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人間の欲が招いた枯れ果てた山、それを戻す人と昆虫の力を見たい

北海道南部に生息するアキアカネという赤いトンボが、木ではなく地面にとまることを見かけるのが珍しくなくなった。アキアカネは、竿の先にとまる習性があるにもかかわらずだ。この様な変化は、竿に代わってとまる木が酸性雨で枯れてしまったから。
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話は飛ぶ。
高校の修学旅行先であるドイツ「シュバルトシルツ」、通称「黒い森」に入ったとき、木々が枯れて白くなり、黒い森というより白い森と感じた。本来、木は温かい。雪が降りしきる寒い北国の冬でも木に抱きつくと、「木って温かいんだぁ」と感じたのを覚えている。もっとも、抱きつかなくとも木からは命の温かな気配を感じる。
しかし、黒い森では、温かさや温もりが伝わってこなかったのだ。

私は自分の生活も含め、人間の営利目的に執着した行動を憎んだ。そして真っ白な山から聞こえるのは人への憎悪にも感じた。
この時、とりわけ自動車からの排気ガスが酸性雨の大きな原因と知り、自分の住む街を思い出した。関東のように公共交通機関が充実していないから、移動はもっぱら自動車。だから特に排気ガスに気をつけなければならない。にもかかわらず、エコなガソリンより安いガソリンに目が行く人が殆どで、私が乗っていたスクールバスも含め、自動車の煙突から真っ黒な排気ガスが出ていたのだ。
……………
人間の毎日が森を真っ白にした。

木に宿る魂、命を蝕んでいた。

しかし、この時、ドイツの人々はこの黒い森を諦めず元の森に戻そうとしていた。
もっとも人手で出来ることは多くない。だから、昆虫の力を借りるという。

土の中に沢山の昆虫がいて、森の浄化に努めているそうだ。だから、昆虫が力を発揮できるように人が見守り、力を添え、黒い森を元通りにしようとしていたのだ。

例え自らが招いた悪しき現実であっても、目を伏せる人が多い中、元に戻すという思いと、実行力は尊敬に値する。
放射性物質を含む100万トン以上の処理済み汚染水を海に流す国もあるのだから。
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あれから15年以上が経つ。黒い森はどうなっているだろうか。植物が繁っているだろうか。

元に戻すというドイツの人々の思いは続いているのだろうか。

あの頃から自動車はだいぶ進化した。煙突から出る茶色い排気ガスを目にすることも殆どなくなった。
少しだけだが、人の生活も変わったと思う。

だから私はもう一度、黒い森を見に行きたい。行ったことのある国もまた行きたい国もドイツ。なぜなら、森を戻すという意識と実行力を尊敬しているから。
そして、いつか黒い森を緑の森と呼べることを信じている。

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