『結婚式の加害性』トレンド入りに見る、被害者の加害性
『結婚式の加害性』というすさまじいワードが、Twitterでトレンド入りしていた。
これまたとんでもない言葉が生まれたな…、と呆れつつ、いったい何の騒ぎなのかを調べてみたくなった。
検索をかけてみると、ワードに対する批判からご祝儀に関する話、自分の結婚式の思い出漫画などが跋扈していた。わけがわからないよ。
今夜はなんとなく眠れないので、今回はこのトレンドの経緯と、個人的な考えをメモしておくことにする。
何の騒ぎか気になる人も、これを読めばだいたいの経緯はわかると思う。
少なくとも、Twitterの生の瘴気に触れるよりは、ストレスも少ないだろう。
火元はどこ?
調べてみると、事の発端になったのは、ある弁護士さんのツイートだったようだ。
どうやら、先日、大阪地裁が出した『同性婚を認めないのは合憲』という判決に関する騒ぎを受けてのツイートのようである。
このツイートに呼応したのか、別の人も意見を書き込んでいた。
これが今回のトレンドにおける、直接の火元だと思われる。
※今回引用した4つのツイートに対して、特に批判の意図はないことをここに明記しておく。
リツイート数を見るに、大元のツイートではなく、こちらの連投のほうが注目を浴びたようである。
そして現在、『結婚式の加害性』という言葉が一人歩きし、たくさんの意見が交わされているというわけだ。
元のツイートに大きな問題があるというよりは、言葉だけが拡散されて爆発したというのが実際のところだろう。
経緯としては、それだけの話である。
あとはいつものTwitter
『結婚式の加害性』というワードがトレンド入りした経緯を把握できたところで、現在の交わされている意見を眺めてみる。
大元の同性愛者の苦痛について語る声は多くなく、現在は『結婚式の加害性』というパワーワードにドン引きする意見が多数のようだ。さらに、結婚式の加害性という言葉に腹を立てている人も多く見受けられた。
なかには男女論にまで言及している人もいた。さすがはSNS界の悪魔玉、Twitterである。
ただ、さすがにバズりすぎて、何がどう変化して結婚式の加害性という言葉が一人歩きするに至ったのかは確かめようがなかった。
よほどの根性がない限り、これ以上インターネット伝言ゲームを掘り下げるのは難しいと思う。
なので、こんな話題は記憶から消して、美味しいお茶でも飲みましょう!!良い一日を!!
~以下、個人的な考え~
しかし、結婚式の加害性というパワーワードの爆誕には被害者意識が少なからず絡んでいるのは間違いないだろう。
ドン引きしている意見でも、頻繁に被害者意識に関するツッコミが入っていたし、僕も同じ感想を持った。
では、結婚式で生じる被害者意識とはなんだろうか?
結婚式にまつわる被害には、大きく分けて2つのパターンがあると僕は思っている。
1つ目はご祝儀だ。
結婚式に招待された人は、ご祝儀としていくらかのお金を支払う。
一般的な相場は3万円となるが、今の時代では大金だ。
みんなが正社員でご祝儀を払えたのは遠い昔の話で、今は3万円で生活が傾く人も多い。
2つ目は純粋に、モテ非モテの問題で、個人的にはこちらのほうが大きいように思う。
2020年の調査によると、男性は4人に1人を超える割合で生涯未婚となるようだ。女性は男性ほど高くはないが、かつてに比べると相当に生涯未婚率が高くなっている。
また、最近では20代独身男性のデート未経験率4割という数字が大きな話題となった。
そんな時代の中で、親族同僚のみならず、友人を招いて結婚式を挙げる人は、それだけで勝ち組になるのである。
パートナーとなる異性を射止め、結婚をためらわないだけの能力や仕事があり、なおかつ友人を招ける程度には後ろ暗くない人生を歩んでいるということになるからだ。
一方で、その日を生きるのに精一杯で、とてもじゃないが恋愛や結婚にリソースを割けない、またはリソースを割いているのにうまくいかない人……、ありていに言えば生涯未婚候補の負け組に属してしまう人がいる。
