石井栄造

石井栄造

最近の記事

インサイトに至る

マーケティングインタビューのモデレーション、バックルームで観察のときの「インサイト」にたどり着く方法を提案する。 <インサイトは定着した> インサイトは輸入?当初は購入の最後のひと押し、とか、心のボタンといわれ購入に強く結びついた解釈だった。 いっときはバズワードで終わるかと思われたが、多様な解釈を許容することでマーケティング用語として定着した。 多様な解釈とは新発見、Aha!体験、エウレカ、システム1のような概念とうまく融合し、「単なる気づき」として扱われることである。 マ

    • インタビューの分類

      ダーウィン進化論がスタンダードになってもリンネの分類学の価値は失われていない。 分類には知識の整理効果がある。ここでマーケティングインタビューの分類を試みる。 対象者の人数は1人、2人、3人以上の3つに分類でき、1on1インタビュー、ペアインタビュー、グループインタビューと名付けられている。 1人と3人以上のインタビュー対象者は基本は他人同士、独立した個人であり関係性はない。リサーチという方法論はサンプル同士は独立であるという原則があるので当然である。 2人のインタビューはこ

      • レジリエンス

        レジリエンスは物理学の用語で「外力・ストレスによる歪み」に対して「対抗、復元する力」と定義される。 心理学では、ストレスに対する抵抗力や回復力の意味で使われ、個人の特性として働き方改革、人事評価関連で使われている。 我々は、レジリエンスを「生態系のネットワーク構造」の視点で捉え直し、マーケティングのひとつの分析軸にすることを考えている。 <「レジリエンス思考」を定義する> 富士山麓の樹海も釧路湿原も独自の生態系(ニッチ)を保持することで持続性を得ている。 樹海は植生の遷移(変

        • DaybyDayインタビュー

          同じ対象者個人に翌日も同じテーマでインタビューする方法をDaybyDayインタビューとし、発表したのは2010年のことです。 きっかけは、夫婦喧嘩、飲み屋での議論、上司の説教、など白熱した会話のやり取りの後、「ああ言えばよかった」「こう切り返すべきだった」と後悔・反省して眠れない夜を過ごしたことがあるとする人がたくさんいたことです。 さらに、「そうか!相手は実はこのことを言いたかったのかもしれない」「自分は案外そのように考えているのかもしれない」と自分の認知そのものの組替えに

        インサイトに至る

          世代論の終焉

          あまり、めくじら立てることではないが、Z世代を主語にしたコメントはしない方がよさそうである。 ニュースやネット記事ではキャッチーな表現で済むが、マーケティングレポートでZ世代を主語にするのは「無能の証明」と言える。 <世代論の期間とボリューム> 世代論の元祖、団塊の世代の出生数は800万人近い。 この人数が1947から1949年の3年間に生まれ、成長していったのだから、特に個性がなくてもひとつの塊とするだけで個性感がでてくる。 Z世代は1995~2009年に出生のコーホートと

          世代論の終焉

          カスタマージャーニー

          <カスタマージャーニーの目的と効用> カスタマージャーニーはダイナミックなPDCAサイクルを確立することを期待して作成される。 期待のひとつは、カスタマーの「きっかけから購入」までを旅程(ジャーニー)として分割し、その間の態度変容・感情変化を時系列に記述することで消費者心理の動きをわかろうとすることである。 もうひとつは、タッチポイントのそれぞれに自社のマーケティング施策が届いているか、ヌケはないか、それぞれの施策の効果が測定ができることである。こうしてPDCAサイクルを回し

          カスタマージャーニー

          ラダー図からペルソナ

          前回、レパートリーグリッド発展法、評価グリッド法、ラダリングの考え方と使い方を述べた。 今回はラダリングのラダー図の使い方を詳しく述べる。前回同様、ライトウェイトスポーツカーの開発プロセスをとりあげる。 <開発プロジェクト> ベストセラーのユーノスロードスターとCRXデルソルの比較価値分析することでスポーツカーの新ブランドを開発したい。(30年前) そのための調査として両車10人ずつ20人のオーナードライバーに1on1インタビューを行い報告した。 この調査を含め膨大な予算と時

          ラダー図からペルソナ

          評価グリッド法再考

          最近、分析事例を聞かないようだが、評価グリッド法は定性調査の方法論として数少ない確立された方法論である。 ここで再認識してみる。 <評価グリッドの歴史> 評価グリッド法の歴史の始まりはG.A.Kellyのパーソナルコンストラクト理論(1955)にあると言われている。この理論は「個人はその人の経験を通じて作られたコンストラクト・システムと呼ばれる固有の認知構造を持つ。この構造をもって環境や出来事を理解し、結果を予測しようとしている」とするもので、感覚器が環境情報を捉え、つまり知

