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クライアントよりもコーチや講師になりたい人の方が集まる!?ヨガとコーチング業界の共通点

数日前、ニュースサイトにこんな記事が上がっていた。

内容はタイトルの通りだが、これはコーチング業界にもそのままあてはまるのではないだろうか。

特にトレーニングに関する内容は耳が痛い。

「ヨガのレッスンの受講料は1人1回3000円程度で、この20年間変わっていません。一方で、インストラクターを養成するティーチャートレーニング(TT)は、1人契約すれば数十万円(の受講料収入)が保証される。スタジオとしてはTTをやったほうが効率がいいので、資格対応トレーニングを行うスタジオがどんどん増えて、求人に対して先生が増えすぎてしまった。ヨガ業界そのものが“資格ビジネス”で成り立ってしまっているところがあります」

コーチングの市場規模は日本では300億円、アメリカでは1兆円以上だと言われているが、これにはコーチングを依頼するクライアントが支払うお金だけでなく、コーチングを学ぶ人がスクールに支払う受講料が含まれている。

「コーチングの市場規模が大きい=コーチになったらたくさん稼げる」ということではないのだ。


ヨガとコーチングで異なる部分があるとすると、対価をいただくことへの感覚だろうか。

さらに、この業界に特有のことかもしれませんが、『神聖なヨガでお金をもらうのは申し訳ない』『お金よりやりがい』と考える人も少なくありません

この感覚に比べるとコーチングには「神聖な取り組みでお金をもらうのは申し訳ない」という感覚は少ないのではないかと思う。

もちろんお金に対する感覚やブロックは人それぞれで、無料の体験セッションならクライアントを募集できるけれど有料のセッションにするのは気が引けるとか、値上げをするのに勇気がいるという人は少なくないが、それはどちらかというと「自分の経験やスキルで対価をいただいていいのだろうか」という感覚が根底にあるように思う。

いずれにしろ、ポイントは、コーチングを活用する(受ける)ことの価値やその効果よりもコーチになることのメリットの方が強調されると、その先にはコーチングを活用したい人よりもコーチになりたい人が増えるという逆転現象が起こるということ。

記事中に出てくるヨガスタジオのオーナーの言葉はコーチングのそう遠くない未来、もしくはすでにやってきている現実も示しているように思う。

「10年ぐらい前のウォール・ストリート・ジャーナルで、アメリカのRYT200取得者と新規にヨガを始める人の数が逆転したという記事を読んで、『この業界はこのままではまずい』と感じました。資格ビジネスが一概に悪だとは言いませんが、雇用先もないのに安易に先生を作りだしてマネタイズする方法はいずれ行き詰まるのではないかと思います」

資格ビジネスは短期・中期的には儲かるが、その資格を持つ人が実際に社会で力を発揮することができないと、長期的にはその資格の価値が下がり、資格の維持・取得者が減るということが起こるだろう。

問題なのは、ビジネスを主軸として考えると資格はいくらでもつくれるし、売るものやサービスは変えられるということだ。

供給過多になったなら、新たな業界で新たな需要をつくればいい。新たな資格やスキルを売ればいい。

確かにそうやってビジネスと経済は成り立っている。

しかし、人の人生はどうだろう。

時間とお金を投資した先に、結局また、新たな時間とお金の投資が必要。
そんなことの繰り返しだったら・・・?

もちろんプロになって十分に稼げるようになったとしても自己研鑽や生涯学習は必要だ。

世の中の流行りに流されずに信じる道を進むことができるといいが、人間そんなに強くはない。

右に良いものがあると言われれば右に行き、左の道が正しいと言われれば左に行く。

そんな中で、心の奥深くにあるものにつながり、自らが持つ力を開花させる後押しとなるのがコーチングであるはずなのだが・・・。

良いコーチングを受けた人たちは、人生が変わったと言います。コーチングの本質は、問題解決やパフォーマンスの向上にはありません。内省的探求を駆使するコーチは、人間の魂に働きかけて活力を取り戻させる仕掛け人です。

マーシャ・レイノルズ著『変革的コーチング 5つの基本手法と3つの脳内習慣』より

という言葉には心から共感する。

コーチングを学び実践し、コーチになってよかったと心から思う。
その根底にあるのは、自分自身がコーチングを活用してきてよかったという体験だ。

だからこそ、コーチになることの価値だけではなく、コーチングそのものの価値がもっと実感されていくといいなと思うし、その一歩は、やはりコーチ自身がコーチングを自分の人生に活用していくことだとも思う。

コーチングが全てではない。
教えてもらうことや新たな知識を学ぶのがフィットする時期もある。
自分に合った取り組みを見つけることができるに越したことはないし、自分が活用して良かったと心から思う取り組みこそ、自分がよき届け手にもなれるだろう。

(そんな中でも人生に何度かやってくる大きな変容の時期にはコーチングが合うのではないかと個人的には思っているが、それはまた別の機会に綴ってみたい)

同時にコーチングという構造や取り組みの限界にも目を向け、人と人との関わりの可能性やいのちといのちが出会うことの意味についてもさらに深めていきたいとも思う。

何よりも、コーチングという取り組みの未来についてコーチングに取り組んでいるコーチたちとともに考えていきたい。


限界を知ることは、諦めではなく進化への一歩。

そう自分に言い聞かせ、胸の痛むニュースを味わっている。


変革的コーチング 5つの基本手法と3つの脳内習慣』は原題『Coach the Person, Not the Problem:A Guide to Using Reflective Inquiry』という、探究的なコーチングに関する書籍です。

探究的なコーチングを深めたい方におすすめなのはもちろんのこと、「守破離の守(型)」を身につけその先に進んでいこうとしているコーチにもおすすめです。

特に第2章「コーチングにまつわる迷信」では
・コーチは「閉じた質問」ではなく「開かれた質問」をすべきだ
・明確なゴールまたは将来像を必ず設定すべきだ

といったコーチングにおいて鉄則とされている考え方(迷信)がどこから生まれ、その中の真実は何で何が真実でないかや、迷信がどのような障害を生んでいるかが述べられており、コーチが自らつくり出している限界を打ち破る視点を提供しています。

この書籍自体「内省的探究を促すコーチングはパワフル(人生にとって有益)である」という前提のもと書かれているために、他のスタイルのコーチングの価値を過小評価している部分もあるかもしれませんが、だからこそ、正しいことが書いてある教科書としてではなく、「自分にとっては何が真実だと感じるだろう」と、自らの内的な体験に照らし合わせて読むと、多くの学びがあるのではと思います。


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