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FNXで知った、顧客価値思考の染みつけ方

きのう大学院の授業で、顧客視点で事業ミッションを再定義することが重要というお話がありました。自社視点での価値ではなく、それが顧客の(明確になっていないものも含む)どのような課題や悩みを解決するのかという観点から自社が顧客そして社会に提供する価値を考え抜く必要があるという話です。

この話は今にはじまったことではなく、相当前から経営でもマーケティングでも必ず出てきています。ドリルと穴の話ですね。ただ実際、ある製品でも事業でも何でも良いのですが、それを「ドリル」の視点と「穴」の視点で価値を説明しようとすると上手く発想できない人が多い。なんでだろうか、と考えていた時にふと、自分はいつこの思考回路を身に着けたのかということを思い出し始めました。

私は新卒でリクルートに入社したのですが、最初に2年弱FNXの部署にいました。当時のリクルートにはFNXという、FAXを一斉同報するサービスがありました。FAX機にアダプターを取り付け特定のコマンドで予め指定した送信先に書類や帳票を一斉にFAX送信するというものです。FAX1枚送信あたりの単価設定、1枚1宛先に送ると利益数円、みたいな世界です。

※今はネクスウェイが取り扱っています

このサービス、「ドリル」視点でいくと、シンプルに言えば「簡単にFAXを一斉送信できる仕組み」です。「穴」視点で言えば顧客により色々あるでしょう。効率性、公平性、ミス防止、確実に届く..etc。当然ながら、リクルートのOJTでもそのような指導は受けます。けれど営業もしたこともない新卒にとっては、先輩の言っていることは理解はしても自分の武器にすることはなかなか難しいわけです。

ではどうやって染み付いたか?
それはロープレだったのだなと思います。

今はどうだか知りませんが、当時は新卒一人に教育担当の先輩が一人ずつついてくださり、チームの中で毎日必ずロープレを繰り返す期間がありました。新卒が毎日違う先輩に顧客役をお願いし、そこで模擬営業をやるわけです。先輩によっては事前に想定顧客を伝えてくださることもあれば、ロープレの時にいきなりお題目を投げられることもあります。

このロープレでは、最初はこっぴどく怒られました。自社製品の説明を「ドリル」視点で話しているからです。どんな想定顧客に対しても、「弊社の製品は、簡単にFAXを一斉送信することができるものです」と説明し、そこから仕組みの説明を続けてしまいます。

そうすると、ロープレが終わると必ず指導を受けます。「今の小笹は、お客さまの力になりたいと本気で思ってるのか?」「お客さまのこと考えて営業してるのか?」「お客さまの時間をいただくのだから、パンフレット読んでわかるようなことは言うな」。

お客さま、お客さま、お客さま。

最初は意味がわからないです。だってその顧客や業界のことはよくわからないし、何ならロープレ始まる直前にお題目の顧客を知ったところでなんの対処もしようがない。でも、わからなかったら調べるか顧客に聞いて教えてもらうしかないし、わからなければ課題や悩みごとなんて把握できるわけがない。自分がそのお客さまの会社で仕事をしていたら、どんなことに苦労したり面倒だと感じるんだろうか。それを妄想するクセがついてくるようになりました。

頭ではわかっていても、実際に自分の身に染みつけさせるには、繰り返し仮説と検証を繰り返していかないといけないなぁと。それが新卒の時のロープレだったのだなぁとふと思い出しました。単に営業トークの練習ではなく、思考のトレーニングだったのだなぁと。

顧客への提供価値を整理するためのフレームワークのようなものもよく使われていると思いますが、それは発見と整理のためであって、顧客の立場に立った思考回路にまで行き着くのは、また別のトレーニングが必要だと感じます。

あと、こう考えはじめてから、自身が何屋さんなのかについても考えが変わってきました。「(リクルートっぽくない)FAX一斉同報システムの営業をする人」ではなく「(リクルートっぽく)お客さまと対話して熱量持って課題解決する人」という感じ。リクルートっぽく、ってなんぞやはさておき。お客さまと製品の間にいる自分に価値を見出すという意味でも、顧客にとっても価値を考えることは大切だと思います。

*当時大変に頑固だった私にとことん付き合ってくださった先輩方には大変感謝しております…。


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