兵藤恵昭

山登り・温泉・博徒の墓巡りが趣味。博徒史に興味を持つ団塊世代。Noteブログは読書記録…

兵藤恵昭

山登り・温泉・博徒の墓巡りが趣味。博徒史に興味を持つ団塊世代。Noteブログは読書記録ブログです。 特定社会保険労務士・兵藤社会保険労務士事務所。 「博徒ブログ」も開設。下記URLクリックして下さい。https://blog.goo.ne.jp/shigeaki0303

最近の記事

財政維持か?棚上げか?「財政規律とマクロ経済」

「財政規律とマクロ経済・規律の棚上げと尊守の対立をこえて」齊藤誠著・名古屋大学出版会2023年10月発行 著者は1960年生まれ、名古屋大学経済学部教授。専門はマクロ経済学、金融財政論。 日銀総裁が交代して1年、やっと異次元緩和終了を迎えつつある。その間、財政規律論議は棚上げ状態だった。その理由は膨大な政府債務があっても、「借りっぱなし」状態が可能であり、財政破綻も起こらなかったためである。 マクロ経済学の大きなテーマは規律棚上げ派と規律慎重派の対立だった。「借りぱなし

    • 成長の世界システムが終わる!「戦争と財政の世界史」

      「戦争と財政の世界史・成長の世界システムが終わるとき」玉木俊明著・東洋経済新報社2023年9月発行 著者は1964年生まれ、京都産業大学教授。専門は近代ヨーロッパ経済史。「手数料と物流の経済全史」などの書籍がある。 本書は、米国社会学者・ウオーラーステルがいう「近代世界システム」を出発点とする。「近代世界システム」とは16世紀ヨーロッパで誕生した各国がお互いに競争する中でヘゲモニー国家として経済を支配するシステムである。 近代世界システムとは「持続的な経済成長」を前提と

      • 中小企業・スタートアップ企業を読み解く

        「中小企業・スタートアップを読み解く・伝統と革新、地域と世界」加藤厚海ら共著・有斐閣ストウディア2023年9月発行 著者は岐阜大学、東北大学、北海道大学の3名の教授よる共著である。 中小企業は日本経済の主役である。現実はゾンビ企業的に生産性向上の足かせとも言われる。本来は地域の主役、技術基盤、イノベーションの主役である。本書は横断領域としてスタートアップ中小企業の研究である。 中小企業の特徴は手作り、手仕事による生産が主体で、徒弟制度的人材育成、汎用機による多品種少量生

        • 日本はなぜ出生率が上がらないのか?「縛られる日本人」

          「縛られる日本人・人口減少をもたらす規範を打ち破れるか」メアリー・C・プリントン著・中公新書2022年9月発行 著者はライシャワー日本研究所所長、ハーバード大学教授。専門はジュンダーの不平等、労働市場、日本社会の研究。 先日、2023年韓国の合計特殊出生率が0.76、OECD加盟国で1.0を切っているのは韓国のみ。日本は2022年時点1.26。2023年は1.20程度まで低下の見込み。合計特殊出生率は女性一人が生涯に産む子供の平均値である。 人口が急減する日本は、なぜ出

        財政維持か?棚上げか?「財政規律とマクロ経済」

          「昭和街場のはやり歌」昭和の実相を問う!

          「昭和街場のはやり歌・戦後日本の希みと躓きと祈りと災いと」前田和男著・彩流社2023年8月発行 著者は1947年生まれ、日本読書新聞編集部を経て、ノンフィクション作家、翻訳、路上観察学会事務局、パルシステム生協連合会編集長。「男はなぜ化粧をしたがるか」集英社新書、「選挙参謀」太田出版の著書がある。 著者は団塊世代の生まれ、戦後日本の「はやり歌」は「今日より明るい明日が来る」と思わせるチアアップソング。団塊世代はまんまとそれに乗せられ、無邪気に育った。 半世紀が過ぎ、「な

          「昭和街場のはやり歌」昭和の実相を問う!

