記事一覧
空気を纏う~あとがき~
時代の空気を瞬間的に切り取るのが大衆文学。
時代の経過に伴う風化に対し耐用年数が長いものが純文学。
純文学作品を扱う芥川賞は芥川龍之介。では大衆文学作品を扱う直木賞はと聞くと、現代人は直木のフルネームを答えることが出来ない。ましてや直木三十五が書いた小説を読んだことがある人はほぼ皆無。だから大衆文学は生まれた瞬間から古び朽ち始めていくのは仕方がないこと。
だが現代人は本が売れないこの時代でも
性癖迷子~はじめに~
前に性癖迷子という記事を書いた。
副題はつけてなかったが、今回改めてシリーズ化する為に、副題を添えた。
2年以上、Xでサブミッシブとドミナントの世界を眺め続けた。自分のより深い、より濃い性的エクスタシーを獲るための鍵を探していた。
でも今は違う。僕は単なるサピオロマンティックで、純粋なドミナントではないと分かった。当初はDSの人達が紡ぐ言葉にとても惹かれた。Xの世界では雑で、矮小で、手に取る
失われた羞恥心を求めて
「恥の多い生涯を送って来ました。」
太宰治の人間失格の冒頭。
人間失格を書き終えた太宰は、一ヶ月後、女と共に入水自殺した。時に太宰治38歳。
人間失格は表装を何度も何度も変えながら若い人に読み継がれている。恥を恥と感じることが出来る世代にとって、自分を恥じ入り、自分自身を虐め抜くこの小説は、生きることの恥ずかしさに消え入りたいと思っている羞恥心を失っていいない若者が、太宰と自分と重ね合わせ、
armchair philosophy
梁石日は昔、タクシードライバーだった。来る日も来る日もハンドルを握ってシートに座り、車窓から景色とそこに歩く人を眺める。時折、呼び止められた客を車に乗せ、目的地まで車を走らせる。むすっと黙ったまま窓の外を眺める客もいれば、話しかけてくる客もいる。そうやって見知らぬ人と言葉を交わす。一期一会。次に同じ人を乗せることなんて滅多にない。だからなのか客の口は時に軽く、嘘とも本当とも判別をつけることの出来な
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