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8年ぶりに新しく人を好きになった瞬間のこと

最近私に彼氏が出来た。 

7年一緒にいたパートナーとお別れしてから
1年半後のことだった。
人を好きになるという感情や
彼氏が出来ることの意味や影響を
18歳の頃の私は何も分かっていなかった。
ただ大切にされていることは感じていたが
私から相手を大切にする気持ちは
今思うと足りていなかったのかもしれない。
ギブしてもらうばかりの他力本願生活。
というのも、高校生の時に自分の人生を
揺るがす出来事が起きてから
どこか自分が自分ではないような、
自分が生きていることすら悪だと
毎日思うような人間になってしまった。
人から求められることを快感に覚え、
好きではない人でも私の事を好きと
言ってくれたら満足だと思える時期もあった。
そういう人たちに私は生かされていた。
人から大切にされていても
私は人のことを大切にすることが
出来ていなかったように思う。
いつかまた独りになる、自分の需要は
一時的なものでしかないと感じていた。

しかし希死念慮だけでもなかった。
当時の私には趣味があった。
アイドルの追っかけという趣味は
自分のことを忘れさせてくれる。
好きなアイドルのライブを見ることで
自分の命がまだあることを後悔する
瞬間がいつの間にか減っていた。
アイドルを好きになってから
かれこれ10年が経とうとしている。

そんな私にも、好きな人が出来た。
新しく人を好きになるのは8年ぶりだった。
8年前のことは正直覚えていない。

前のパートナーとお別れしてから
恋愛に対してのハードルがものすごく上がった。
大人になったからだとも思う。
恋愛に関して、社会に関して、
様々なことが見えてきたからこそ
軽率に人と付き合えない自分がいた。
付き合うということは、その人の人生も
背負っていく覚悟がないと私には無理だった。
1人の生活と2人の生活は別物で、
彼氏が出来ることで妥協しなければいけない
部分も増えてくると思うと
なかなか彼氏を作ることが出来なかったのだ。
というのは、言い訳のひとつで
正直好きになれる人と出会えなかった
というのが正解だろう。
そしてまた、人のことを信用出来ない
裏の自分がチラチラと見えてきて
男の人と二人でいるとゾワゾワするのだ。
この人は何目的で私と一緒に居るのだろうか、
何故私に会うのだろうか、と考えてしまう。
単純に楽しむことが出来ないのだ。

しかし、いつまでも一人でいる生活は
正直寂しいし未来が描けない。
自分の5年後を想像できないのだ。
やはり私には需要がない、と
希死念慮で頭がいっぱいになる。
一人でいると頭がおかしくなりそうで
一緒にいてくれる誰かと過ごすという
日々を繰り返していた。

彼と出会ったのはそんな日々の中だった。
私たちの出会いは、アプリである。
マッチングのアプリをやる自分に対して
私もとうとうここまで堕ちたか...と
残念な気持ちにもなったが
こうでもしないと恋愛に対して
積極的な自分はこの歳になるといないのである。
強制的に恋愛モードへと切り替えて
自分の未来を想像していきたい、
そんな気持ちで始めたのだ。

彼と会う約束をしていた前日に
私が朝まで飲酒してしまったせいで
重度の二日酔いを発動させてしまい
約束の日を変更してもらうところから始まった。
リスケをする=会わない
というのが私のデフォだった。
最悪な女だが私はそういう人だ。
しかし、何故かタイミングが合い
実際に会うことに成功したのである。

会う前からLINEや電話で連絡は取り合っていた。
初回の電話は、気づいたら2時間くらい
話しており、終了後自分にドン引きした。
電話で話すほど、この人が今までどんな女性と
付き合ってきたのかや好みの女性が気になってきた。
自分に自信が皆無のため
それを聞いて自分とは全く違う場合は
会うのも辞退しようという魂胆だった。
そしてトントン拍子で話が進み
実際にエンカウント出来たという話である。

