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【昔話】スティービーワンダー好きの男の話 (2704字)

前回のパリピ記事には沢山のコメントありがとうございます。
おかげさまで「スティービーワンダー」が脳内リピされる日々を過ごしております。(←自業自得w)

頭の中を駆け巡って仕方が無いので、この辺で消化(昇華)する為に「スティービーワンダー好きな男」の話でもしていきましょうか。

今回も恥を忍んで一気にいきます。

22歳の冬、私は1年9か月勤めた会社を辞めてニート生活を送っていた。
朝遅くに起きてコタツに入り、昼間は最新作の洋画のビデオをコタツで見て、ちょっとDJの練習をして、夜は友だちが来てコタツで飲み、コタツで寝る、そしていつの間にか自分の部屋で寝ていたので翌朝起きてコタツに入り、ビデオを見てDJの練習、友だちが来てコタツで飲み・・・

コタツどこにあるねん!
自身の部屋とは別に姉と共同の部屋にコタツがありましてね、そこで姉が買ったコタツを占領しましてね、その部屋によく友人が来てコタツで飲んでました。
ってアンタ夏は屋上、冬はコタツって、どんだけ実家占領してんねん。

スティービーの話から逸れました。

そんなクソニート時代、行きつけのソウルバーの敬愛するDJのZさんが、表参道のクラブでイベントをやるというので私たちはレッツゴーしてきました。

「Zさーん、来たよ~」パリピな女3人は手を振る。
いつもはお店の特性上、ソウルフルな曲しか流さないZさんはイベントではお洒落なハウスサウンドをかけていた。ハウスのノリも踊り方もわからない私たちはひたすらお酒を飲み、時折Zさんと会話をしていた。すると、私たちのよく知る曲が流れた。

「Another Star」


フロアに人が集まる、そりゃ有名な曲来たら踊るでしょ。
私たちは一目をはばからずDJブースの前でひとしきり踊っていると、一人の男が話しかけてきた。
「スティービー好きなの?」
私は「大好き」と答えた。
「何が好きなの?」
私は「全部」と答えた。
「俺も全部好き」

その場で意気投合してフロアの端っこに移動した。
一緒に来ていた友だちのA子とY子は、私を横目で見てニヤリと笑っていた。

暗闇の中、スティービー好きの男の顔をよく見るとロンブーのどちらかに似ていた(←どっちに似ていたかは想像に任せるw)。ここではあえてリョウと呼びたい所だが、当時彼が住んでいたのが練馬だったので、当時の呼び方の「練馬」と呼ばせてもらう。

練馬は27歳、仙台からミュージシャンを夢見て上京、都内でサラリーマンをしているとの事だった。それにしても練馬は相当酔っぱらっている。呂律が回らない程だったので、何杯かワインを奢って貰った後に携帯番号を交換してその日は別れた。

当時、私は2年弱付き合っていた人がいたがマンネリの付き合いにもう別れたいと思っていた。
彼氏に、
「昨日はクラブ活動楽しかった。もう今日は眠いから寝るね」
と言って電話を切った後、それからすぐに車で練馬の家へ向かった。

初めて入った練馬の部屋はビールの缶が散乱していて、本人も相当酔っ払っていた。

聞くと、保育士の彼女と別れたばかりとの事だった。
「結婚も考えていたのに振られた」
なんで振られたのかと聞くと、彼女はいつまでもミュージシャンになる事を夢見ている彼に対して、ほとほと愛想が尽きたとの事だった。

「へぇー」

っと言いながら、スティービーを聴きながら、練馬の家の狭いベッドで朝まで過ごした。

翌日

私は練馬の部屋にあるシンセサイザーで、スティービーワンダーを弾いてみせた。

 「Sir  Duke」

イントロを聴けばわかるが、数ある楽曲の中でこの曲を選んでドヤ顔で弾くのが私だ。

「元カノより上手いじゃん」

あたりめーだよ、誰だと思ってるんだ。広瀬香美だよアホ。

とは言わなかったが楽しかった。

私はこのまま彼氏と別れて練馬と付き合ってもいいかなと思っていた。

しかしながら、人生はそんなにうまくいかない

私はいつしか練馬から「呼べばすぐ来る女」として扱われるようになり、私もまた練馬からの電話を待つような女になっていた。

このままじゃいけない

と思い、私はニートから派遣社員になった。私の就職祝いとちょうど練馬の誕生日が近かった事もあって、たまには外で会おうかと言う事になり、友だちのY子と一緒に渋谷で飲んだ。

そこで酔っ払ったY子が私がトイレに立った時に

「アヤとはどういう付き合いなんだよ」

と、半ば脅迫めいて練馬に聞いた。
彼はこう答えたとのこと

「前の彼女が忘れられない」

まぁ、そういうことだった。

Y子からそんな話を聞いて、これ以上練馬に会う気はなくなった。と言っても、自分も彼氏とは別れていなかったから何を言ってるんだという話なのだけれど。

それから数日後に、

練馬から元の彼女とヨリが戻ったとの連絡を受けた。
「良かったね。お幸せにね」
と伝えた後に、
「夏にイベントやるから是非とも彼女と一緒に来てね」
と言った。

その後すぐに私は当時の彼氏とは別れ、新しい恋に夢中になっていた。

練馬の事はすっかり忘れていた

数ヶ月後、

イベントに来た練馬と久しぶりに会った。
「来てくれてありがとう!彼女は一緒じゃないの?」
と聞くと、
「結局またすぐ別れた。アヤ、今日これが終わった後うち来ない?」
と言われて、
「ふざけんな。行かねーよ」
と答えてバーカウンターで少し話をした。

A子とY子はまたあの時と同じようにニンマリと私たちを見ていた。


「アヤ、そろそろ時間だよ」


少し高い位置にあるDJブースは私を高揚させた。前任者から引き継ぎ、レコードをセットし片耳にヘッドホンを当て、音を絞りながら針を落とす、私の1曲目の定番であるインストルメンタル曲が大音響で流れ始める。

皆が踊る

まるで昔の合唱コンクールみたいだった。私の伴奏で皆が歌う。ピアノは1人で弾いてもつまらないものだったが、皆が歌ってくれるのが爽快で嬉しかった。

そんな事を思いながら(←嘘、それどころじゃない程必死にプレイw)

いよいよ佳境に入ってきた時に、独特のイントロを前の曲にちょっとずつ被せて一気にフェーダーを寄せた。

「I wish」


フロアで踊っている練馬がスティービーの曲だと気付いて私の所にきた。手に持っているグラスを私に向けて「アヤ、最高!」と言った。


勝った

私はなぜかこの瞬間、練馬に勝ったと思った。どこがどう勝ったのかはわからないけど、なぜか勝ったと思ったのだ。


その後

私と練馬の関係は2年程ポツリポツリと続いていたが、なぜか当初とは逆転した関係になっていた。



と言うことで、この先スティービーの話は出てこないのでこの辺で終わりにします。

最後に練馬が好きだと言ってた曲で締めくくりますね。

「YOU ARE THE SUNSHINE OF MY LIFE」












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