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11. 焦げ目

焦げ目

使い慣れた片手鍋の底に 
小さな焦げ目
いくら洗っても擦っても落ちない

毎日幾度も気になる見慣れた焦げ目
いつしか鍋の一部となり愛着さえ沸く
うまくやっていけそうだったのに
ある日ふと心の境目を超えて
重くのしかかってきた鍋を捨てたくなった
取り替えられない自分の身代わりに

真新しい鍋との出会いを思ってみる
煮詰まった過去もこびりついた穢れもなく
澄ました表情で凛と輝く
最初は手が戸惑い
使い慣れた把手を懐かしがる
鍋が記憶と言葉を持ち始める頃
手は新しさに馴染み
古い鍋を思い出の彼方に押しやる
そしていつかまた次の新しい鍋に憧れ

焦げ目を作らずに
やっていけるはずもない
生き抜かなければ
ぼろぼろになっても
生き抜かなければ

使いなれた鍋がキッチンで佇む
失敗作も笑顔で頬張ってくれた優しい家族との
数え切れないひとときを称えながら
必要とされているという思いだけが
最後の砦

新しい朝は毎日訪れる
焦げ目を纏った鍋にも

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