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文学フリマで買った本の感想全部書く

文学フリマの戦利品を肩にひっさげ、歩きまわって重くなった身体の疲れを感じながら家に帰った。机に広げるのは戦利品の数々だ。さあ、さっそくみんなの好きを読んでいこう。

読み始めて予想外だったことがある。一冊一冊の熱意が強すぎて、ちょっとずつしか読めない。無理して読もうものなら、天下一品のスープを飲みほしたときみたいに胸焼けしてしまう。

そして今、ようやく読み終わった。せっかくなので、全部の感想を書いていこうと思います。


こんぺい想(脳乃あメ)

オモコロ杯受賞者である脳乃あメさんのエッセイ集。文章が読みやすくするするっと読めた。

気に入ったのは、毎回最後の数行でしっかりオチがついているところ。(ほとんどの章が)笑顔で読み終わる、そんな元気の出る一冊だ。

最近はライターとしてDIY記事を執筆していたり、noteのコンクールで入賞したり、ヤケクソピアノがバズったりと幅が広く今後どこに走っていくのかひそかに楽しみにしてます。


ぶ! 同人誌(花マル農園)

ぶどうを求めて農園に行ったりスーパーに行ったりしながら活躍されている少年Bさんが国内のぶどうについてこれでもかと詳しくまとめた一冊だ。

本からほとばしる瑞々しい熱意が1ページ1ページから伝わってくる。

ぶどうの交配について、巨峰やマスカットの違い、そしてシャインマスカットのすごさ。

内容を詰め込みに詰め込んでいるのに、きちんと読みやすいように工夫しているので不思議とつまらずに読めるのがすごい。

ぶどう、完全に理解した。

そう思って大股でスーパーに行ってみると、迎えてくれたのは「レッドグローブ」という本になかったぶどうだった。あとで調べると海外のぶどうだとのこと。たしかに今の日本はぶどうの旬ではなかった。

「海外のぶどう」というさらなる深みをのぞいてしまった。ぶどうの世界は広い。


民俗学は好きですか?(ノンバズル企画)

歴史を調べるのが好きだ。それも戦国大名とか有名人の話ではなく、小さな村での出来事とか、昔からの風習とかそういうはしっこに眠っているやつ。
この間も「江戸時代にきつねダンスが存在した」って記事をまとめたりした。

どうやら、そういう調べものは「民俗学」ってやつの一部に入るらしい。というのをこの本と出会って知った。

売られている冊数が多かったため、特に気になるやつを選んで買ってみた。

中身は素朴で、伝承を調べたり暗渠(川の跡)を歩いて歴史をたどったり。でもこういうのが一番楽しかったりするのわかる。僕がたまにしていることと似てて一緒に散歩したら楽しそうだ。

そしてあとがきが熱い。とにかく伝えたい姿勢が伝わってきたので、ぜひ続けてほしい。


紅白看板マルわかり図鑑(モナコ広告)

全国を飛び回りマルフク看板を集めた一冊。マニアックな街歩きをしている本がないかなーと見つけていたらちょうどあったので思わず買った。

撮った看板の数が大変なことになっていて、それに応じてマニアック度も大変なことになっている。

ここまでするのかと思わず読んでいて笑顔になった。支店の電話番号とか、フォントとか場所の傾向とか。そうそう、こういうのが見たかった。

マニアックな題材で、深い説明が続いたあとに「まずは第1段階クリアといったところ」と書いてあってたまらない。そのあとも知らない世界をひたすら見せてくれた。

今後マルフク看板見つけたら絶対写真撮ろう。


R-Bath(牧ヒデアキ)

屋外のバスタブが題材の写真集。

「こういうバスタブって多いんですか」と聞いてみると「こんなにあります!」と言って愛知県に何十ヶ所もプロットした地図を見せてくれた。最高です。

こちらは一つ一つの写真を見せてあとは想像に委ねるというスタイル。「自分のやりたいことをやる」ってスタンス、こういうのもありなのか。そしてタイトルや写真から滲み出るセンスよ。

ちなみに、屋外のバスタブは捨てられているというよりも、農業用水などで利用されていることが多いらしい。こういう日陰者に光を当てるようなものが大好物なので、目のつけどころに思わずうなった。


"らしさ" からの脱却とメタバース メタバースでいきる(砂上の空論)

VRChatを紹介している本があったので、VRChatterの一人として読んでみることにした。

インタビュー形式で知らない人にもわかるように説明されていて、知らない人側のツッコミを読んでいると「こういう風に見えているのか」と興味深い。すっかりVRChatに染まっている自分に気づいた。

一番説明に力を入れていたのは「お砂糖」についてだ。

お砂糖とは、「VRChatでのパートナー関係」のこと。人によって定義は様々で、現実の恋愛関係だけでなく姉妹や親友に近いものもあったりする。NHKの100カメでは「あまい関係のこと」と紹介されていた。

一方で、この本では「恋愛関係」に限定して紹介されていたのが残念だった。しかも「現実の夫婦だと恋愛感情がうすくなってくるからVRChatのお砂糖でそれを感じている」みたいななんともいえない例をあげていて思わず眉をしかめてしまった。個人のページで書いたりするならいいのだが、VRChatを知らない人が手にとって「こういう人が多いのか」と思ってほしくないなと。

辛口になってしまったが、お砂糖はそれだけデリケートな話題なので、もう少し広い視点で紹介してほしかったという話です。


街歩き 東京23区 区立歴史博物館・資料館 完全ガイド 新装版(FOLON)

東京都23区の郷土資料館をまとめた一冊。

僕は地域の資料を読むのが大好きだ。でも郷土資料館はあまり行ってないなと手に取ってみた。

広がっていたのは思った以上に多様で手のかかった展示物の世界だ。今までほとんど行っていなかったことをちょっと反省した。

ただ、改めて見えてきたのは僕が育った杉並区の展示はちょっと地味だということ。だから今まで他の区も似たようなものだと思いこんでいたのかも。

新たな世界を見せてくれた作者に感謝だ。

あと、この本はわりと客観的に書かれているので、好きな郷土資料館を全力で語るようなスタンスで書いたら別ベクトルでおもしろいものができあがりそうだと思ったり。


どれもすごい

どの本も書きたいことを書いていて、やりたいように表現していて熱があった。どれも好きがこれでもかとつめられていて満足だ。

こういうのやってみたい。改めてそう思ったのでした。

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