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弘生's 夢日記語り

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夢の断片からインナーワールドに潜ってみた
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絵描きの夢日記語り 7 〜ニセモノ〜

絵描きの夢日記語り 7 〜ニセモノ〜

ニセモノ

だからシェルピンクにした

あたりまえすぎて見過ごしちゃう
ほらそこ
だから
左腕の包帯
昨夜の深い引っ掻き痕

どの扉よりもホンモノらしい
ニセモノに気をつけて
ほらそこ
実しやかに現れて
実しやかに幻になっちゃう
七色に憧れる石鹸玉に似てる
ほら弾けた

シェルピンクにしたら
新しい島に着いた
砂浜の無重力の椅子に願いをこめて
記憶のあるうちに
時を閉じ込めちゃう
不完全な足跡を消

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絵描きの夢日記語り 6       〜黄色い白〜

絵描きの夢日記語り 6 〜黄色い白〜


黄色い白
ねえ、おんぶして

その安全な白は

あたし軽いのよ

冬の蝶の目を灯す

微かな背中の振動が

その熟した白は

あなたの言葉を心臓に伝える

月の鱗粉を悦ばせ

あなたの首筋とあたしの頬

その滑らかな白は

溶けて境が消滅するの

産み落とす涙を掬い

ずっとこのままがいい

その無機質な白が

ただそれだけ

夢からの覚醒をただ促す

ただそれだけの夢

ひろ生の夢日記シリーズ

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絵描きの夢日記語り 5 〜無機質な涙〜

絵描きの夢日記語り 5 〜無機質な涙〜

無機質な涙

夢から醒める前にその蛹に伝えて
言葉の魔力をあたしから奪わないで
瓶に詰めて持っていかないでと

あのね
あなたが久しぶりに夢の中にいたから
無機質な歯みたいなとこで胡座かいてさ
灰色の大きな蛹を抱えてるから

夢の中だって知ってる
あたしを緩やかに締め出したあなただもの
鍵もかけないほどあたしを信用して
扉を開けたままのあの部屋から
あたしを追い出したあなただもの

だから言ってし

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絵描きの夢日記語り 4  〜魔女の歯形〜

絵描きの夢日記語り 4 〜魔女の歯形〜

魔女の歯形

硝子張りの立方体の部屋
光源は深夜の映画
硝子の向こうでのぞき込む
幼な子の小さな顔
あれはたぶんあたしのむすこ
かわいいむすこ

あたしと並んで壁にもたれてるそのひとは
幼いころの弟のように
ぐったり小さくみえて
何に追われているのか
何を追っているのか
穏やかにふるえて
朝が来るのを待つ
夜から生まれたくせに
夜がこわいのね

あたしは両のてのひらを
そのひとの両のてのひらと合わ

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絵描きの夢日記語り 3 〜なんでもない〜

絵描きの夢日記語り 3 〜なんでもない〜

なんでもない

なんでもない

なんてことはないのだ

虫歯みたいな石の上に

晒された脈打つ心臓の音

狂気の濁流に抗わず

彼岸横目に一滴のなみだ

ねえ、まっかな花束をくれたのは誰だった?

ねえ、まっさおな空ってどんな色だった?

ねえ、黒い大きな鳥が頭上を掠めたのはいつだった?

片方の靴が脱げたってなんでもない

なんてことない

くぐり抜けるだけの空の穴

はりぼてだらけでなんにもな

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絵描きの夢日記語り 2  〜囚われ〜

絵描きの夢日記語り 2  〜囚われ〜

囚われ

鉄格子から伸びる紫色の右手
何かを掴もうと宙を掻く

今一番欲しいものはなんだ

 魔法の絨毯

湿気を許す剥き出しのコンクリート
鉄格子から彷徨い出る紫色の指
床の開かれた本から文字が起き上がる

今一番見たいものはなんだ

 へびつかい座

紫色の爪が鋭く弱々しく伸びる
頁に置かれたままの形で
ひらひらと行儀よく浮遊する文字たち
触れると消滅しそうな絨毯みたいだ

今一番食べたいもの

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絵描きの夢日記語り 1 〜魚(うお)〜

絵描きの夢日記語り 1 〜魚(うお)〜



 魚

あたしは水槽の中の魚

海は知らないことになってる

どうやらここで生まれて

どうやらここで生きてるみたい

音の無い世界

あたしの鰓の呼吸と

前世の心臓の鼓動だけが

魚のあたしの耳に干渉してる

あたしはあなたを観察してる

分厚い水槽ごしに感じる

困った顔、疲れた顔、悲しい顔

あたしが持ち得ない数多の種類の顔

笑った顔、驚いた顔、痛みの顔

あたしには選べない数多の気

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