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ものづくりの躍進を目の当たりにした、名古屋の旅

今年の2月下旬に名古屋とその近郊を巡ってきました。
いつもは新幹線で通り過ぎてしまう、名古屋。
一番の目的はライブの遠征でしたが、正直それ以上に印象深い旅となりました。

一番印象に残ったのが、タイトルの「ものづくりの躍進」を目の当たりにしたこと。あくまで自分勝手な感想ですが、わずか3日間の旅でしたが、時代とジャンルを超えたものづくりの現場を体感できました。

一日目:現代アートと民芸と手仕事と

谷口吉生《豊田市美術館》1995年
ジョゼフ・コスース《分類学(応用) #3》1995年
美術館正面入口:雨が床面を反射させて、これもひとつの見所となっていた。
吹き抜けの展示室がとても気持ちよく、十分に美術館の雰囲気を堪能できる。
美術館は高台にあるため、雨の日でも景色は良好。

訪れた当日はあいにくの雨。
国内でも屈指のモダニズム建築の美術館は高台にあり、アプローチからエントランスまで距離があるため雨の日は少々難ありでしたが、白い建造物とファザードの垂直な関係が印象的で、ここまで来たんだなと感動。
特別展も開催中でしたが、どうしても美術館建築のほうに目が行ってしまいます。そのくらい、天井という概念を忘れてしまうほど吹き抜けの空間が心と体を開放させてくれました。

豊田市は自動車産業で経済面からしてうるおっていますが、
文化面からは先程の近現代アートと、民芸・手仕事のアプローチも見逃せません。

古陶磁研究家であり名古屋民藝協会会長も務めた豊田市名誉市民・本多静雄(ほんだしずお:1898-1999)の尽力により、日本民藝館(東京・駒場)が改築される際、その一部(旧大広間と館長室)を本多が譲り受け、豊田市へ寄贈しました。そして、それらを豊田市が整備し、1983(昭和58)年に現在の第1民芸館が開館しました。その後、1985(昭和60)年に第2民芸館と茶室勘桜亭(かんおうてい)、1990(平成2)年に第3民芸館が開館しました。そして2016(平成28)年には旧本多静雄邸を豊田市民芸の森として一般公開を始めました。

現在、豊田市民芸館は愛知県唯一の公立の民芸館として、展覧会や手仕事によるものづくり講座の開催を通じて、民芸品の調査、研究、普及活動に努めています。

豊田市民芸館公式HPから引用
メインの展示館
第二民芸館:こちらで関連のグッズなどが購入出来ます

東京駒場にある日本民藝館の建物の一部が寄贈されたということもあり、
美術館のお堅い雰囲気はなく、お宅に訪問しているような親しみやすさを感じられました。
敷地のある建物では愛知県内の現代の作り手による手仕事が展示されており、時代を超えて手仕事が日々受け継がれ躍進し続けていることを目の当たりに出来ました。

モダニズムと手仕事。
真逆とも感じられるけど、モダニズムも現代アートも民芸もすべては一人の人間が手から生み出したものにかわりなく、古から継承されてきた手仕事も現代の私たちから見たらモダンに感じられます。
上手く言葉に出来ませんが、めぐりめぐっているなと思いました。
今後もどのように進化し地域に根付いていくのか期待しています。


二日目:江戸から現代から未来へ

国宝犬山城:織田信長の叔父である信康が1537年(室町期)に築城。
天守から木曽川を望む景色は、当時からさほど変わらないはず(!?)
犬山口駅まで続く城下町の通りは、この交差点から突然昭和レトロ漂う商店建築に変わります。

名古屋駅から電車で約30分、国宝犬山城の天守は現存する日本最古のもの。
三大武将:信長、秀吉、家康がそれぞれ手にして天下人への成り上がったとされています。私が国内で訪れた中でも屈指の絶景。
支配下の城下町、敵の襲来がひと目でわかるとはこのことかと感激。
名もなき職人たちが作り上げあげた権力と美の象徴です。

次に訪れたのは、第一の目的:ライブ会場のお隣にある、リニア・鉄道館。

エントランスからこの迫力。【鉄】分補給開始!
歴代の車両展示コーナー。
実際に見たことや乗車したことないのに、懐かしさを感じます。
いくつかの車両は実際に中に入ることが出来ます。
間近で車両を目の前にすると、子どもだって、若者だって、外国人だって、
誰でも妙にテンション上がります。

「ファミリー、お子様向けかな」とたかをくくっていましたが、
正直めちゃくちゃ楽しめました。懐かしさ、歴史的な功績、ものづくりの熱意、そして未来的な鉄道の世界を堪能。
鉄道好きでなくとも、展示の中で、「ここが好きなんだよね」という推しポイントが個人個人で存在するんだろうなと感じました。
最後には親子や子どもたちが夢中になってる中、私も夢中でミュージアムショップでいくつか購入していました、、、

三日目:世界のメーカーたる所以

紡績、製糸、織機、実演、実演、実演___
テキスタイルを学び、現在もそれに関わる仕事に従事している私にとって、
この場所は行かざるを得ない、というよりやっと来れた、という感動で終始ニヤニヤが止まりませんでした。

ほんの少しだけではありますが、
聞いたことのある機械や製造方法が展示物にあるだけで「久しぶりだな」と気持ちがあたたかくなる瞬間がいくつもありました。

そして何より、実物が展示されているということ。
そして動いているということ。(実演)

ただでさえ、現在稼働している織機などの部品は製造中止になっていたりと
「枯渇部品」がほとんどで中古でまかなわれていることが多いそう。
展示実演されているものを保全されている方に尊敬の念を抱いてしまいます。
*前職、織物メーカーに勤めていたのでついつい熱くなってしまいました。

糸車(いとぐるま)の手紡ぎから機械化へ。
まさに工場。奥までぎっしりと織機関連の機械が並んでいます。
途中途中に係りの方が実演をしてくださいます。
織機は数知れない部品の集合体。
動かし続けるには、人の手で保全していかなければなりません。
懐かしいジャガード織機。もはや重機並みの迫力。
もちろん自動車の開発現場も再現されています。
建物の中に当時の工場が再現されています。
このような光景を目の当たりにすると、
名もなき職人が何人も関わっているのだと改めて感慨深いです。

すっかりこの記念館の展示物たちに魅了されてしまいましたが、
これこそがものづくりに対する情熱とビジネスセンスが繋いだ現在なのだと感じるとともに少し恐ろしくもなりました。

最後に

今回の旅の目的がライブの遠征でしたが、結果が「ものづくりの躍進を体感する旅」に変わっていました。
今なおとどまることを知らず、勢いそのままに進化し続けているものづくりの現場を訪れることが出来たことが何よりの収穫です。
これで名古屋のものづくりを知った気にならずに、また自分を奮い立たせるために訪れても良いなと思いました。


最後までお読みいただきありがとうございます!

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