スウェーデンの子育て支援から学ぶ 「子持ち様」が抱える社会課題
「子持ち様」というネットスラング、あなたは聞いたことがありますか?
「子持ち様」が抱える社会課題
率直に"不愉快な気分"になりました。
これは、ただの"不愉快な気分"で終わらせてはいけない問題でもあります。
このスラングが示すのは単なる個々の問題ではありません。この言葉の背後には、私たちの社会の構造的な問題が隠れています。その問題を深堀りしつつ、日本とスウェーデンの子育て支援制度を比較してみます。
スウェーデンの子育て支援から学ぶ
スウェーデンは世界でも先進的な子育て支援制度を有しており、そのアプローチから日本が学べる点は数多くあります。スウェーデンの制度の特徴を調べてみました。
スウェーデンでは、広範な子育て支援と社会保障制度が整備されており、育児と仕事のバランスを取りやすい環境が確立されています。
福祉国家スウェーデンの歴史的転換期
この福祉国家としての体系がどのようにして築かれたのかを見ると、特に1960年代から1970年代にかけて、社会的な価値観の変化と政治的な意志によって大きな転換期を迎えました。スウェーデンは1930年代から社会民主労働党の指導の下で、社会福祉を国家の重要な柱として確立し、経済成長と共に福祉政策に大きく投資しました。これにより、育児休暇制度や公立保育所など、家庭と仕事の両立を支える多くの支援策が生まれました。
特に注目すべき制度 「スウェーデンの育児休暇」
スウェーデンの育児休暇は、政府として長期的に支援するという姿勢が見られ、制度を通して、政府としての考え方を強く伝えています。
親が合計で480日(約16ヶ月)の休暇を取得でき、このうち390日は給与の80%が支給されます。
休暇は子供が8歳になるまで、または小学校の最初の学年が終わるまでに取得することができます。
この制度は両親が休暇を分割し、またいつでも休暇を取得することが可能で、非常に柔軟です。
法令遵守とペナルティ
スウェーデンにおける育児休暇制度は国の労働法によって定められており、公的な規制のもとで運用されています。この制度はスウェーデンの社会保障制度の一部として確立されており、労働者が育児休暇を取得する権利を保障しています。
スウェーデンでは、すべての雇用主がこの法律を遵守することが義務付けられています。もし雇用主がこの法律に違反した場合、労働者は労働裁判所に訴えることができ、雇用主は罰金や賠償命令を受ける可能性があります。
また、労働者が育児休暇の権利を行使したことによって不利益な扱いを受けた場合、それは差別とみなされ、法的な措置を取ることができます。
支援と助成
スウェーデン政府は育児休暇を取得している労働者に対して経済的な支援を提供するだけでなく、企業が代替労働力を確保するための助成も行っています。これにより、企業は労働者が休暇を取得する際の負担を軽減できます
2つ国の歴史的背景
福祉国家スウェーデンの歴史的転換期
この福祉国家としての体系がどのようにして築かれたのかを見ると、特に1960年代から1970年代にかけて、社会的な価値観の変化と政治的な意志によって大きな転換期を迎えました。スウェーデンは1930年代から社会民主労働党の指導の下で、社会福祉を国家の重要な柱として確立し、経済成長と共に福祉政策に大きく投資しました。これにより、育児休暇制度や公立保育所など、家庭と仕事の両立を支える多くの支援策が生まれました。
そのとき、日本は
1960年代から1970年、スウェーデンが子育て支援や福祉国家の体系を整備し始めた同じ時期、日本は高度経済成長を遂げていました。
この時代、日本は経済発展を最優先とし、社会福祉よりも産業発展が重視されましたと考えます。経済の急速な拡大とともに、労働市場の需要は高まりましたが、それに伴う社会保障の整備は遅れがちでした。
この歴史的背景があり、今日の日本の子育て支援制度ができていると理解することはとても重要なことと感じます。
さらに、日本の社会福祉は、この頃、高齢者や障がい者中心に始まり、ジェンダー平等や子育て支援に至っていない状況があります。
日本の子育て支援
ここまで、スウェーデンの子育て支援制度を紹介し、その歴史的背景を確認していただいて皆さんは何を感じましたか?
日本の子育て環境の現状と課題
日本の現状は、多くの親が、職場復帰や育児との両立に困難を感じています。そしてその周辺の方々が「子持ち様」と揶揄してしまうほどに "子育て" に対して、日本社会は課題を持っている状況です。
未だに男性の育児休暇取得率は2022年でわずか17.13%です。これは、職場環境や社会的期待が休暇取得の障壁となっていることを示しています。こうした職場環境は、企業の努力だけでどうにかなる問題ではありません。もっと社会的な構造を根本的に改革する必要があります。
このことから、スウェーデンの例から日本が学べることは多いはずです。
育児休暇の取得がキャリアに悪影響を与えない文化の醸成をするため、リモートワークやフレックスタイムの普及により、育児と仕事の両立を支援する柔軟な働き方を導入することも重要です。
また、経済的な不安を解消するための給付の拡充が必要です。
先述したとおり、スウェーデンは、支援と助成と両面のアプローチをしてきました。日本でも労働者に対して経済的な支援を提供するだけでなく、企業が代替労働力を確保するための助成が必要だと感じます。
実は、ないわけではありません。
日本にも、代替要員雇用奨励金なる支援と助成が存在します。
支援と助成
代替要員雇用奨励金
この制度は、育児休業を取得する従業員がいる企業にとって財務的な負担を軽減し、業務の継続性を保つことを目的としています。また、助成金の存在は、企業が育児休業を取得しやすい環境を作り出す一助となり、男女問わず職場でのワークライフバランスの推進に寄与しています。
このように、日本も育児休業取得者の代替労働力確保を支援するための制度を設けており、企業と労働者双方にメリットを提供しています。ただし、この制度の認知度や利用率の向上が今後の課題となるかもしれません。
まとめ
現在、日本において「子持ち様」に対するニュースは、5000件以上のコメントが寄せられました。しかし「話題になりましたね!」ということで終わらせてはいけない事柄です。
そして、そう揶揄する気持ちは、個人に向けるものではなく、国家や組織、その環境そのものに対して向けられるべきものだと思っています。
私は、冒頭に申し上げた通り、子供を育てる身として、最初は率直に不愉快な気分を感じました。一方で多様化する社会の中で、私がそう思うと同じくらい、そう言わざるを得ない状況が横たわっていると言えます。
「子持ち様」がここまで話題になる社会背景には、子育て環境に対して、子育てをする方々だけではなく、しない方々にとっても、課題があるということが浮き彫りになったと捉えています。
ただ、それぞれ当事者意識を持っている状況にあるということは、改善の余地があるということです。
改めて、言及したいことは、この”問題”は子育てする当事者個人の問題ではなく、国や企業としての組織や環境に対して向けるべき"社会課題"であり、より良い社会へとつながる政策提言へつなげていくことが重要なのではないでしょうか。
備考
今回は福祉国家として成功を収めているといわれるスウェーデンの子育て支援制度を参考にし、日本の現状を比較しました。とても羨ましく思われた方もいたのではないでしょうか。しかしスウェーデンという国に課題がないわけではないです。高い税負担については有名な話です。政府がパーパスを掲げ、国民全体の福祉向上を目指す政策に対する広範な支持を得たことでこの制度が成り立っていることを忘れてはなりません。
これについては、話し出すと、「子持ち様」議論から少し離れるので、今回はこの辺にしておきます。
最後までご覧いただきありがとうございました。
参考リンク
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