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弘生's たぶろー

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タプロー紹介を含む記事をまとめました。 小さき作品は証明写真サイズから、大きな作品は2mサイズの作品まで、ガチャガチャと入れ込みました。 作品によって素材やタッチが変化していま… もっと読む
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記事一覧

絵描きの万愚節2024「Elle est ici !」

絵描きの万愚節2024「Elle est ici !」

四月一日は母が星になった日なのです

母の顔鏡の中に万愚節
花冷えや祈り届かぬ爪白し

鏡に映るたび、どきっとする
年々母にそっくりになっていく
この変化は止められない
毎年嫌でも止まった母の歳に近づいていく
戸惑いは隠せない

逆境の中、生まれてきたわたしの息子を誰よりも祝福してくれた母
息子を抱きしめられたのは、ほんの1年
ついに病に負けて儚くなった母
全くまだ若かった
あの日のことは鮮明に憶

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絵描きの夢日記語り 7 〜ニセモノ〜

絵描きの夢日記語り 7 〜ニセモノ〜

ニセモノ

だからシェルピンクにした

あたりまえすぎて見過ごしちゃう
ほらそこ
だから
左腕の包帯
昨夜の深い引っ掻き痕

どの扉よりもホンモノらしい
ニセモノに気をつけて
ほらそこ
実しやかに現れて
実しやかに幻になっちゃう
七色に憧れる石鹸玉に似てる
ほら弾けた

シェルピンクにしたら
新しい島に着いた
砂浜の無重力の椅子に願いをこめて
記憶のあるうちに
時を閉じ込めちゃう
不完全な足跡を消

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絵描きの夢日記語り 6       〜黄色い白〜

絵描きの夢日記語り 6 〜黄色い白〜


黄色い白
ねえ、おんぶして

その安全な白は

あたし軽いのよ

冬の蝶の目を灯す

微かな背中の振動が

その熟した白は

あなたの言葉を心臓に伝える

月の鱗粉を悦ばせ

あなたの首筋とあたしの頬

その滑らかな白は

溶けて境が消滅するの

産み落とす涙を掬い

ずっとこのままがいい

その無機質な白が

ただそれだけ

夢からの覚醒をただ促す

ただそれだけの夢

ひろ生の夢日記シリーズ

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備忘録的散文詩:絵描きの罪 (very short short)

備忘録的散文詩:絵描きの罪 (very short short)



歩道に堕ちていた花束

花束といってもきっと誰かへのプレゼントじゃない

498円のシールが花を包むセロハンに貼ってある

近所のスーパーで買ったものかもしれない

徒歩なのか自転車なのか

いずれにせよ持ち主に気づかれぬまま

花はするりと堕ちたのだ

落とし主が気づいて戻って来るかもしれない

拾い上げて歩道沿いのブロック塀に立てかけた

翌日それは少しだけ移動して

交差点脇の電信柱の

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怪物絵描きの展覧会と小説擬き

怪物絵描きの展覧会と小説擬き

★ひとつめの怪物

怪物〜邪な歯を生成する胎という画題で油画作品を出品します。

大小9点を組み合わせて、ひとつの作品にします。
会場……置かれる場所や配置の仕方で、作品が違ったものになります。
今回はそのうちのひとつです。
ご興味のある方はいらして下さいましね。

初日、早朝から展示の鬼…いや、怪物になります笑

9月18日〜26日まで(19日休館)
東京都美術館に於いて

(あ、忘れてた
作家

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絵描きの小説「怪物〜曖流のなんでもない日常」

絵描きの小説「怪物〜曖流のなんでもない日常」

新作絵画「怪物』のもうひとつの顔は小説で

9月18日から、今年も上野の東京都美術館で展覧会かはじまります。
5日、6日と2日間にわたり、搬入撮影審査と館内に缶詰ておりました。

今年は、不機嫌パワーが爆発して、モンスターを生み出してしまったひろ生の新作たちの画題、迷った挙句、そのまんま

「怪物」にしてしまいました。
副題は付けましたけど……実はその副題がもっと酷い!笑
9点でひとつの作品になる

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絵描きの夢日記語り 5 〜無機質な涙〜

絵描きの夢日記語り 5 〜無機質な涙〜

無機質な涙

夢から醒める前にその蛹に伝えて
言葉の魔力をあたしから奪わないで
瓶に詰めて持っていかないでと

あのね
あなたが久しぶりに夢の中にいたから
無機質な歯みたいなとこで胡座かいてさ
灰色の大きな蛹を抱えてるから

夢の中だって知ってる
あたしを緩やかに締め出したあなただもの
鍵もかけないほどあたしを信用して
扉を開けたままのあの部屋から
あたしを追い出したあなただもの

だから言ってし

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『ねねこグラフィカル』ネタバレ皆無 絵描きの毒入り炭酸水的感想

