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5月3日(金)鈴々舎美馬 ネタ下ろしひとり会(なかの芸能小劇場)



美馬  江戸山コニンの事件簿
 美馬さん自作の落語。電動キックボードで現れた江戸山コニン(あの国民的アニメの主人公のもじり)が、偶然出会った男を「爆弾魔」と決めつける。男はもちろん反論する。そこへ警察官が通りかかり、話はよりややこしい方向へ進む。

 美馬さん特有の皮肉な科白・調子で笑わせる。警察官の「逮捕するよ」が、ある種のパワーワードになっている。
 新作落語は無理にサゲをつける必要はないと思う。この噺は、ある国民的アニメの決め科白で締められている。ちょっと脈略がないように思う。じゅうぶん面白い噺なので、締め方しだいでもっと良くなる可能性を秘めている。

美馬  権助提灯
 「あの子」(妾の事)を気遣うフリをする女房とその胸のうちに気づかない旦那とそれに気づいて彼を追い返す妾。その間で振り回される権助。滑稽噺だが、とりようによってはホラーにもサスペンスにも聴こえる。
 女房の嫉妬がやや見えすぎているきらいがあるが、美馬さんは三者三様の思惑をカラフルに演じ分け笑わせた。

ー仲入りー

美馬  午後の保健室
 この柳家喬太郎作の新作落語には、ある「仕掛け」があるので、あらすじは書かない。ただ、ある小学校の保健室に児童らが集まってくるものと思ってくだされば良い。
 落語を聴く時、我々は頭の中でその登場人物が男性か?女性か?何歳くらいか?想像する。だが、喬太郎師は、それを見事に裏切ってゆく。だから、この噺は映像化不可能である。あらゆる偏見・主観を打ち砕く特異な一席である。美馬さんはそこにジェンダー・フリーの要素を加えた。決して声高にLGBTQを主張するわけではない。落語は「青年の主張」ではないので。現代を描写するための「借景」として機能していたと思う。
 ネタ下ろしということだが、美馬さんの解釈を加えて、笑いも多かった。養護教諭の「殺すよ」がパワーワード。今月14日には中野ZEROでの落語会『柳家の一族』で柳家喬太郎師の前で掛ける。スリリングな一席を味わいたい。

トークタイム
 落語3席がやたらと早く終わってしまったので、席亭のむつみさんを交えてのトークとなった。
 美馬さんは大学時代(桜美林大学)、落語研究会に所属していたが、高座名は「雛菊亭ちづる」。雛菊はチェコスロバキアの映画『ひなぎく』からきている。
 むつみさんから禁断の質問。「大学時代の恋愛」について質問が飛んだが、あまりパッとしなかったらしい。
 これまで現在これからの美馬さんについての一端が垣間見えたひとときであった。




















 

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