餓狼

思考を留めるための箱

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記事一覧

空気を纏う~あとがき~

時代の空気を瞬間的に切り取るのが大衆文学。 時代の経過に伴う風化に対し耐用年数が長いものが純文学。 純文学作品を扱う芥川賞は芥川龍之介。では大衆文学作品を扱う直…

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10日前
7

空気を纏う

僕は田舎のシティボーイ。 小学生時代は冬でも短パンをはいて、外で元気よく遊び回っていた。”週刊少年ジャンプ”(注1)の中で中学生になった翼くんと日向くんが全国大…

餓狼
2週間前
17

白昼夢~心の服を脱ぐ~

あかりちゃんは生意気だ。 仕事で何かにつけて食ってかかってくる。的はずれな時も無いではないが、でも大体が大人が無くした大切な何かを気付かされることが多く反論しよ…

餓狼
3週間前
3

性癖迷子~乳首舐め~

「身体のどこが感じやすいっすか?」 彼の性癖を紐解こうとインタビューした時、逆に彼は僕に聞いてきた。 人の快楽耽り方はひとそれぞれだ。僕の場合は「ミル」という行…

餓狼
1か月前
4

性癖迷子~和姦~

人にはそれぞれ理想のセクシャルファンタジーがある。でも僕自身のセクシャルファンタジーは未だによく分からない。強いてあげるとすれば「ミル」こと。自分の身体の下で欲…

餓狼
1か月前
8

性癖迷子~スワッピング~

少年時代はとても牧歌的だった。河原で雨に濡れたエロ本を見つけては大興奮し、友達の父親が持っていた洋ピンのビデオをみんなで一緒に鑑賞し、外人の巨大なイチモツを見て…

餓狼
2か月前
9

性癖迷子~首絞め~

これは少しだけモテるようになって、でもまだまだセックスが下手くそだった頃の僕のお話。 アプリナンパがまだ世の中の主流になる前。感度の高い人達がこぞって先行者利益…

餓狼
2か月前
4

性癖迷子~ロリコン~

大学時代、現実逃避の果てに海外に身を置いていた時期がある。当時、日本人の海外指向が強かったこともあるが、それ以上に自分の居場所を見つることが出来ない、人と同質化…

餓狼
3か月前
1

性癖迷子~ソドミー~

田舎で過ごしていた思春期の僕は、性に対して人並みに興味はあったのだが、赤面症だったので女の子と目を見て話せなかった。都会の大学に出て直ぐに出来た友達にそのことを…

餓狼
4か月前
2

性癖迷子~はじめに~

前に性癖迷子という記事を書いた。 副題はつけてなかったが、今回改めてシリーズ化する為に、副題を添えた。 2年以上、Xでサブミッシブとドミナントの世界を眺め続けた。…

餓狼
5か月前
5

空気を纏う②

世界が変われば纏う空気も変わる。 ヤンキー至上主義が蔓延っていた世界から僕は突然卒業することになる。 僕が通うことになった高校は、田舎の狭い地域の中ではそこそこ…

餓狼
5か月前
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空気を纏う①

僕は田舎のシティボーイ。 小学生時代は冬でも短パンをはいて、外で元気よく遊び回っていた。学校の友達とサッカーに夢中になって日が暮れるまで走り回り、喉が渇けば100…

餓狼
5か月前
4

失われた羞恥心を求めて

「恥の多い生涯を送って来ました。」 太宰治の人間失格の冒頭。 人間失格を書き終えた太宰は、一ヶ月後、女と共に入水自殺した。時に太宰治38歳。 人間失格は表装を何度…

餓狼
5か月前
6

人は夢を見るためにJAZZを聴く

録音技術がなかった頃。音楽を聴くという行為は全てライブだった。音楽を聴くために一部の特権階級達は、華やかな演奏場所へ向かい、プレイヤーが楽器を自由自在に奏でる大…

餓狼
6か月前
2

白昼夢

人は夢を見る。だが見た夢が幻なのかそれとも別の現実世界なのかは誰も判別できない。今の現実世界で常識とされているものが正しく全てを認識していると声高に主張するなら…

餓狼
6か月前
3

armchair philosophy

梁石日は昔、タクシードライバーだった。来る日も来る日もハンドルを握ってシートに座り、車窓から景色とそこに歩く人を眺める。時折、呼び止められた客を車に乗せ、目的地…