最初は特に何も思わなかった。
正確に言うとガチガチに緊張しており
何も感じることが出来なかった。
話すうちに緊張が解けてきた気もするが
彼の表情があまり変わらないため
私とのこの時間が嫌なのではないかと
思いながら過ごしていた。
会話の中で、
どうしてそんな目をするのだろうか
どうしてそんな表情が出来るのだろうか
今何を考えて何を感じているのだろうか
という疑問もあった。
悪い意味ではない、様々なことを
経験してきた人間は目が違う。
生き様が顔に出るのだ。
それを私は知りたかった。
例えその目や表情に意味がなくとも、
私は彼のことをもっと知りたいと思った。
また、彼は自分らしく生きていた。
それが凄い伝わってきた。
当時の自分は、こうでなければいけない
という脅迫観念に近い先入観や
新規事業立ち上げを計画していたため
自分の民度や意識を変えていかなければ
いけないタイミングでもあり
本来の自分を乖離させようと必死な時期だった。
髪を染めたり、ピアスをして働きたい
という気持ちが私にはある。
しかし看護師をやっている以上
そのようなお洒落が出来ないのだ。
彼は、髪を染め、ピアスをしてタトゥーも
入っていてアイデンティティがあった。
私は自分のレゾンデートルを常に探していた。
彼を見た時に、なんて自分らしい
生き方なのだろうと衝撃を受けた。
衝撃というのは言い過ぎだと
思われるかもしれないが
何故か私は彼のような人に出会ったことがなかった。
どんな仕事をしていても
自分らしく生きる人が1番カッコイイのだ。
自分らしく生きるということの本質を
言葉で伝えるのは難しいが簡単に言えば
作られた自分ではないということだろうか。
彼に、自分らしくいるところが良いと思った
という話をしてもピンと来ていなかったが
当時の私が忘れていた、やりたくても
出来なかった、我慢していたことを
彼は彼自身が表現していたのである。
深みがある人間だということを
初めて会った時に思ったのだ。
そのタイミングで恋に落ちていたのかもしれない。

彼は自分のことをあまり話さない。
私が聞いても深くは話さないのだ。
何度か同じ話をしていると
過去にあったことを教えてくれる。
そこで様々なことが紐づいてくる。
彼のプライバシーのため詳細は書けないが
人と生活する力があることや
料理が出来ること、
なかなか睡眠が充足して取れないこと、
私が疑問に思ったことに対して
全て深い理由があり、理由を知った私は
それに対して深く納得をするのだ。
今の彼を形作ってきたものを知った時
彼のことをまたもっと好きになった。

彼は自分の意見をしっかりと持っている。
そしてそれをアウトプットできる。
中身のない意見を言わない。
自分の経験や知識を混じえて
考えを話してくれる。
そして例え人と意見や考え方が
異なっていてもその人のことを否定しない。
そういう考え方もあるよねと受け入れている。
柔軟に物事を考える力があるのだ。

しかしもっと自己中になっても
良いのではないかと思うこともある。
自己犠牲を働き他人を思いやる、
他人に気を使いすぎる所もあり
自分が1番疲れるような感覚で彼は生きている。
それはもう彼自身であるため
考えすぎだよ、気を使うのやめなよ
と言っても直らないものだとは思う。
それ自身が彼なのだから。
だからこそ私は彼に優しくしたい。
彼を大切にしていきたいと思ったのだ。
人を大切にしたいと今まで
思ったことがあっただろうか。
思い出せない。
今まで恋愛で関わってきた人に対して
本当に失礼なことを書いているのは
理解しているが、ここまでこの人の事を
大切にしていきたいと思ったことは
本当になかったのかもしれない。
自分は心が弱いが、そんな弱い心を
奥にしまい、広い器で彼を支えていきたい。

8年ぶりに好きになった人は
私の価値観を大きく変えてくれた。
いや、元々いた自分らしい私に
戻してくれたのかもしれない。
趣味のアイドルに対して否定することもなく
やりたいことはやって我慢しなくていい
と言ってくれる彼は何処まで
器が広いのだろうか。

彼の経験以上に広い心を私も持ちたい。

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