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組織開発×プロセスワークVol.5〜関係性と対立を扱う〜

組織開発の中で大きなテーマの1つが「人・組織の関係性」「対立」をどう扱うかです。
多くの企業が組織変革に取り組む際に必ず直面するのが「関係性」に関するエッジであり、様々な人が相互依存し複雑に絡み合うシステムである組織において、「関係性」を扱わずして本質的な変化を生み出すことは不可能とも言えます。


よくある「関係性」の問題

組織システムをみる時には個人と集団に目が向きがちですが、組織の効果性を高めるためには「関係性」そのものを見る目を養うことが大切です。問題が起きているのが、戦略や仕組みなどシステムの在り方なのか、個人の能力や特性なのか、あるいは「関係性」の問題なのか、を明確にすることでより最適な介入方法が見えてきます。

まずは組織内の「関係性」の中で、起こりがちな問題を理解しておきましょう。
一番身近なものだと「上司部下」の関係性ではないでしょうか。特性やスタイルが合わないと思われることも多いですが、視点が違うため認識がズレるということはどんな組織でも必ず起きていると思います。
特定のグループ(チーム)の中での関係性も多く話題に挙がりますが、雰囲気が悪いと漠然と感じている状態もあれば、1対nもあれば、グループの中の誰かと誰かの関係性など様々な問題があり、解像度を高めていく必要があります。

また組織開発でよくテーマに挙がるものには、部門間の関係性や経営と現場の関係性があります。部門間でいうとサイロ化や利益相反などにより適切な協働ができていないといった話も多く聞きます。経営と現場の関係性は、トップダウン・ボトムダウンにかかわらず適切なコミュニケーションが取れていないことや、経営チームの関係性が現場に影響を与えているなども多いのではないでしょうか。

まずは、どの関係性が一番課題になっているか、レバレッジポイントになるかを踏まえ、介入すべき関係性を見立てていきましょう。

社会や組織の対立には「見えやすいもの/見えにくいもの」があります。自然界には「極」が現れると言われており、対立が起こる根底には「極」の意見が隠れているとも考えます。まずは自分たちの組織の課題の背後にどのような「対立」があるか、ぜひ気づきを深めていきましょう。

このような「関係性と対立」へのアプローチは、組織開発を推進する上で近年その重要性が高まってきており、多くの人が関心を持つ領域ではないでしょうか。「関係性と対立」を扱うことはプロセスワークの真髄です。

同時に私たちは「対立」との向き合い方から考えていく必要があると考えています。そこで今回はまずプロセスワークにおいて「対立」をどのような存在として捉えていくかにフォーカスして解説をしていきます。

組織やチームの4つのフェーズ

そもそも対立とは避けるべきものでしょうか。
対立が好きな人は少ないかもしれないですし、できれば対立は避けたいと思う人が多いと思います。一方、日常の様々なシーンで私たちは無自覚に対立を煽っているのもまた事実なのではないでしょうか。

私たちは「対立」という概念そのものと対立していて、それについて考えたくないのです。(アーノルド・ミンデル)

プロセスワークは、そのどちらでもない、「対立の炎にとどまる」というアプローチをとることで組織に新たな洞察を生み出します。対立は自然(タオ)の一部であり、対立が現れる意味を理解した先に私たちは一つになれる、対立から新たな可能性が生まれると考えます。

特に昨今のVUCAの時代において、対立は「潜在的な力」です。変化が早く複雑な時代では、一人ひとりが置かれた環境や見えている景色が異なります。そのため、お互いが本気で「会社のために・・・」と思ってやっていることが、実は正反対になることもあります。この時、この対立を避けたり、なだめたりするとどうなるでしょうか。それぞれの立場から見えていることが両方「正しい」からこそ、そこから深い対話が行われることで、新たな、そしてより高い次元の答えを組織として導けるようになるのです。

ミンデルが提唱する「組織やチームの4つのフェーズ」が示すように、組織やチームの変化のプロセスにおいては必ず緊張や対立がエッジとして現れます。
変化を強いられる時には次なるステージの在りたい姿が描かれ、現状との間にギャップが生まれ、それを超えていくためには異なる意見をもったもの同士の対話が必要とされます。

関係性の質を高める際に、「相互理解・共通認識」の重要性はよく語られますが、本当の意味でそこに行き着くには、まずは「対立」構造を表面化させる必要があります。浮上しない立場や声が抑圧されて変革を進めると、結局はリベンジに会います。組織開発が失敗する代表的なパターンの1つが、まさに対立を回避して進めようとすることによるものです。

対立の炎にとどまる

対立に直面した際には「回避」「混乱」という2つのパターンのいずれかが起こりがちです。しかし、回避すれば揺り戻しが起き、混沌が生まれると組織全体のパフォーマンスが落ちます。そこで「対立の炎にとどまる」という新たなパターンが必要になります。

まずは緊張と対立に意味があることを理解し見えるようにすること、そこからスローダウンしながら、それぞれの立場を意味あるものとして明確にしていくことが必要です。
その後、どちらか一方が「相手の言い分を受け入れて変化する(エッジを超える)」ことで、今度は相手方も変化するというフェーズに入ります。エッジを超えると士気が上がり、あるべき姿に向かいます。

ぜひ「対立の炎にとどまる態度」も参考にしながら、組織の中で起きている対立・葛藤への向き合い方を改めて考えてみましょう。

【対立の炎にとどまる態度】
・対立は自然の一部である
・対立、分断はある
・対立の先には新たな次の未来が生まれている
・対立を通じて調和をつくる
(平和を守ろうとすると対立を周縁化させてしまう)

組織開発では「関係性における対立」は組織の変化を阻害するホットスポットになりうる部分であり、怒り、諦め、願い、期待など様々な感情がうごめく瞬間でもあります。

ここにどう対処するかが成否の分かれ目になるとも言えます。本質的な変容を実現するためにまずは「対立」という概念に対する捉え方や向き合い方をアップデートしていきましょう。

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