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Marina Menini@Datil /paris 75003 フランスのフードニュース 2024.04.30


今年のミシュラン・ガイドで1つ星を獲得したパリ3区の「Datil」。パリのガストロノミーレストラン界で非常に注目されている女性シェフ、1991年生まれのマノン・フルリがオーナーシェフです。野菜中心の料理、かつ、ゼロウェイストを目指すという、今を代表するようなコンセプトを掲げています。キッチンに立つのは女性だけで6人。さらに研修生も受け入れており、サービスも加えると大所帯。昨年の9月にオープンしたばかりですが、事業としてとても成功している店と思います。

マノンは弊社DOMAにお客として時々足を運んでくれており、スタッフへのプレゼントとして庖丁を購入してくれることもしばしばです。弊社の包丁スペシャリスト、マリナ・メニニが開催している庖丁研ぎのレッスンも1度受講したことがあり、そしてこの度は、1つ星を獲得したばかりの「Datil」のキッチンスタッフのために庖丁研ぎのレッスンを開催することに。日本をテーマとした尖ったマガジンTempulaのビデオクルーも今回撮影を申し出てくれ、9月には配信されますので、その際にもお伝えできたらと思います。

Tempulaマガジンのビデオ撮影の時の、マノンへのインタビューで、とてもいい質問がありました。「ここのところのレストラン業界では、素材の大切さについて言及していることをよく聞くが、道具の大切さについてはどう思うか」という内容です。素材について語られるわりに、その周辺の仕事がおざなりにされている感があります。

マノンは道具の大切さも尤も、特に素材を最大限に活かすことのできる庖丁の大切さについて語ってくれました。庖丁についてより知ることや、必要な研ぎの技術について、調理師学校教育の一環として取り入れていくべきだと。研ぎを完成させた後の庖丁の切れ味を知れば、料理に対する愛情も深くなるし、楽しくなる。近年、調理師学校の生徒は増える一方だが、現場に出た途端、料理人になることを諦めるという若手の卵が多いらしい。それを聞くたびに、庖丁研ぎという側面を知ってもらうことは、良い仕事ができることにも直結して、料理人たちの手応えやモチベーション、プロ意識を高めることができるのではないかとも感じます。

もう一つ言うならば、素材、そして道具、が大切なのであれば、それに技術についても言及しなくてはならないのではないかと思います。安心感ある料理は、小手先の知識や見た目の美しさではなく技術が伴っているもの。

昔の昔、ミッシェル・ロットさんが「リッツ・エスパドン」のシェフだった時にいただいた、「アーティチョークとフォアグラ、そしてトリュフ」の組み合わせの料理の素晴らしさに驚いたことがありました。「アーティチョークとフォアグラ」の食材のコンビといえば、1933年に、ミシュランガイドで3つ星を獲得した初めての女性シェフ、メール・ブラジエが考案した料理で有名。フランス料理のクラシックレシピとして、多くのシェフが挑戦してきました。最高級の素材と絶対的な技術がないと、至福の一皿にならないとも言われています。ロットさんの料理はまさにそれでした。ただ、料理から感じたのは、素材、道具、技術の素晴らしさではなく、溢れ出る愛情でした。

「弘法は筆を選ばず」と言いますが、極めた人だからこそ、筆致に人を動かす愛が生まれるのだなと、改めて思わされます。ジャンルは問わず、全てに共通すること。そんなものに出会うためには、自分磨きも怠ってはならないなと思う常日頃。研磨するのは庖丁だけではないなと自分を諌めています。







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