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「旅をしろ」というあの時の言葉。

私には考え方を大きく変えてくれた恩師がいる。

その先生の言葉で印象に残っているもの、大きく影響されたものは沢山あるが、その中の1つに「旅をしろ」というものがあった。

彼はとにかく「旅」の大切さをことあるごとに話していた。

とにかく旅をしなさい。
目先の欲しいものではなく旅にお金を使いなさい。親にお金を借りてでもいいから学生のうちに旅をしなさい。それくらい旅は大事だから。

「一人旅をして人生観が変わりました」なんて言葉はよく耳にするが、言葉にしてしまえばどこか軽く聞こえてしまい、それまでは本当なのか疑っている自分がいた。しかし恩師のその言葉を聞いてより一層旅に、世界に興味が湧いたことを今でも覚えている。

私の2022年を一言でまとめるなら「沢山の世界を見た年」とでも言えるだろうか。ありがたいことに沢山海外旅行をした。

2022年だけでも15カ国に渡航し、2021年の秋からの1年間のスペイン留学全体で言えば15カ国28都市(私調べ)を訪れ、一人旅も経験した。

これだけ旅をすれば色々なことがあった。ハプニングも心温まる出来事も。そして、様々な人と出会い、色々なものを見た。

東京留学中の息子さんとテレビ電話中だったソーセージ屋さんのおじさん、バルセロナで経済を勉強していたことがあるホテルのお兄さん、私がスペインの学生証を持っていたが故に参加することになったブダペストの国会議事堂のスペイン語ツアーで一緒になった人たち。

一つ一つの出会い、出来事全てが一期一会で、新しく見る世界であった。

「旅に出れば人生が変わる」なんて、そんな簡単なことはない。しかし、旅は「新しい世界」を見せてくれ、「新しい自分」に会わせてくれると感じる。その結果人生が変わる人もいるのだろう。

新しい世界を見てそれを肌で感じること、視野を広げること、時には視点を変えること。そして、それによって見える世界を知ることで現れる自分の知らない自分を見つける「旅」だからこそ恩師はあの時あんなにも「旅をしろ」と高校生だった私たちに言ったのだろうと今、そう思っている。

実を言うとこの答え合わせをすることはもう叶わない。この長期留学に行くことの報告すらできなかった。でも恩師はきっと私の留学を見守っていてくれただろう。

ヨーロッパ旅行の最終滞在地だったハンガリーはブダペスト。この記事の表紙にもした国会議事堂の夜景を対岸から目にした瞬間のこと。

「沢山の良い経験をしたな。」

そう言う恩師の声が聞こえた気がした。

学生が終わろうとしている今、思い返せば学ぶことをより好きにしてくれたのは彼だった。彼は高校までの学びはすでにある正解を学ぶ「学習」であり、大学での学びは自分の興味や疑問をベースに正解を探すために学ぶ「学問」なのだと言った。そしてその「学問」を私にとってより魅力的な、興味深いものにしてくれたのも彼だった。
この大学での5年間で私はその「学問」を体現できただろうか?

彼のくれた言葉は私の学びの、学問の指針だった。

沢山の世界を知っていて、沢山の人の言葉を知っていて、どれだけ話を聞いてももっともっと聞きたいと思わせる教養があって。経験やそれに基づく言葉、話に魅力のある彼は私が憧れる「大人」の姿だ。

そしてその言葉たちはこれからも私の人生の指針であり続けるだろう。

実はこの記事はだいぶ前に書き上がっていたが、学生生活が終わり、社会人になろうとしているこのタイミングでそっとここに置いておくこととしよう。これからも恩師は見守ってくれていると信じて。


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