転職のきっかけは突然やってくる
突然のお誘いであわてる
こんな仕事あるらしいで。受けてみたら?
私の斜め後ろにすわっている先輩が、求人サイトをみせながら、突拍子もないことを言ってきた。
忙しい時に限って、わけのわからん話題をふってくる。ちょっとめんどくさい先輩だ。
はいはい、また今度また、ききますわ、とお茶を濁して、その場を去った。
新しい世界を見てみたい
家に帰って、シャワーを浴びている時、
ふと先輩の言葉が頭をよぎった。
「転職かあ。そういや、一時期考えてたなあ。明日、先輩に詳しい話し聞いてみよかな」
入社してから15年、ずっと設備の海外営業をやってきた。当時は、バンコクに駐在していた。
何十億円稼いだとおもったら、品質問題で徹夜したり、撤退に追い込まれる事業もあったり、なかなか浮き沈みが激しい仕事だったけど、おもしろかった。
仕事を協力してくれる人たちもそれなりにいたし、人間関係もよく、特に大きな不満はなかった。
しかし、ここ最近は、経営陣もかわり、保守的な雰囲気が社内を渦巻いていた。
手っ取り早く売上をあげることにしか興味がなさそう。この会社も、潮時かな。そう思うことも、ちょくちょくあった。
そんな折、先輩が教えてくれた仕事は、競合他社の新規事業の立ち上げの仕事だったのだ。先輩は、私の仕事ぶりを見て、適性があるんじゃないかと思ったらしい。
「これはおもしろそうかも。しかし、まさか、競合他社とはおもわんかったな。先輩もなかなか渋いとこつくな。」
その競合他社は、私の専門分野に関する事業を伸ばしたいようで、事業立ち上げメンバーを探していた。
ああ、知らない世界を見てみたい!
その欲求がふつふつと湧き上がる。思い立ったら吉日。さっそく求人サイトをチェックした。
あっという間に退職
職務経歴書を送付し、バンコクからオンラインで面接を3回受け、2ヶ月足らずで、採用が決まった。
しかし、そこからが少し辛かった。
関係者に退職の挨拶をして回ったが、競合他社に転職するというのを、よく思ってない人は意外と多かった。
いい顔しない人もいたし、裏切り者といわれたこともあった。転職することが不幸だという人もいた。連絡が途絶えた人もそれなりにいた。
何にもできない新入社員の頃から、ずっと、育ててもらった会社ではあるし、もちろん感謝はしている。
しかし、それよりも、知らない世界を見たい気持ちの方が強かった。今の会社に居ては、見ることのできない世界が必ずあるから。
それに、競合他社というよりは、一緒に、業界を盛り上げる仲間だと思えばいいのになと思っている。
私のことを理解してくれる人たちもいた。
特にお世話になった近しい人たちは、みんなはじめは、驚いていた。ひきとめてもくれた。
しかし、思っていることを隠すことなく話すようにした。やっぱり、お前らしいなと祝福をしてくれた。
社内外の挨拶回りを終え、退職手続きをすませて、同時駐在していたバンコクから、日本に帰国した。
コロナ禍だったので、色々面倒だったが、最後の最後まで、前の会社の人たちは、なんだかんだよくしてくれた
新しい世界はおもしろい
2週間の隔離を開けてからすぐ、2021年4月1日、新卒採用の子達と入社式に出席した。
アラフォーのおっさんが、入社式なんて、なんだか小っ恥ずかしかった。
あれからもう、1年が経とうとしている。転職してよかったか?前の会社の同期と呑んでいる時に聞かれた。
うん。よかったわ。同じ業界でも、知らない世界がたくさんあったんやなって気づいた。それがすごいおもろいねん。
最初こそ、競合他社から来た人みたいな感じで距離を置かれていたが、徐々に人間関係もできてきた。
今は、いろんな人から、私が知らなかったことを、色々教わっている。
ベテランの方たちはもちろん、自分より若くても現場経験のある人たちから、色々と教えて貰っている。
えっ、そんなことも知らないの?って、思われていれるかもしれないが、それでもいい。プライドなんて必要ない。
なぜなら、もっと知識を身につけ、経験を積んで、未知のマーケットを開拓していきたいのだから。これからもっと、新しい世界を見てみたいと思うから。
4月からは、また、海外赴任になった。またまた、新しい世界を見れるチャンスが転がっている。
転職してよかったこと、それは、知らない世界を知ることができたことだと思っている。居心地のいい場所から離れてみないと、見えない景色はあるもんだ。
転職のきっかけは、いきなりやってくる。
キャリアプランなんて考えずに、勢いで転職しちゃったけれど、結果オーライ、すごく満足している。
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