には、それぞれが自分が取りたいロールに立ち、ロールを行き来しながら、そのロールになりきって対話を行います。(適宜ロールを変更しても大丈夫です。)

ロールプレイになれていない場合は、「ロールになりきって対話する」ことに難しさや気恥ずかしさを感じる場合もあります。自分たちの組織についての葛藤や対立を声に出しきることに怖れや不安が立ち現れるものですので、基本的には外部のプロのファシリテーター/コーチを招いて実施することをオススメします。

自分たちでまずは実践してみたいという場合には、下記のヒントを参考に取り組んでみてください。

◆ロールプレイのヒント
・頭を少しだけ緩めて感覚を大事に。楽しむくらいの気持ちで!
・私は〇〇ロールです!となりきる
(気分や感覚、姿勢も含めて役者を演じる)
・〇〇ロールは「~と言ってそう」「~だと思いますよ」などはロールに入り切れていないシグナル。声を出すときはそのロールから声を出してみる

振り返りによるアウェアネス

最後にバルコニービューとダンスフロアの視点を統合し、洞察を深める「アウェアネス」のステップに入っていきます。脳とカラダを切り替えながら、以下の観点を参考にしながら新たな気づきを生み出していきましょう。

◆アウェアネスを生み出していくための振り返り
・俯瞰する視点から何に気づくだろう?
・異なる立場の視点はどう見えるだろう?
・演じてみるとシステムや別の立場はどのように見えるだろう?
・自分の役割立場にも改めてなって全体を見る。今までと異なる洞察はあるだろうか?

ここまで、現場での組織課題の解像度を高めていくアプローチとして、「プロセス構造分析」の進め方を説明してきました。そこから見えてきた対立や葛藤をマネジメントする具体的な対話手法については次回以降ご説明しますが、ぜひ実際に頭と身体を動かしながら取り組んでみると自分たちの組織に関する新しい洞察があるのではないでしょうか。

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