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自家製キムチ脇先輩、助けて

血脇守之助と言っても知っている人は少ないと思います。
しかし、この人に多いに助けられた人物の顔は現在、殆どの日本人が毎日のように見ていると思います。
千円札の肖像、野口英世。キムチを作りながら英世と血脇先輩の逸話を妄想した記録。


材料

白菜    1/4
韮     1/2把
昆布   好きなだけ
大蒜   1片
塩麹   結構多め
干し海老 一つかみ
塩    多め
粉唐辛子 好きなだけ
蜂蜜   大匙1

福島県三ワ村に明治八年(1876)に誕生した野口清作が後の英世。
1歳の時、誤って囲炉裏に手を突っ込んでしまい、左手が癒着、開かなくなってしまいます。
母のシカは自分が目を離したために、我が子が障碍者になってしまった自責から懸命に働き、清作に学問を身に付けさせようと学校へやります。
清作も母の心に応え、優秀な成績を納めて、高等小学校に進学。農民の子で当時、そこまで進学する人は珍しかった。


大蒜を摺り下ろす。

子供は残酷で、清作の左手はよくからかわれていました。
それでも学問に励んだ清作、自分の左手について書いた作文を褒められ、生徒達の前で朗読。それを聞いた生徒達はこれまでの仕打ちを恥じて、皆でカンパを集めて、清作の手を開くようにしようと盛り上がり、集まった金で優秀な医師に頼んで、ついに清作の左手は完全ではないものの開くように。
このことに感動した清作は、自分も医師を志す。ここまではよく偉人伝とか伝記で語られる。子供の頃に読んだ伝記ではその後、黄熱病の研究の話に飛んでしまう。清作がどうして英世になったのかも語られない。何故かという理由をこれから語ります。


ざく切りにした白菜に塩を塗して10分置く。水分を出すため。

20歳になった野口清作、医師開業試験の勉強をするために上京を決意。それを促したのが同郷の先輩、血脇守之助。
優秀な清作を送り出すためにと村中から寄付が集まり、それを抱いて上京した清作が真っ先に向かったのは遊郭。
それまで見たこともなかった大金が懐に入ったことから、気が大きくなってしまったようで散々に浪費。上京後、二か月で素寒貧。
そこで清作が思い出したのが、上京したら訪ねて来いと言った血脇先輩。血脇先輩に散々に無心する日々。


韮を3センチ巾に切る。

血脇先輩も打ち出の小槌を持っている訳ではないので、困ってしまう。
そこで清作は血脇先輩に医療のアドバイス等を的確に行い、血脇先輩を補佐して、病院を任される程に出世させる。優秀なので知恵と知識はあった訳。こうして血脇先輩の収入も上昇。清作にもお手当。
実際に清作は頭脳明晰で医師開業資格に医師免許も1年で取得。英語、ドイツ語、フランス語をほぼ独学でマスター。どういう頭?
いつまでも血脇先輩にたかっていることを少しは恥じたか?順天堂大学で働き始め、次いで北里柴三郎の助手へ。


昆布を細切り。

この頃に英世と改名。
優秀さが認められて清国疫病防衛隊に選ばれて、内務省からの渡航費用を手にした途端、例の病気。浪費癖。
またまた遊郭へ。本当に金と女にだらしない。
またもやすっからかん。
頼る先はやはり血脇先輩。
血脇先輩、ついに女房の高級な着物を売り払って渡航費用を工面。
これには奥様、ぶち切れ。
「どうして、あんなろくでなしに支援してやるのか。今まで一度でも貸したお金を返したことがありますか」
「あいつから見返りなどは期待していない。自分にお金が戻らなくでも、あいつの研究が世界に返れば、それでいい」というのが血脇先輩の答え。


水気を絞った白菜に昆布、韮、塩麹、唐辛子、干し海老を混ぜる。

清国でかなり稼いだ筈ですが、帰国した時の英世はやはり無一文。この人の頭に貯蓄という言葉はない。
アメリカで研究したいと考えた英世ですが、渡航費用もなし。
その頃、斎藤ます子という医師を志す女性と知り合い、婚約。持参金をます子の親から頂く。周囲からもお金を借り合わせて米国への渡航費用が出来た。
まとまったお金が出来ると、英世が行く所は一つ。
遊郭。
酔って気が大きくなり、派手に金をバラまいて、1日でまたもや渡航費用を溶かします。
頼る先はやはり血脇先輩。


しっかり混ざった。

血脇先輩や小学校の恩師等々から費用をかき集めて、どうにか渡米。
ペンシルバニア大学医学部の助手を経て、ロックフェラー研究所の研究員に。つまり野口英世はDS側の人間ということです。だから紙幣の顔になっているということ。
まあ、それは兎も角、毒蛇の研究等に従事。
研究に熱中すると3時間しか睡眠を取らず、頭脳明晰に加え、作業のスピードや正確さから高い評価。
金と女にだらしなくても、研究者としては超一流。
そんな英世にも頭痛の種がありました。


蓋をして重し。このまま冷蔵庫で一晩。

斎藤ます子との婚約。ます子は日本に置き去り。研究に没頭する英世にはもはやます子と結婚する気などなし。遠く離れているので猶更。
相手の親は当然、怒ります。持参金を返せと矢のような催促の手紙。
結局、持参金を返すことに。血脇先輩が。
何で?


一晩置いてから、出て来た水気を切る。

散々に迷惑を蒙った血脇先輩。アメリカに来たことがありました。その時に英世は付きっきりであちこちを案内。
「今まで色んなことがあったが、すべて忘れよう」という血脇先輩。
「あなたからの御恩は決して忘れません。どうか私のことを昔のように清作と呼んで下さい」と英世。


自家製キムチ脇先輩、助けて

一晩置いて、白菜も韮もしんなりして、塩麹で発酵。蜂蜜が辛みや塩味を中和してコクが出た。昆布のフコイダンは糖質や脂質の吸収を抑える。免疫力も向上。白菜や韮から各種ビタミン。唐辛子のカプサイシンは脂肪燃焼効果と正に美味しい健康食。

金と女にだらしなく、人にたかりっぱなしの私生活。これは小学生向けの伝記にはとても書けません。
誤解して欲しくないのは、私は別に野口英世を非難しているのではありません。人間とは多面体。いい所もあれば、そうではない所もある。
英世が行った梅毒スピロヘータの培養、狂犬病や黄熱病の研究は医学の進歩に大きく貢献したのは間違いない事実。
突出した功績もあれば、突出しただらしなさもあったという振れ幅が大きい人物が野口英世だったと思います。
野口英世と彼の面倒をとことん見た血脇守之助を妄想しながら、自家製キムチ脇先輩、助けてをご馳走様でした。

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