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現代詩1

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現代詩の作品集です。
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記事一覧

【詩】あと一歩

あと一歩 ずっと待ちこがれてきた挑戦なのに いよいよ実現しそうになると 心が二の足を踏む …

【詩】今日の地図

今日の地図 口当たりのいい朝が うららかな風に弾ける コーヒーを味わいながら 忙しくなりそ…

【詩】命の肌触り

命の肌触り 花吹雪に誘われ 小走りで坂を駆け上がった 息切れがひと休みを促す 心の痛みの意…

【詩】賞賛の時

賞賛の時 夢の中 願いを叶えた憧れの私がいた 希望を織りなしていた承認欲求が満たされ 賛…

【詩】空を見る 

空を見る  悲しい時 空を見る 誰かに分かって欲しい時 悔しさで胸が押しつぶされそうな時 …

【詩】理想のお化け

理想のお化け 理想のお化けは目が八つ 人間に近い姿で 人間と同じ場所にふたつ 頭の後ろにひ…

【詩】私にできること

私にできること 柔らかな冬の日差しが リビングをすっぽり包む 平和な瞬間はいつも温かく澄んでいる 安心していいよと囁くように 先週ここで悲しいニュースを見た 今窓を開ければ 冷え切った空気が部屋に入り込み 理不尽な罪悪感と焦りに 対峙することとなるだろう 私にできること 可能な限り差し出すこと 奉仕すること 心から祈りを捧げること 自分の苦しみに耐えること 生きるために生きること 愛すること 精一杯 愛すること 春は必ずやって来る どこにでも 誰の心にも いつの間に

【詩】誕生日

誕生日 蝋燭の炎の向こう 温かい橙色が照らす優しい笑顔たち 私がこの世に生を受け 今ここで…

【詩】透明パネル

透明パネル 最初の頃の戸惑いは消え いつしか慣れていった 透明なパネルが 人との間に置かれ…

【詩】ちょうどいい

ちょうどいい 虹を見上げたら 見えない未来に向かい ただ夢中で思い切り 手を伸ばしていた日…

【詩】償いの期限

償いの期限 償われるべきだと信じる人々は 彼等にとっての真実を語り続けながら言う 「決して…

【詩】リフトマン

リフトマン* セキュリティーの行き届いた ムンバイの自宅フラット**で   リフトマンの青年…

【詩】初恋

初恋 久しぶりに会うと どう接したらいいか分からなくなる 怪我が治りかけの足を庇って 普通…

【詩】飛ぶ

飛ぶ 夏の湿った夕空を飛行機が飛んで行く 真っ直ぐ目的地に向かう意志の塊の如く 細かい濃淡がまだらな ぬるい灰色の広大なキャンバスで  ただひとつ 確固たる光を放つ命のように 心はいつも  曇りのち曇り だった 降水確率50パーセントの 今にも足を掬われそうな 頼りなくて危うい瞬間を とりあえず一歩ずつ進んできた 痛む胸をあやし 労り  時には気付かない振りをし 時々晴れ に縋り付き なんとか歩み続けてきた これから私は 私のために飛ぶ 記憶の引き継ぎはもういらない