(キツい物言いだが、僕もそうなので許してほしい)
両者の格差が広がる中で、結婚式という行事は、負け組にとってはかなりキツいものがある。金銭的にも精神的にもだ。
そして、この格差が縮まることはほとんどない。
勝敗は複利となって、さらなる格差を招くことになるからだ。富める者はますます富み、貧しい者はどんどん貧しくなっていくのが大多数の現実である。
資本も人間関係も、恋愛も結婚も同じことだ。
未婚者がそのまま未婚者で居続ける現代において、他人の結婚式で払った祝儀が返ってくる見込みはない。
負け組にとっての結婚式は、見たくもない勝ち組のサクセスストーリーの見物料に3万円を支払うという、ただの苦行になってしまったのだ。
結婚式を明るいカツアゲと称した人もいるが、これでは一理あると言わざるをえないだろう。
皆婚社会は昔話であり、『お互い様』の精神も過去の遺物なのだ。
とまあ、このような背景による被害者意識が悪魔合体して、『結婚式の加害性』というパワーワードが生まれたんだろう。
というのが、僕の推測だ。
要は
『他人の幸せを有料で見せつけられてモヤモヤした』
ということだ。
負け組の一人として気持ちはわからなくもない。
ただ、さすがに『結婚式の加害性』は言い過ぎだ。
他人の幸福を許せない人は、やがて加害者になる
不幸で苦しい状況にいると、人は他人の幸福を受け入れられなくなる。
いつの時代も他人の幸福を妬むのが、不幸な人間の常だ。
幸せを祝うにもそれなりの幸せが必要という、身も蓋もない話でもある。
ただ、多くの意見にあるように、他人の幸せに噛みつくのはどうかと思う。発端は被害者意識だったとしても、その意識を盾に相手を攻撃すれば、立派な加害者になってしまう。
自分が正義の被害者であると考えているときに、人はもっとも残酷になるものだが、今回の『結婚式の加害性』というワードには、ほとばしる被害者意識を感じずにはいられない。
他人の幸せを見て傷ついたと攻撃するのは、単なる当たり屋でしかない。
被害者意識は誰にでもあるし、結婚式を素直に祝える人がどんどん少なくなっているのも事実だ。
それでも、被害者意識のままに他人を攻撃しないように、僕も気を付けていきたいと思う。
結婚式に限らず、他人の幸せに対する姿勢を整えておくことは重要だと痛感した出来事だった。
コロナ禍でも火種になっていたので、今後もことあるごとに、結婚式は槍玉にあげられるに違いない。
被害者意識による攻撃があふれている世の中だが、結婚式くらい気にせずやってほしいと思う。
~余談~
ここまで読んでストレスを抱えてしまった人のために、結婚式に招待された時の僕の対応を書いておく。
僕もまともな道から脱落した負け組だが、数少ない旧友から結婚式の招待状が届くことがある。気が重くはなるが、結婚式に招待したいと思ってもらえることが嬉しくもあり、なんとも複雑な気分になる。
ただ、僕は結婚式には出ないと決めているので、申し訳ないと思いつつ、毎回欠席の返事を出している。
式場のようなかしこまった場が苦手なのもあるし、自分の落第人生の答え合わせをされている気になって、しんどくなるだろうなと思うからだ。
その時は、ラインや電話で謝罪を伝えたうえで、お祝いしたい相手なら、次に会った時にお祝いの品を渡すようにしている。
正直、今の時代はそれくらいでいいと思っている。
(一度、テレビ電話でいいから参列してほしいと言われ、ヒナまつりの瞳ちゃんみたいな形で出席したことがあるが、それはそれで別のキツさがあった)
そんなこんなで、結婚式には基本行かない僕だが、それで怒られたり、関係が悪化したことはない。
それで縁が切れるなら、その程度の関係だったと思うだけだ。
とはいえ、付き合いで半強制的に出席しなきゃいけない人もいるだろう。
そういう人が穏やかにいられるよう、微力ながら祈らせていただく。
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