見出し画像

言いたいことを伝えるのも、相手の言いたいことを汲み取るのも難しい

「議事録を書いて」と言われ発言をまとめると、「大事なところが抜けている」とご注意いただく。発言をそのままに文字起こしすると、「まとめろ」と言われる。
思いを言葉に変え、その思いがそのまま相手に届くのは、難しいとつくづく思う。
……………
もう何年も前、年上の部下が完璧な議事録を仕上げて回覧してくれた。申し分ない議事録に、私はオッケイを出す。
しかし上司が吠えるものだから、部下に代わって録音を確認してみると、確かに部下が仕上げた通りの発言内容であり、上司は、発言者が伝えていないことを「伝えた」と言っているのだった。

発言者は、事例紹介や社内のいざこざを話しているが、そこから「察して要約して」というのは無理難題だろう。他方で上司による発言者の意を汲んで欲しいとの思いも分かる。委員会で要約して伝えても、誰の心にも残らない。こんなに大変なことがあった、その原因はこういう日頃の言動だったと話してこそ伝わるものがある。だから発言者は言いたいことより、言いたいことの前提についての発表となる。
しかし、前提となる長年の人間関係にタッチしていなかった私達には、愚痴や長話としか思えず、到底上司の望む要約文にはならないのだ。
……………
人の解釈、要点には、その人の経験、失敗、思いが入るから一筋縄にはいかない。
こうやれば、あー言われるから、先回りして処理するが、それが検討違いだと結局怒られる。その理由は俺の言いたいことがわからない「ダメな奴」となってしまい、具体的な理由の話はない。
単に伝えたい思いと、伝わった思いが違うだけだったものがいつの間にか人格非難になる。
かと言って理由を言えば言い訳めいて関係が悪化する。だから、そのうちに口を閉ざす。
………………
本来は、理解がゆくまで話すべきだろう。しかし、背景にある経験も苦悩も物事への感じ方も違うから、話すほどに距離ができる。
自分と他人が見ているものが違うことに、気づかないからただの非難になる。
それは人によって見方が違うと分かってくれないことが原因。私にとってあの時の上司がそうであった。

だから、年上部下に、今後は2パターンあります。と伝えた。
1、音声を起こすだけにして上司に怒られるが、発言者には怒られない。
2、まとめた議事録により上司には納得してもらうが、発言者には怒られる。
パターン1がお勧めです。なぜなら発言者が納得すれば、発言者から上司へのクレームがないから。

そう言って、対話も要約も諦めてもらった。そしてそれは、違う価値観をもつ者がいることを知らない人と生きていくには、ベストウェイだった。
……………
今の私は、あの時の部下だと思った。しかし、上司はあの時の上司ではないと思った。
今の上司は価値観の違いから、発言者の思いのままの議事録が出来ないことを知ってくれるかもしれないと希望を持ちたかった。だから、いずれのパターンも選ばなかった。
怒りで引きずった上司の顔と、発言に失敗したことに気づいて顔をしかめた発言者の顔の間で、
眉間にシワを寄せた困り顔で情に訴える。
「故意ではない。分かり合うのに時を要することを分かって欲しい。」と。

思いを受け取るのは、難しい。まずは人によって思いもその解釈も違うことを知ってもらわなければならないのだから。
……………
先日、会議での私の発言を偉い人が要約してくれた。その殆どを「言ってないよぅ」と思ったが、「伝わらないのだよなぁ」と納得もした。きっと、言葉が伝わる関係になるには、時を要するのだろう。

婚活で会った人とも、
友人とも、
家族とも、
解釈がズレる。それは、誰かが頭脳的に劣っているわけでも、誰かが意地悪わけでもない。ただ通じ合うのは、難しいだけ。だから私は、私の言動で相手の感じたものを非難するのではなく、お互いに相手の意を汲む努力が必要だと知って、それをやっていきたいと思う。

とても嬉しいので、嬉しいことに使わせて下さい(^^)