          生成AIは日本をどう変えるか?「デジタル社会の罠」

          「デジタル社会の罠・生成AIは日本をどう変えるか?」西垣通著・毎日新聞出版2023年11月発行 著者は1948年生まれ、日立製作所を経て、東大大学院教授。「超デジタル世界」岩波新書等の著書がある。情報学の第一人者である。 生成AIの賛否が問われ、社会にどのような影響を与えるか話題となっている。本書はAIが日本にどう影響するかを予想する本ではない。生成AIは「汎用知」つまり知性を持つ機械になるのか?を問う科学論である。 本書は、「科学技術と人間」「読書日記」など、2021

          生成AIは日本をどう変えるか?「デジタル社会の罠」

          「賃金の日本史」

          「賃金の日本史・仕事と暮らしの1500年」高島正憲著・吉川弘文館2023年9月発行 著者は1974年生まれ、日本銀行金融研究所を経て、関西学院大学教授。専門は経済学、「経済成長の日本史」などの著書がある。 19世紀前半頃、江戸の大工の生活の記述が「文政年間漫録」に載っている。 1年で60日休み294日働く大工。日当は銀4匁2分、飯米料(一種の手当)1匁2分、現在価値で合計10,800円である。年収は銀1貫587匁6分(310万円)夫婦子供の3人で、支出は飯米代銀354匁

          「賃金の日本史」

          円の実力とはなにか?為替の通貨戦略

          「円の実力・為替変動と日本企業の通貨戦略」佐藤清隆著・慶應義塾大学出版会2023年12月発行 著者は1968年生まれ、横浜国立大学教授、国際社会科学研究院長である。 本書は円の実力とは何か?円の国際化は進んだのか?日本企業の円建て決済はなぜ進まないのか?を問う。そこには日本経済の実力の低下、日本企業の競争力の低下が根底にある。それを証明するのが実質実効為替レートの減価である。 実質実効為替レートは通貨の購買力の強さを示す。この減価は物価水準の国内海外の差を表し、経済成長率

          円の実力とはなにか?為替の通貨戦略

          東アジア反日武装戦線の直接行動

          「直接行動の想像力・社会運動史研究」松井隆著・新曜社2023年10月発行 著者は1970年生まれ、武蔵大学社会学部教員である。 先日、東アジア反日武装戦線さそり所属の桐島聡が死亡した。40年以上逃亡生活の末、がんによる死去である。本書の特集「直接行動の隘路・東アジア反日武装戦線をめぐって」は、彼らの行動に対する歴史的、思想的分析である。 著者は三菱重工爆破事件が起きた1974年8月の3年前に生まれた。事件は著者にとって歴史的事実に過ぎない。ゆえに客観的かもしれない。著者

          東アジア反日武装戦線の直接行動

          西郷を支えた言葉「西郷隆盛手抄言志録」

          超訳言志録・西郷隆盛を支えた101の言葉」・濱田浩一郎著・すばる舎2017年発行 著者は1983年生まれ、歴史学者、作家、評論家。大阪観光学研究所客員研究員。 本書は西郷隆盛が生涯愛読した佐藤一斎「言志四録」から101条を選び、書き留め手元に置き、西南戦争の戦いの中でも持ち歩いた。自決後、その行方は不明だった。 宮崎日向の旧高鍋藩主・秋月種樹が、西郷の叔父・椎原国幹の家で発見した。明治21年「西郷隆盛手抄言志録」として世に出し、明治天皇にも献上された。 西郷は最後まで

          西郷を支えた言葉「西郷隆盛手抄言志録」

          「訂正する力」東浩紀

          「訂正する力」東浩紀著・朝日新書2023年10月発行 著者は1971年生まれ、出版社「ゲンロン」創業者、現在は評論家、専門は哲学。 自民党派閥の裏金問題が騒がしい。政治とカネは今に始まった話ではない。長年なんとなく変化もなく、自民党政治は続いてきた。政治、社会を「訂正する力」が日本国民にないのだろうか? 日本人に「訂正する力」がないわけではない。しかし「訂正する力」は上から与えられるものと日本人は勘違いしている。そこには日本人特有の思想風土が影響している。 丸山眞男は

