未来へのプレゼント(33)

先日、プロジェクトのメンバーと勉強会の企画をしている時、今日の経験がいつ役に立つかわからないよね、なんて話になりました。

それでも思い出に残るプロジェクト

この20年、様々な会社で、様々なプロジェクトに出会ってきました。それぞれのプロジェクトの難しさ、楽しさ、学び、そして、出会った皆さんとのご縁。似たような要素はあるものの、1つとも同じプロジェクトなく、思い出深いものばかりです。参画したプロジェクトの終わり方にもたくさんありました。残課題なく完了できたり、課題山盛りだったり、スケジュールが間に合ったり、間に合わなかったり、予算に収まったり、収まらなかったり。周囲の皆さんのご縁と力添えのおかげで、責任者として携わったプロジェクトは最後まで関わることができていて、これがちょっとした自慢です。複数のチームから構成されるプロジェクトで、1チームのリーダーとして参画していた時、プロジェクトが凍結されたことがありますが、中断に至るプロセスを経験できて貴重な学びの機会となりました。
それでも特に印象に残るプロジェクトはやっぱりあります。その中の1つは、オーストラリアの会社の企業統合に伴う、財務を中心とする業務改革、システム刷新のプロジェクトです。推進体制は、日本、香港、オーストラリアに跨って構築されていて、プロジェクトマネージャーだった私は1年365日のうち300日くらいを海外で過ごしていました。

参画のきっかけ

お客様関係者はこのプロジェクトについて重要で難易度の高いプロジェクトであると事前にわかっていたこともあり、体制づくりには慎重を期し、また、悩まれていました。私は偶然に、別件プロジェクトのマネージャーとして近くにおり、そのプロジェクトも山を越えてきタイミングで、「こういうプロジェクトだけど、どうかな」とご相談頂いたのが参画のきっかけです。
その当時、私自身は、このプロジェクトに類似度の高いプロジェクト実績はありませんでした。そのプロジェクトで必要な要素は多岐にわたっていますが、代表的なものをあげるとこんな感じです。
・企業統合
・会計知識(和文会計、英文会計)
・お客様の営業知識
・業務分析と業務設計(特に別企業の既存業務の統一)
・パッケージシステムの導入
・スクラッチシステムの導入
・プロジェクトマネジメント(外国人メンバーを含む)
・ファシリテーション(外国人のお客様を含む)
・経営者コミュニケーション(日本語、英語)
・英語
これらの要素をすべて兼ね備えたプロジェクトはそう多くもありませんが、私自身もそのようなプロジェクトを経験していませんでした。ただ、それぞれの要素を経験したことはありました。

要素は時間をかけて導かれるように集まっていた

一般論として、企業統合、業務分析と業務設計、システム導入、プロジェクト管理は、システム開発会社やコンサルティング会社に所属していれば、経験できる機会は比較的多くあると思います。ただ、全員が同じ経験を積むわけではありません。経験を通じた実践的な専門性が重視される業界では、幅の広い経験を積む人ばかりではありません。私は一つのお客様と長くお付き合いしたお陰で、そのお客様の経営課題に合わせて未経験分野を含むいろいろなプロジェクトを打診頂き、参画させてい頂いたため、幅の広い経験を積むことができました。経営者コミュニケーションもその過程で経験していきました。事前に意図したわけではなく偶然の賜物です。英語は学生時代に留学していたことである程度はできるようになりました。英文会計は留学しているときに、履修したBusiness studyのカリキュラムに含まれていました。外国人とのファシリテーションは当時の友人付き合いを通じて感じた、日本人と外国人の常識、感じ方、考え方の違いが役に立ちました。

いつ役に立つかはわからない

こんな要素もそれを経験している時は何に役に立つのかなんてわかりませんでした。ただ、目の間にあって、それに向き合う環境にいたというだけです。特に、英文会計はその例です。Business studyを履修したことは私の選択ですが、その中に英文会計があるなんてわかっていませんでした。授業中は英語についていくことに唯々必至で、Accountingとか、Revenueなんて言葉自体、よくわからず、今会計の勉強しているんだってことすら気づくのに時間がかかりました。履修も終わりに近づいた頃に、「この知識がどこで役に立つんだろう、会計に携わりわけでもないのに」なんて考えたことを思い出します。
こんな感じで得た知識のお陰で、14年後に思い出深いプロジェクトに参画することができるのですから不思議なものです。つくづく人間の経験能力、認知能力って限られているんだなと思います。今日得たものがいつ役に立つのか、自分の人生にどんな意味を持つかなんて、その時はわかりません。私は「人は自分で未来をデザインして実現する」と信じていますが、その過程にある、出逢い、ご縁、それは人とのものであっても、自分の経験や知識であっても、は予測もできないし、計画もできません。
今日いちにち、何かよいものを得て、また、よいものを残して、今日が未来へのプレゼントになるように過ごしたいと思います。

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