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【番外編】オリエンタル中村のカンガルー

小学校時代を名古屋市の東部で過ごした。
お世辞にも裕福ではなく、当時のことで外食もあまりせず、母親が縫った服を着ていたが、ごくまれに「おでかけ」をすることもあった。

そのころのおでかけ先といえば
オリエンタル中村。
名古屋の栄交差点に鎮座していた百貨店である。
今は三越になっているが、ビルそのものは残っている。

所用で名古屋市の中心部に行く機会があった。
ひつまぶしには目もくれず、向かったのは、三越。
いや、私にとっては、オリエンタル中村。
もう一度会いたかったのだ。

すでに記憶も薄れてきてはいるが、
ファサード(外観)を見ていると
「そうそう、ここ、ここ」と
つぶやきたくなる。

エレベータに乗った。
二人くらいしか乗れない小さなエレベータに歴史を感じる。
最上階に行き、懐かしの屋上に出ようとするが、
どこにも屋上へ続く階段が見あたらない。
店員に聞くと、ワンフロア下から屋上に出られるとのこと。
「でも、何もありませんよ」と怪訝そうに言う店員さんを
笑顔でかわして、屋上へと向かった。

たしかにそこには屋上遊園地はなかった。
コンクリートの打ちっぱなしが広がっている。
だが、いたのだ、なつかしのカンガルーが!
今は、このビルの正面には、三越らしくライオンが座っているが
そこにはかつてカンガルーの像が立っていた。
ライオンに席を譲ったカンガルーは、今、屋上で余生を送っている。
雨を凌げるように作られた簡易なテントに
カンガルーへの愛を感じてホッとする。

オリエンタル中村の正面にいたカンガルー像

そして、その向こうには、もはや営業はしていないが、観覧車が残っていた。

どちらも残っていてくれてありがとう!

トップの写真は、岡本太郎展名古屋会場で撮影したもの(この展覧会は撮影可)。
そう、かつて、オリエンタル中村の壁には巨大な太郎作品が飾られていた。

ビルも老朽化が目立ってきていた。
あと何年、頑張ってくれるだろうか。
また会いにいくことができるとよいのだが。