見出し画像

バンコクの夜明けに友人と。フードランドのガパオライス

アクシデントの朝

「あのね、薬物所持の疑いで警察に捕まったんだ」

まだ、辺りは暗いというのに、枕元の携帯電話が鳴り響いていた。タイ人の友人であるココから電話がかかってきて、飛び起きた

その日、ポーランド帰りのソムチャイを空港に迎えに行って、モーニングをしようと約束していた

お互い仕事が忙しくて、なかなか会う暇もなく、全員が揃うのは、仕事がはじまる朝の束の間だけだった

寝ぼけていたので、何が何だかよくわからなかったが、とりあえず、タクシーで、警察署のあるラマ9に向かった。

暗闇の中に野犬の声が鳴り響くバンコクの明け方

警察での出来事

ソムチャイも空港から、駆けつけていた。

いつもは気の強いココもさすがに消耗しきった顔で、俺たちの顔を見つめた。彼女から、ことの一部始終をココから聞いて、驚きが隠せなかった

空港に向かう途中で、ココは検問所でひっかかってしまった。徹夜明けで、目が真っ赤であったこと、そして、トランスジェンダーという理由で、薬物所持の疑いがかけられたのだった

尿検査を受けるために、警察署に連行され、彼女は辱めをうけることになる。検査を受ける間は、同性の警察官が一部始終監視するのがしきたり。

戸籍上は、男性ではある彼女も例外ではない

「男同士なんだから、グズグズするな」そう罵られて、泣く泣く検査をする羽目になった、と

当たり前だが、彼女は薬物を所持しているわけもなく、釈放された。しかし、警察から、謝罪の一言もなかったという

気丈にふるまう彼女だが、腑が煮え繰り返る思いだっただろう

フードランドのガパオライス

眠気まなこをこすりながら、お腹をすかせた俺たち3人は、近くにあったフードランドで朝食をたべることにした

フードランドは、1972年に開業したアジアではじめの24時間営業のスーパーマーケットだ。全国で22店舗展開しているちょっぴり高級なスーパーチェーンだ

店内には、24時間営業の食堂があって、タイ料理だけでなく洋食も食べられる

3人とも、無言のまま席につき、互いに好きなものを注文した

俺は、目玉焼きとソーセージのモーニングセット、ココは、カオパット(炒飯)そしてソムチャイは、ガパオライス

「フードランドといえばガパオなんだよね」

そう言って、ヨーロッパ帰りのソムチャイは、久しぶりであろうタイ料理を頼んだ

無言のまま時が過ぎていく。運ばれてきたガパオライスには、フワフワでアツアツの目玉焼きが添えられている

甘くてフワフワの目玉焼きを一口大にきって、ピリッと辛いガパオ炒めをアツアツのジャスミンライスとともに頬ばる

ココと俺は、自分の頼んだものには目もくれず、ソムチャイのガパオを横取りしてしまった

ただそばにいるだけの時間

朝ごはんを食べながら、ソムチャイと俺は、ココの話しをただ聴いていた

励ましの言葉でもかけようかと思ったけれど、浮かんでくるのは、薄っぺらい言葉ばかり

彼女の気持ちなんて分かるはずもなく、余計なことを言うのはやめた

ふと、携帯電話を見ると、時刻は、午前8時をすぎていた

普段であれば、そろそろ出勤の時間。しかし、その日はどことなく、ココとソムチャイと時間を過ごした方がいい気がした

眩いばかりの朝日が、食堂に差し込む。ただ、一緒にいるだけの時間

「コイツらのこと好きなんだよな」

ちょっぴり苦いコーヒーを口にしながら、ココとソムチャイの顔を眺めていた


今回、ご紹介したのはタイのスーパーマーケットチェーン「フードランド」に併設されている食堂のガパオライス。フワフワの目玉焼きと容赦ない辛さの鶏肉のガパオ炒めが病みつきになりますよ

お話しにでてきたフードランドは、ペッブリ通りにあります。その他、たくさんの店舗がありますので、見つけたら是非、立ち寄ってくださいね

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?