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知恵

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この知恵はゲットしておきたい。もう一度見返したい。そんな記事を集めました。
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記事一覧

わたしの奈良国立博物館(&空海展)。

わたしの奈良国立博物館(&空海展)。

奈良に向かう近鉄電車の中で、私はスペイン人観光客八名に囲まれて座っていた。春になったとはいえまだ気温が十度代なのに、彼らはめっちゃ薄手のTシャツと短パンだ。短パンから出ているすねにはかっこいい刺青が彫ってある。

車窓を流れる青々とした田んぼと、突然ひらけたところに現れる平城京跡。ここは天平時代か。そんなことはおかまいなしに、スペイン人観光客は勢いのあるトークを繰り広げている。

広々として、おお

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「八紘一宇」の大御心とは

「八紘一宇」の大御心とは

宮崎市の中心部にある県立平和台公園には、平和の塔と呼ばれる史跡があります。

神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれびこのみこと)が東征に出発するまでの拠点とした皇宮屋(こぐや)の北の丘に、1940年の皇紀2600年記念行事の一つとして建造されたものです。

高さ約37mのこの塔は、かつて八紘之基柱(あめつちのもとはしら)と呼ばれ、当時の石塔としては日本一の高さだったそうです。

四隅には、商工人・和

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萩尾望都、山岸涼子よ永遠に。90年代の雑誌クレアから、少女マンガベスト100! 

萩尾望都、山岸涼子よ永遠に。90年代の雑誌クレアから、少女マンガベスト100! 

ここに30年前の雑誌、クレアがある。1992年9月号。
特集は「永遠の少女マンガベスト100」。

ページをめくると懐かしい。
でも、ほぼ違和感なく楽しめたりする。
だって今でも読み続けられている、好きなマンガばかりがランクインしてるのだ。

そんなわけで今回は、1992年版クレア『永遠の少女マンガベスト100』から、上位20位までを一緒に見ていただきたい。

よみがえれ、90年代!

■第1位 

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短編ミステリで夜更かしを。フレドリック・ブラウンの 『真っ白な嘘』

短編ミステリで夜更かしを。フレドリック・ブラウンの 『真っ白な嘘』

前回のフレドリック・ブラウン短編では、星新一翻訳の『さあ、気ちがいになりなさい』を紹介した。

今回は、同じくフレドリック・ブラウンの短編『真っ白な嘘』を見ていこう。
こちらは2020年の新訳版(越前敏弥翻訳)なので、すごく読みやすくなっている。

思わず夜更かししそうなドキドキの連続。
ミステリ色が強く、驚きと鮮やかなオチがお約束だ。

フレドリック・ブラウンは1940~60年代に活躍したアメリ

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《神》の居場所

《神》の居場所

 5月10日付けの毎日新聞に「掃除をしないとどうなる?」との見出しでコラムが掲載されていた(「れきし箱」伊藤和史)。

 コラムは、執筆者が京都の禅寺で接した「一掃除二信心」の禅思想の話に始まって、或る民俗学の著作の話題へと移る。その本の著者がかつて沖縄の宮古島で暮らしていたとき、掃除をする意味を実体験として深く理解したエピソードが紹介される。

 この箇所を読んだ瞬間、ぼくはハッとした。
 もし

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芸術と肉体

老いがつきつけるのは、肉体と精神の問題です。

人間とは何なのか?
肉体なのか精神なのか?
或いは、その二元論を越えた何かなのか?
(たとへば、たましい、といったやうな)
老いて衰退してゆく肉体を前に、わたしたちは、この問ひから逃げることはできません。

わたしは自分の老いに直面してゐて、ついに自殺できないまま老いてゆくのかと絶望してゐます。
小学校の卒業記念の作文集に、「将来の夢」として「自殺す

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ヤスパースと仏像

ヤスパースが仏像を称賛してるとは知りませんでした。

偶像としての仏像ではないはず。
ヤスパースは聖書や預言といった明示的な神の言葉を疑はしく思ふ哲学者だから。

「神性は暗号の中に示現、あらはれるが、しかも隠れたままである。」
(『臨床哲学』加藤敏より孫引き)

このヤスパースの言葉は、なにもののおはしますかはしらねども、の歌と同じことを言ってるとわたしは思ひました。

絶対的存在は、相対的存在

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ウルトラマンの顔って、仏さまみたいで、なんか、ありがたくない?

妻様にこの記事を見せたら、

空海さまを見て、
あ、ウルトラマン!
っておっしゃいました。

「ウルトラマンの顔って、仏さまみたいで、なんか、ありがたくない?

ウルトラマンがあんまり動き回らず、こころもち上向いて、ぬぼっとたってるところなんか、仏像ぽくない?」

妻様ってちょっと変はってる。
だから、妻様らしいなあと思って、そのまま、あやのんさんの記事のコメント欄に、同じ内容を書き込みました。

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現代詩の根本問題について

現代詩の根本問題について

詩に「現代」と銘うつことは、詩人の責任問題でなければなりません。それほど複雑怪奇な発展をとげたものが、世に罷り通る「現代詩」なのです。ここでは現代詩の定義として、「現代詩とは現代人の内外の生活を知性と感性で高度に圧縮して、新しい世界の意味を伝える短文芸である」とでも申しておきましょう。

「詩」という時、一般の人々に浮かんでくるのは藤村であり、白秋であり、またカアルブッセの「山のあなたの空遠く」な

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笑い、滴り、粧い、眠る、山の声を聞け

笑い、滴り、粧い、眠る、山の声を聞け

日本列島に春が訪れた。
四季がある嬉しさ。

山が笑っている。

微笑む山、くすくす笑いの山、笑顔の山、
機嫌良く笑う山、爆笑する山、楽しそう。

天然林、照葉樹林、落葉樹林、針葉樹林、混成林、
それぞれの表情が違う。下草もいろいろ。
自然の色彩は美しい。

しかし最近は苦笑いする山、泣き笑いする山、
震災や火災に遭って、また林道を通した結果、
山崩れを起こして、
「幸せでない山」も見かけるが。

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何も言わないでおく

何も言わないでおく

 今回は「簡単に引用できる短い言葉やフレーズほど輝いて見える」という話をします。内容的には、「有名は無数、無名は有数」という記事の続編です。

 前回の「名づける」の補足記事でもあります。

*「「神」という言葉を使わないで、神を書いてみないか?」

 学生時代の話ですが、純文学をやるんだと意気込んでいる同じ学科の人から、純文学の定義を聞かされたことがありました。

 ずいぶん硬直した考えの持ち主

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名づける

名づける

 前回に引きつづき、今回も、蓮實重彥の『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』の読書感想文です。

 引用にさいしては、蓮實重彥著『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』(河出文庫)を使用していますが、この著作は講談社文芸文庫でも読めます。

*あとで名づける、とりあえず名づける

 蓮實重彥の『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』を読んでいると、「名づける」、「命名する」、「名」という言葉が目につきます。目につく箇所

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心に透明を満たしたら始まること

心に透明を満たしたら始まること

第44週 2月2日〜2月8日 の記憶。 それを探る試みです。
一年間のルドルフ・シュタイナー超訳に挑戦中です。

今週は、芽吹きを待つ木々たちと自らの成長を重ね合わせて
ヒントがえられるかもしれません。

アーティストたちはフロー状態やゾーンに入ることでひらめきを得ることができるといわれています。この状態は心が何か透明なものに満たされた状態であり、その透明なものとは何なのでしょうか?

では、い

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