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664日前の手紙

娘と一緒におかたづけをしていると、クリアファイルに挟まれた手紙が出てきた。
一昨年6月3日、夫が娘に宛てたものだ。

当時、彼はくも膜下出血発症後の急性期を抜け、リハビリ病院に転院したばかりの頃だ。
意識ははっきりとしているものの、体調はまだまだ万全ではないし、元通りには動かない身体をもどかしく思いながら必死に訓練を重ねていた時期。
それなのに、普段通りの美しい字…日付も書き込まれ、律義さを感じずにはいられなかった。

「パパはこの頃、手がいつもみたいに動かなかった頃だ。一生懸命時間をかけて、娘ちゃんに書いたお手紙だったんだね」
そう声をかけると、娘は手紙を大切そうに読み始めた。

さて、おかたづけを任せてキッチンに行くと、しばらくして娘が追ってきて、私をさすり、腰に手を巻き付け抱きしめてきた。
甘えるそぶりとは違うそれに嬉しくも驚き、「どうした?」と訊ねると、「ひみつ」との返答。

あとから気づいたが、気づかないふりをしておいた。
あの夫からの手紙には、こう書いてあったのだ。

娘ちゃんに、おねがいがあります。ママもたくさんがんばっています。いっぱいよしよししてあげてね。いっぱいぎゅーってしてあげてね。

2020年6月3日の夫へ。あなたのメッセージは、2022年3月29日のあなたの娘に、しっかりと伝わっていますよ。
あの日も、今日も、ありがとう。


…続きを書かなきゃなあ。マガジンでは、まだ急性期病院にいるところ。



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