          「訂正する力」東浩紀

          グローバルインフレは財政インフレか?「グローバルインフレの深層」

          「グローバルインフレーションの深層」河野龍太郎著・慶応義塾大学出版会2023年12月発行 著者は1964年生まれ、BNPパリバ証券チーフエコノミスト。 コロナ危機後に急激なインフレが世界を襲った。そのインフレの原因の一つは先進国の大規模な財政政策、もう一つはインフレを供給ショックによる一時的なものと誤認し、中央銀行が利上げに立ち遅れたことによると著者は主張する。このインフレを「グローバルインフレーション」と呼ぶ。 その中で日本は長年デフレが続いたが、超円安の輸入価格上昇

          グローバルインフレは財政インフレか?「グローバルインフレの深層」

          トヨタはEV戦争に勝てるか?「トヨタのEV戦争」

          「トヨタのEV戦争・EVを制した国が世界の経済を支配する」中西孝樹著・講談社2023年7月発行 著者は1962年生まれ、山一証券、メルリンチ証券、モルガン証券調査部長を経て、自動車産業調査部門トップのアナリストである。 2023年豊田章男氏は社長を佐藤恒治氏に交代、新体制に移行した。トヨタは円安で好業績を維持するも、多くの課題を抱えている。 ディーラー不正車検、ダイハツ、豊田織機認可不正のガバナンス問題、EV化の遅れ、トヨタの強みだったトップ決断ワンチーム体制など、順調

          トヨタはEV戦争に勝てるか?「トヨタのEV戦争」

          「ガザとは何か・パレスチナを知るための緊急講義」

          「ガザとは何か・パレスチナを知るための緊急講義」岡真理著・大和書房2023年12月発行 著者は1960年生まれ、早稲田大学文学学院教授、京都大学名誉教授。専門は現代アラブ文学、パレスチナ問題。「ガザに地下鉄が走る日」等の著書がある。 イスラエルのガザ攻撃のニュースが話題である。新聞、メディアはテロリスト・ハマス奇襲とイスラエル軍空爆、地上戦を二項対立で語る。「暴力の連鎖、憎しみの連鎖から何も生まれないと・・」ハマスはテロリストか? ハマスはイスラーム抵抗運動を行う軍事部

          「ガザとは何か・パレスチナを知るための緊急講義」

          佐藤一斎「言志四録」を読む

          「最強の人生指南書・佐藤一斎言志四録を読む」斎藤孝・著祥伝社新書2010年6月発行 著者は1960年生まれ、明治大学教授。専門は教育学、コミュニケーション論で多くの著書を持つ。 「言志四録」は佐藤一斎が42歳~82歳までの40年間の語録をまとめたもの。言志録・言志後録・言志晩録・言志耋録の四書からなり、全体で1133条となる書籍。本書はここから100条を選び、解説する。 佐藤一斎は60歳で昌平坂学問所のトップとなる。儒学、朱子学、陽明学から荘老思想の流れの道教も修めた儒

          佐藤一斎「言志四録」を読む

          日本の財政政策は正しい?「21世紀の財政政策」

          「21世紀の財政政策・低金利、高債務下の正しい経済戦略」オリヴィエ・ブランシャール著・日経新聞出版2023年3月発行 著者はマサチューセッツ工科大学名誉教授。専門はマクロ経済学。著書に「格差と闘え」がある。本書は2023年度ベスト経済書に選ばれた。 本書は1995年以降、先進国は低金利、高債務の状態にあるという。とりわけ日本は失われた30年と言われ、インフレ目標の未達、巨大な財政赤字、GDP比250%の巨額債務に苦しむ。では日本の財政政策は失敗だったのか? 著者は、日本

          日本の財政政策は正しい?「21世紀の財政政策」