一日3時間はたらく
自由なライフスタイルを好む若者が集うスタートアップの話ではない。
佐賀県の山あいにある小さな町のうどん屋だ。
一昨日から佐賀県嬉野市にあるお試し住宅に滞在している。
伝統的な町並みの修復が行われている塩田津というエリアは、今のところ平日は人通りが少なく、静けさが好きなわたしにとってとても心地いい。
江戸時代末期に建てられた町屋を現代の暮らしに合ったように改修したお試し住宅も、味わいがありながら快適だ。
地域での暮らしを楽しもうと昨日早速足を運んだのが、近くにあるうどん屋「岳の信太郎めん」だった。
味はもちろんのこと、2人でそれぞれ2つか3つ天ぷらをのせても合わせて700円弱の価格がうれしく、今日も開店直後にそそくさと足を運んだ。
営業時間は11時から14時。
お客さんの入りによって多少延びることはあるだろうけれど、基本的に一日3時間だけ店を開けているということだ。
もちろん、準備や片付けにも時間がかかるだろうから、仕事をしている時間はもう少し長いはずだ。
麺屋さんをされているということで、うどん屋だけで家計を立てているわけではないのだろう。
「はたらく」というのは「傍を楽にすること」だと言ったりもする。
そう考えたとき、わたしたちは何に取り組む必要があるだろうか。
傍を楽にするにはどうしたらいいのだろうか。
まずは自分自身の心身がすこやかであること。
そして家族や大切な人がすこやかであること。
その上で、さらに誰かを楽にすることができるのではないだろうか。
「すこやか」というのはわたしたちが思う「健康」とは必ずしも一致していないかもしれない。
何か上手くいっていないこともあるだろう。
それでも少なくとも心が満たされていたり、心に余白があったりするからこそ、自分以外の誰かを楽にすることができるのではないだろうか。
そんな目で見回してみると今は大切なものの順番が入れ替わってしまっているようにも見える。
たくさん働いたらその結果、いろんなものが手に入る。
本当にそうだろうか。
成功は幸せや健康を保証してくれるのだろうか。
日々の暮らしに必要なことをして、大切な人との時間を持って、
支度をして、誰かのために何かをして、そして片付けをする。
そう考えると、「はたらく」時間は一日3時間くらいがちょうどいい。
むしろ、良いサービスや時間を提供しようとすると3時間くらいしかはたらけないんじゃないかと思う。
たとえば勤務時間が8時間だったとして、
その中で最高のパフォーマンスを発揮している時間がどれだけあるだろうか。
全ての打ち合わせで頭や感覚が冴え渡っているだろうか。
一日何時間も働かないと生活が成り立たない?
本当にそうだろうか。
パフォーマンスが上がればその分価格を上げることだってできるし、
サービスや品質が良ければ宣伝をしなくてもお客さんが繰り返しきてくれる。
そもそもわたしたちが生きていくのにそんなにたくさんのお金は必要ない。
お金と引き換えに手に入れられる幸せもあるけれど、
それで得られる幸せの感覚はさほど長くは続かないし、
それで得られる幸せは他者との比較の中で簡単に揺らいでしまう。
もっともっと、と際限がない。
「幸せな一日だった」
そう思って毎晩眠りにつくためには
自分や身近な人を大切にすることと、少しの「はたらく」があれば
十分なんじゃないだろうか。
日本での拠点をつくる先を探す旅はあと約2ヶ月ほど続く。
その中できっと、「ともにいのちを生きる」ために大切なことを
たくさん学んでいくことになるだろう。
今回滞在させていただいているお試し住宅はこちら▼
お試し住宅から歩いて10分のところにある「岳の信太郎めん」はこちら▼
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