餓狼
7か月前
2
空気を纏う~あとがき~

空気を纏う~あとがき~

時代の空気を瞬間的に切り取るのが大衆文学。

時代の経過に伴う風化に対し耐用年数が長いものが純文学。

純文学作品を扱う芥川賞は芥川龍之介。では大衆文学作品を扱う直木賞はと聞くと、現代人は直木のフルネームを答えることが出来ない。ましてや直木三十五が書いた小説を読んだことがある人はほぼ皆無。だから大衆文学は生まれた瞬間から古び朽ち始めていくのは仕方がないこと。

だが現代人は本が売れないこの時代でも

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空気を纏う

空気を纏う

僕は田舎のシティボーイ。

小学生時代は冬でも短パンをはいて、外で元気よく遊び回っていた。”週刊少年ジャンプ”(注1)の中で中学生になった翼くんと日向くんが全国大会決勝で戦っている頃、僕らも負けじと日が暮れるまでボールを追っかけていた。そして喉が渇けば100円を握りしめ近所の駄菓子屋で”瓶コーラ”(注2)と粉ラムネを買う。コーラに粉ラムネを入れ、ブシュッと泡が瓶から飛び出す瞬間にカプッと口で覆い、

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白昼夢~心の服を脱ぐ~

白昼夢~心の服を脱ぐ~

あかりちゃんは生意気だ。
仕事で何かにつけて食ってかかってくる。的はずれな時も無いではないが、でも大体が大人が無くした大切な何かを気付かされることが多く反論しようとしても、その反論が自分が汚い大人だということを突きつけられて、つい「うっせえ」と言いたくなる。
でも好奇心旺盛で、時々目を輝かせ「それやってみたいな」と純真な目を向けて嬉しそうに言ってくる時はとても可愛い。

彼女には隠し事がある。僕は

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性癖迷子~乳首舐め~

性癖迷子~乳首舐め~

「身体のどこが感じやすいっすか?」

彼の性癖を紐解こうとインタビューした時、逆に彼は僕に聞いてきた。
人の快楽耽り方はひとそれぞれだ。僕の場合は「ミル」という行為に淫している。男は視覚野でセックスするというが、僕の場合はその極端な例のだろう。

「チンコオンリー」
「え~、それもったいなくないすか?」
「何が?」
「だって自分が気持ち良くなるためにセックスしてるのに一ヶ所しか感じないなんて」

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性癖迷子~和姦~

性癖迷子~和姦~

人にはそれぞれ理想のセクシャルファンタジーがある。でも僕自身のセクシャルファンタジーは未だによく分からない。強いてあげるとすれば「ミル」こと。自分の身体の下で欲情に狂った姿を眺めること程の興奮はない。それがどんな形態であれだ。

「私が一番興奮するのはセックスすることをおくびにも出さずにデートして、ドアから部屋に入った途端、男が豹変して私を後ろから強引に犯すこと。想像しただけでいつも濡らしてしまう

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性癖迷子~スワッピング~

性癖迷子~スワッピング~

少年時代はとても牧歌的だった。河原で雨に濡れたエロ本を見つけては大興奮し、友達の父親が持っていた洋ピンのビデオをみんなで一緒に鑑賞し、外人の巨大なイチモツを見て気持ち悪くなったり、男の妄想が沢山詰まったエロ漫画にすら純粋に興奮することが出来た。

そんな普通の小学生だった僕が、思春期に性癖というものが出来る唯一のキッカケは、団鬼六の「檸檬婦人」と出逢ったことかもしれない。といってもSMという方向性

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性癖迷子~首絞め~

性癖迷子~首絞め~

これは少しだけモテるようになって、でもまだまだセックスが下手くそだった頃の僕のお話。

アプリナンパがまだ世の中の主流になる前。感度の高い人達がこぞって先行者利益を貪っていた頃、僕も真面目にアプリナンパに取り組んだ。仕事のプロジェクトみたいに高速でPDCAを回し、修正に次ぐ修正を重ねてある目的に邁進していた。ただマッチして、メッセージで仲良くなって、実際に会って、ご飯を食べて、口説いてセックスする

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性癖迷子~ロリコン~

性癖迷子~ロリコン~

大学時代、現実逃避の果てに海外に身を置いていた時期がある。当時、日本人の海外指向が強かったこともあるが、それ以上に自分の居場所を見つることが出来ない、人と同質化することを受け入れ難い人達が逃げるように海外へ飛び出していった。そこで僕は彼と出逢う。

