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【社会人のための“教育ってそうなってるのか!”講座】そもそもなぜ職場体験なのかを見直す

全国の9割以上の中学校で行われている職場体験。
昨年度・今年度は、コロナ禍で中止になった学校も
少なくないのではないでしょうか。

「コロナの影響で職場体験ができなくなったので
 代わりになるプログラムを探している」

全国各地のキャリア教育コーディネーターは
そんな相談に乗っていたのではないかと思います。

職場体験に限らず、いろいろな体験活動や校外学習が
従来通り・予定通りにはできない現状がありました。
消毒や健康管理など、感染症対策の業務も増え、
どうにも仕方ない部分があったことは否めません。

ですが、こと職場体験に関しては、
「中止にせざるを得なくなった」ことにより、
そのあり方やそもそもの「意義」と
本来であればもっともっと、
向き合うべきだったのではないかと考えています。


そもそも職場体験とは、
文部科学省が提唱した「キャリア・スタート・ウィーク」
から始まっています。
中学校で5日間以上の職場体験を行おうというキャンペーンです。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/05010502/019.htm
平成17年ということは、2005年ですね。
この「5日」というのにも意味があり、
 緊張の1日目
 仕事を覚える2日目
 慣れる3日目
 考える4日目
 感動の5日目

と、さまざまな人との触れ合いを通した学びが重視されています。

中学校でのキャリア教育は職場体験が軸になりますが、
ここにも、
1年生で身近な職業について調べたり話を聞いたりし、
2年生で実際に自分が働くことを体験し、
それらを含めて進路を考える、
というような、「積み上げていくストーリー」があります。

ということは、
職場体験ができなくなることによって、
中学校3年間のキャリア教育カリキュラムのストーリーが
大きく崩れるということになります。
ですから、本来であれば、
「代わりになる何か」を「あてこむ」だけでは
済まない話だったはずなのです。

3年間のストーリーの中で何が必要になるのか、
また、職場体験がなくなることで
その全体ストーリーをどう組み直す必要があるのか。
前向きに捉えるのであれば、
3年間のキャリア教育を見直すチャンスだったとも言えます。

しかし、このコロナ禍の中、
学校もゆっくりと時間をかけて「見直す」ということが、
なかなかできなかったというのが現状だったと思います。

私も、いくつかの中学校から同様の相談を受けました。
相談の切り口としては「職場体験の代わりを」で、
空いてしまった授業枠を「埋めたい」という
ダイレクトなご相談もありました。
言われた通りに「埋める」提案をすることもできますが、
できればそこに留めたくなくて、
  (それでは御用聞きで終わりますから)
少なくとも、前後の学習活動がどうなっているのか、
いまの生徒の状況や先生の課題感をお聞きし、
もう一歩「先に進む」アイデアを一緒に考えたい・・・

最終的に「穴埋め」にならざるをえなくなった学校も、
先生たちと一緒に一歩進めることができた学校も、
いろいろありましたが、
学校の現状を鑑みると先生にかかる負荷も抑える必要もあり、
非常にむずかしい試行錯誤の約2年だったなぁと思います。

まだまだコロナがどうなるかわからない現状ですが、
これも「転機」と捉えるのであれば、
この約2年のトライ&エラーの客観的評価はしておきたい。
そこから、中学校の職場体験のあり方や
キャリア教育の3年間ストーリーの
「再構築」が見えてくるのではないでしょうか。


松倉由紀
キャリア教育コーディネーター・教育研修プランナー。1975年長野県上田市生まれ。静岡大学人文学部卒業。地元での就職に失敗(4か月めで退職届!)ののち、大手通信教育会社、人材派遣会社、コンサルティングファームを経て現職。キャリア教育の領域で教育プログラム開発と「しくみ作り」をする「企画屋」「クリエイター」であり「風呂敷たたみ屋」。2016年4月個人事業主から法人成り(株)ax-factory(https://ax-factory.wixsite.com/corporate)を設立。2020年京都造形芸術大学通信教育部(グラフィックデザイン)を卒業。デザインで学びをおもしろくします。
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