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ココナッツの不思議

滞在先の庭には高さ10mほどのココナッツの木が生えている。
上の方には鈴のようにココナッツが連なり、その重みでなのか、木は傾いている。

木の幹はそう太くはない。
ざっと数えるだけでも20個以上のココナッツがなっている。
雨風が強い日は、実の周りの葉がバサバサと音を立てて揺れる。

それでもココナッツの木は途中でポキンと折れたり倒れたりしない。

一体ココナッツはどうやって立っているのだろうと、毎日バルコニーの机でキーボードを叩きながら不思議に思っている。

高校生の頃、物理が好きだった。

物の動きや、音の伝わり方、電気の仕組み。

身近に何気なく体験していること、一見不思議なことが解き明かされていくようで、物理を知って世界を好奇心とともに見つめることが楽しくなった。

今でもそのまなざしは変わらなくて、特に普段見えているものと見えていないもののつながりを知ったときには「そうだったのか」と嬉しくなる。

長い間基礎工事が続き変化がないように見える建築現場を見ると、自分の人生にも照らし合わせ、人に見えずとも大切に思うことを続けていこうと勇気をもらう。

あのココナッツの木の根っこの長さは一体どのくらいなのだろうと思って調べてみたら、1.5mから2m、もしくは5mくらいあるという話があった。

いずれにしろ思ったより短い。

木の根っこは深く伸びるというよりも広がっているということだが、ココナッツの木の根の広がりは2mほどだという。

だとしたらなおさらあの木はどうやって立っているのだろう。

動物がどうやって動いているかや植物がどうやって立っているのかは物理ではなく生物で説明できるものなのだろうか。

もしあの木が死んだら、そのときは倒れるのだろうか。
倒れたら、木は死ぬのだこうか。
そもそも木にとっては何が生で何が死なのだろうか。

ココナッツの幹や実、葉っぱ、根っこをくまなく調べたからと言って、ココナッツについて全てを知ることができたとは言えないだろう。

ココナッツのことは何も分からないけれど、ココナッツという存在が確かに自分の中に生きていることを、佇むココナッツを見つめながら感じている。


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