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ふき

ふきを炊いた。

ほれぼれする色。
まるで宝石のように。
この色をなんと名付ければいいのか。
和色なら近い色がありそうだけど、まさにこの色はないかもしれない。ふき色としか言うしかないような。
皮を剥きながらうっとりする。
その香りでさらに顔がほころぶ。
ふきと聞くだけでこの香りを思い浮かぶ。

最近は通年で食する野菜も多いけれど、ふきはこの時期にしか出回らない。だから、見かけるとつい買ってしまう。長いから籠にも袋にも入りきらない。そのまま手に持ち肩にかける。

下処理はあまり凝ったことはしない。
方針でもこだわりでも何でもなく、単に面倒なだけ。
まず湯をわかす。
ふきは四分の一くらいの長さに切る。
あまり短く切ると皮を剥くのが面倒だけれど、長いと鍋に入らない。鍋に入るギリギリの長さをねらう。
まな板の上で塩をふり板ずりする。
そうこうしている間に湯がわく。
沸いた湯にふきを入れて二分~三分。
水にあげる。
ニ、三回水をかえる。
冷めたふきの皮を剥く。
水に浸す。
タイトル写真はちょうどこの時のもの。
一番色鮮やかな瞬間である。

そして煮る。
出汁と、砂糖、塩、醤油を少々。
出汁は粉末。
調味料はほんとうに少々である。
そして煮るのもニ~三分。
火を切ってなじませる。
レシピにはふきを取り出して冷ませとあったが面倒なのでそのまま冷ました。
今日は少し醤油を入れすぎた。小さじ半分くらいでいいのに、勢い余って小さじ八分目くらい。ま、いいか、と思ったのは間違いだった。
ふきというのはデリケートな野菜だ。
ほんの少しの醤油で風味が変わる。
冷ますときにふきを取り出さなかったこともよくなかったかもしれない。

ふきは私の中で特に好きな野菜である。
まず香りを楽しむ。
ふきでしか味わえない独特の香りである。
皮を剥くのは面倒ではあるが、この香りで楽しいものとなる。
一口かじった時のあの感触。
そして口いっぱいに広がる煮汁。
ふきであることをやさしく主張する。
香りと味を同時に楽しむ。

ふきって、他の国でも食すのだろうか。
出汁と醤油で炊く以外のレシピを知らなかったりするんだけど。

ふきが春を教えてくれた。


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