もし日本で彼と出逢っていたら、僕は決して友達はおろか、話しかけることもなかったであろう。金髪でひょろっとした長身。耳には数えきれない程の穴を空け、ジャ

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性癖迷子~ソドミー~

性癖迷子~ソドミー~

田舎で過ごしていた思春期の僕は、性に対して人並みに興味はあったのだが、赤面症だったので女の子と目を見て話せなかった。都会の大学に出て直ぐに出来た友達にそのことを話すと、

「人類の半分が苦手だなんて大変だなあ」

と何気なく言った一言が僕を変えた。極端から極端へ。今となっては自分らしいと思うが、友達の言葉を聞いてから一週間も経たない内に、僕は初キスから初セックスまで済ましてしまう。そして僕はロマン

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性癖迷子~はじめに~

性癖迷子~はじめに~

前に性癖迷子という記事を書いた。

副題はつけてなかったが、今回改めてシリーズ化する為に、副題を添えた。

2年以上、Xでサブミッシブとドミナントの世界を眺め続けた。自分のより深い、より濃い性的エクスタシーを獲るための鍵を探していた。

でも今は違う。僕は単なるサピオロマンティックで、純粋なドミナントではないと分かった。当初はDSの人達が紡ぐ言葉にとても惹かれた。Xの世界では雑で、矮小で、手に取る

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空気を纏う②

空気を纏う②

世界が変われば纏う空気も変わる。

ヤンキー至上主義が蔓延っていた世界から僕は突然卒業することになる。

僕が通うことになった高校は、田舎の狭い地域の中ではそこそこの学校だった。今まで毛嫌いしていた坊ちゃん嬢ちゃん達が通う場所。高校の自己紹介で出身中学を告げるとクラスがざわつき、そして直ぐに静かになった。突然、影で蔑視してた野蛮な部族が平和な村に突然押し掛けてきたから。
そこで僕は一計を図る。みん

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空気を纏う①

空気を纏う①

僕は田舎のシティボーイ。

小学生時代は冬でも短パンをはいて、外で元気よく遊び回っていた。学校の友達とサッカーに夢中になって日が暮れるまで走り回り、喉が渇けば100円を握りしめ近所の駄菓子屋でコーラと粉ラムネを買った。コーラに粉ラムネを入れ、ブクブクと泡が瓶から飛び出す瞬間にカプッと口で覆い、涙目で咽びながらも全部飲み切ることが最も格好いいヤツだという、今考えれば訳の分からない価値観の中で生きてい

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失われた羞恥心を求めて

失われた羞恥心を求めて

「恥の多い生涯を送って来ました。」

太宰治の人間失格の冒頭。

人間失格を書き終えた太宰は、一ヶ月後、女と共に入水自殺した。時に太宰治38歳。

人間失格は表装を何度も何度も変えながら若い人に読み継がれている。恥を恥と感じることが出来る世代にとって、自分を恥じ入り、自分自身を虐め抜くこの小説は、生きることの恥ずかしさに消え入りたいと思っている羞恥心を失っていいない若者が、太宰と自分と重ね合わせ、

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人は夢を見るためにJAZZを聴く

人は夢を見るためにJAZZを聴く

録音技術がなかった頃。音楽を聴くという行為は全てライブだった。音楽を聴くために一部の特権階級達は、華やかな演奏場所へ向かい、プレイヤーが楽器を自由自在に奏でる大量の音に身を浸し、その限りある時間を楽しんでいた。

時間が流れ、やがてセンセーショナルな発明が生まれた。

1877年にエジソンが蓄音機「フォノグラフ」を作り、自信の声で「メリーさんの羊」を録音する。発売当初、演奏する人がいなくても音楽を

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白昼夢

白昼夢

人は夢を見る。だが見た夢が幻なのかそれとも別の現実世界なのかは誰も判別できない。今の現実世界で常識とされているものが正しく全てを認識していると声高に主張するなら別だが、脳の研究が全く進んでいない現在、心の在処を探す羅針盤すら無いのに全てを妄想と片付けるのは早計過ぎるといわざるを得ない。

2階建てのカフェテラス。太陽の光は強くもなければ弱くもなく、空気はカラッと乾いているが風はない。英語で言う"c

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armchair philosophy

armchair philosophy

梁石日は昔、タクシードライバーだった。来る日も来る日もハンドルを握ってシートに座り、車窓から景色とそこに歩く人を眺める。時折、呼び止められた客を車に乗せ、目的地まで車を走らせる。むすっと黙ったまま窓の外を眺める客もいれば、話しかけてくる客もいる。そうやって見知らぬ人と言葉を交わす。一期一会。次に同じ人を乗せることなんて滅多にない。だからなのか客の口は時に軽く、嘘とも本当とも判別をつけることの出来な

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