『ねねこグラフィカル』ネタバレ皆無 絵描きの毒入り炭酸水的感想

いきなり

玉ねぎってどこまでが皮なの

玉ねぎの皮を剥いてたらどこまで剥いていいのかわからなくなって、おやまあ手の中の玉ねぎがなくなった。
そしたら『ねねこグラフィカル』を思い出したんだ。
消滅した玉ねぎがさらに今夜のおやつのドーナッツの穴に繋がって、ねねこの世界を垣間見た気がしたんだよ。

『ねねこグラフィカル』ってね

言わずと知れたマルチアーティストアポロが、小説家アポロとしてその才能の一

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愛すべきストーカー男の偏愛ひとり語り 第一話 (全六話)

愛すべきストーカー男の偏愛ひとり語り 第一話 (全六話)

概要

 元々ストーカー気質の内面おれ様男が、無理矢理手に入れた彼女の反撃に遭い、何年もつけ回した挙句に自分の正体を知り自分と向き合う、ややホラー仕立ての片恋語り。
 葉流から鋭い別れを告げられた僕だが、その後も自分の彼女として葉流をつけ回すため着信拒否される。通信手段を失った僕は、葉流を逐一観察して彼女を取り戻そうとする。
 ある日葉流が突然僕の車に乗り込み、奇妙なドライブが始まる。
 幻覚に惑

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絵描きの夢日記語り 4  〜魔女の歯形〜

絵描きの夢日記語り 4 〜魔女の歯形〜

魔女の歯形

硝子張りの立方体の部屋
光源は深夜の映画
硝子の向こうでのぞき込む
幼な子の小さな顔
あれはたぶんあたしのむすこ
かわいいむすこ

あたしと並んで壁にもたれてるそのひとは
幼いころの弟のように
ぐったり小さくみえて
何に追われているのか
何を追っているのか
穏やかにふるえて
朝が来るのを待つ
夜から生まれたくせに
夜がこわいのね

あたしは両のてのひらを
そのひとの両のてのひらと合わ

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【ライラック杯】 紹介されて有頂天絵描き その一

【ライラック杯】 紹介されて有頂天絵描き その一

すばらしい春の訪れと初夏へのバトンタッチ

みんなの俳句大会、春の【ライラック杯】が、五月の緑色の風とともに幕を閉じました。
毎日がお互いに自分らしくつながり合える。
そんな心優しい大会でした。
その時のそれぞれの心情や情景、真実や虚構、幸せや希望、温かみや切なさ、笑いと愛……様々な自分らしい人生を17音、31音にのせて、みんながらしくらしくうたっていました。
すばらしい春の訪れと夏へのバトンタッ

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絵描きの夢日記語り 3 〜なんでもない〜

絵描きの夢日記語り 3 〜なんでもない〜

なんでもない

なんでもない

なんてことはないのだ

虫歯みたいな石の上に

晒された脈打つ心臓の音

狂気の濁流に抗わず

彼岸横目に一滴のなみだ

ねえ、まっかな花束をくれたのは誰だった?

ねえ、まっさおな空ってどんな色だった?

ねえ、黒い大きな鳥が頭上を掠めたのはいつだった?

片方の靴が脱げたってなんでもない

なんてことない

くぐり抜けるだけの空の穴

はりぼてだらけでなんにもな

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絵描きの万愚節2023 「はりぼての四月」

絵描きの万愚節2023 「はりぼての四月」

ひろ生にとって毎年四月一日は特別な四月馬鹿だ。
姉のようだった母が天に召された日だから。

先日探し物をしていたら、我楽多の中に古キャンが埋もれていた。
おや? と掘り出してみると、懐かしい絵が顔を出したのである。
ひろ生的には古い絵をそのまま保管しておくことは、ほぼ無いのである。
が、それは我が息子がこの世に登場するよりも前、小さな子供たちがひろ生のアトリエに絵を描きに集まっていた頃のタブローで

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絵描きの夢日記語り 2  〜囚われ〜

絵描きの夢日記語り 2  〜囚われ〜

囚われ

鉄格子から伸びる紫色の右手
何かを掴もうと宙を掻く

今一番欲しいものはなんだ

 魔法の絨毯

湿気を許す剥き出しのコンクリート
鉄格子から彷徨い出る紫色の指
床の開かれた本から文字が起き上がる

今一番見たいものはなんだ

 へびつかい座

紫色の爪が鋭く弱々しく伸びる
頁に置かれたままの形で
ひらひらと行儀よく浮遊する文字たち
触れると消滅しそうな絨毯みたいだ

今一番食べたいもの

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