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「人魚隠しし灯篭流し」第一話
【序章 ある老婆の話】
そこの若い衆。見ぃへん顔やね。どこから来はったん。
東京? 新聞記者?……ああ、あの島か。あの島に行くんは、やめといた方がええ。そもそも行く手段がないしな。この距離を泳げるんやったら別やけど。ここから眺めとる分には近う見えるけど、実際行こうとしたらお船がいるで。
それに、先の戦争では少しの間戦地になったみたいやけど、元々あそこは立ち入り禁止や。足を踏み入れると二
「鬼棲む冥府の十の後宮」第十話
「あらあらあらぁ、奴隷の下に付いている、可哀想な方々じゃない」
長子皇后の侍女たちは、口元を隠しながら一斉に笑い合う。それは明らかに嘲笑だった。
「天愛皇后様はもう奴隷ではないわ。生まれがどうであれ、あの方の素晴らしさが分からないなんて、人を見る目がないこと」
「……こちらが節穴だと言いたいの?」
長子皇后の侍女の一人が、天愛皇后の侍女の言葉にぴくりと眉を寄せた。その顔からは一瞬にして笑