          評価グリッド法再考

          脳・AIハイブリッド

          ERTO 池谷脳AI融合プロジェクトはBMI(Brain Machine Interface)のMをAIに置き換えることであろう。 マーケティングの脳科学応用は失敗が多い。ここで、マーケティングへの脳科学とAIのハイブリッド活用の途を妄想する。 <ニューロマーケティング> 2000年に入ってから脳科学が急発展した。特にfMRIのデータ活用によって脳の各部位の機能特化の分析が大きな流れになった。 極端に言うと消費者の購入意思決定は脳のある部分が発火するかどうか観察すれば決まる的

          脳・AIハイブリッド

          チェルシーは売れた(はず)

          4月3日のセミナーでチェルシーのブランディングの状況を分析し、終売の意思決定の妥当性を分析した。 終売でなく「どこかに売った」方が消費者ニーズに合致していた、もったいない、買うメーカーはあったはずという結論になった。 <リエゾンインタビューでわかったチェルシーの完成されたブランド> 女性2人のリエゾンインタビューからわかったこと。 ブランディングは完成され強化なもので、硬直性はなく状況の変化に対応してきたフレキシブルなものであった。 食用TPOも確立していて頻度は多くないもの

          チェルシーは売れた(はず)

          「晴れ風」と凱風快晴

          4月2日にキリンがビールの新定番と銘打って発売した「晴れ風」。 このネーミングの背景をリバースエンジニアリング的に探り、マーケティング的批評を試みる。 パッケージデザインとネーミングだけを頼りに振り返る(CMその他は参考にしない)。 <晴れ風のコンセプトをリバースする> 特徴は水色のベースカラーに「晴れ風」が白抜きであることであろう。この点だけ見ればビールではなく清涼飲料のデザインといえる。 上部の金色の聖獣マークと中央を横切る金地に黒文字の「KIRIN BEER」を大きくデ

          「晴れ風」と凱風快晴

          対幻想を解明する

          10年くらい前からだろうか、n=1分析の有効性が言われ、実例も多く出て来るようになった。たったひとりの分析が一般性を持つわけがないという統計理論からの非難は完全に無視である。ここで、n=2分析、リエゾンインタビューの可能性をさぐる。 <神は細部に宿り給う、またはフラクタル> n=1分析の正統性を保証しようという理論はない。実施してみて「使える」ことがわかったから使い続けるということである。 文学、芸術の世界ではある作品ひとつがその時代を象徴したり、代表することはあるが、マーケ

          対幻想を解明する

          新手法が体験できる

          4月3日実施の第29回「アウラ・コキリコセミナー」はマーケティング症例研究の第一弾として「チェルシー終売」をテーマに取り上げる。 マーケティング症例研究として、CHELSEA終売の原因・理由を仮説的に検討し、現ユーザーにリエゾンインタビューを実施し、CHELSEAブランドのブランド力の構造分析・リバースエンジニアリングをおこなう。 そこから、CHELSEA終売の代替戦略を検討する。http://www.auraebisu.co.jp/ <CHELSEAブランドの現状仮説> 以

          新手法が体験できる

          リバースエンジニアリング

          この30日でロングセラー明治チェルシーが終売になるニュースが2月に流れた。そこでチェルシーのブランディングをリバースエンジニアリングすることを試みた。なお、明治さんの許可はとっていないのでこちらの勝手なわめきであることと、ソースはホームページのデータのみであることを断っておく。4月3日の「マーケティング症例研究」で詳しく述べる。                    http://www.auraebisu.co.jp/ <教科書通りの市場導入戦略> HPによると1971発売

          リバースエンジニアリング

          新手法:リエゾンインタビュー

          2018年にリエゾンインタビューという方法論を開発したまま放置していた。 ここで、改めてリエゾンインタビューの有効性を紹介したい。 <インタビューが抱える2つの困難> 1on1インタビューでは、モデレーターが質問者、対象者は回答者との役割分担が自然にできてしまう。これは先生と生徒のような上位者、下位者の関係であり、詰問されてる、尋問されているとの負の感情が対象者に湧き上がる。 この状況は対象者を萎縮させて無難な回答しておこうとの意識を生む。モデレーターはモデレーターで、フロー

          新手法:リエゾンインタビュー

          症例研究スタート

          マーケティングの症例研究会を始めます。 MBAで行われているケーススタディよりも簡便、タイムリーな研究会。 MBAはとりあげるケース企業の了解を得てある、社内データも提供してもらっていると思われる。 内部データがあると分析にリアリティが出るが、当然、過去のデータでタイムリー性はない。 我々は、タイムリーさと教科書的でない分析をめざして「マーケティング症例研究会」をスタートさせます。 <症例研究とは?> ググったら「個人の病気または症状を、可能な限り正確かつ包括的に記述、分析し

          症例研究スタート