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madokajee×Azul 009

『 La Vie en rose 』

雨上がりの公園を歩いていた。
ふと見ると、花や葉に雫を湛えた一輪のバラ。
僕は不意に思い出した。雨の日に走り去った彼女のことを。

大雨の中、僕の傘の中から飛び出して、強い眼差しで僕を見つめた後、
捨て台詞さえ吐かずに走っていった、あの後ろ姿。
僕は強い眼差しに気圧され、追いかける気にもなれなかった。

「どっちも若かったんだよ、しょうがないよ」

誰に言うでもなく言い訳をしながら、しゃがんで葉の雫をはらう。
彼女がその後どうしているのか、どこにいるのかも全くわからない。
きっとどこかで彼女らしい人生を送っているだろう。
僕はゆっくりと立ち上がって、もう一度バラを眺めた。
さあ、もう行こう。
僕は僕の人生を生きる。


Title&Text:madokajee
Photo:Azul+halo