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【ショートショート】お返し断捨離(ノンフィクション)✧♡

 働くようになってから、実家に帰ると、そこかしこにあふれているどうしようもないものを片付けるようになった。
 まずは自分が快適に過ごせる空間をそこに出現させねばならない。

 しかし、人の荷物と言うのは片付けるのが、全く簡単だ。

 もともと、自分のモノでないのでなんの執着も無い。

 職場とか、
 母の家とか、
 姉の家とか、

 断捨離最高に、簡単✧♡

 まあ、最も迷わないのが食品であろう。
 実家の母が買った意味不明な食品の賞味期限が過ぎていたら、すぐ、袋を破いて、ざっと捨てる。なんの容赦もない。
 ウコンとか乾物とか、色々。

 捨てながら、本当に、どぶに金を捨てるってこのことだ!と思う。
 買わなかったら、お金なのだ。

 そして、母に苦虫をかみつぶしたような顔で見られるだけで、いつも、全く感謝されない。 

 そんなある時、実家の自分の部屋の押し入れを片付けていたら、昔の恋人からもらった別れの手紙を発見。当時はただ腹立たしいだけだったが、大人になった今、読むと、大学卒業時の不安な心が表わされていて、しかも礼儀正しく、なかなかいい手紙だ。

 当時は「あなたとはもう恋人ではありません」という一行に、カッときて押し入れに、放り投げていた手紙。

 夜、地元の友人と会うために出かけ、実家に戻ってくると、なぜかその手紙が見つからない。おかしいなと思って母に聞くと、

「ああ、読んで、捨てた」と言う。
 なぜならその手紙の最後に、書いた本人が「読んだら捨てよう」と書いていたからだ、と母が言う。

 娘とはいえ、
 他人に来た別れの手紙をうっかり読んで捨てる!?

 私の怒りは頂点に達した。

「君ってば、自分の荷物のどうしようもないゴミは捨てないくせに、
 私の大事なものを捨てるとは、どういうことよ!?」
 と、心の底から吠えた。

 ゴミ箱を漁ったら、飲んだお茶の葉でぐずぐずのしみがついた手紙を、かろうじて拾うことが出来た。

 冷静になってみると、私が母の賞味期限切れの食物を捨てていたのと、同じことだった。

 他人の別れの手紙など、賞味期限切れにもほどがあり、本当に、どうでもいいものだった、と今これを書いて気づかされた✧♡

 母にお返し断捨離をされた思い出である。

                                  

 本文(909字)
 あまりにもお題にぴったりすぎて、実話を投稿してみることにした( ´艸`)
 それで、2倍の長さになってしまいました。

 お題【お返し断捨離】