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こんにゃくをチリチリになるまで炒める

先日、会社から家に帰ると
消しゴムみたいなものが夕飯の食卓にあった。
ちょっと黒っぽい。
しかも七味がかけてある。
なぜか理科系夫のお皿だけあって、私の分がない。

よくよく眺めてみたが、
なんだかわからない。
たぶん食べ物なんだろうけど…。

あつこ「これなあに」

理科系夫「あ、これ?」

あつこ「食べ物だよね」

理科系夫「いや、あっこは多分食べられないだろうから」

なぜか歯切れが悪い。

あつこ「これいったい何なの?」

理科系夫「こんにゃく」

あつこ「え?」

理科系夫「こんにゃくのピリ辛炒め」

確かに、大きめのこんにゃくを買ってしまい、余っていたのだ。

理科系夫「こんにゃくを使い切ろうと思ってレシピを検索したら、こんにゃくのピリ辛炒めが出てきた」

目の前のお皿に入ったものは、使い古しの消しゴムのようにしか見えない。

あつこ「……」

ーーーーー

理科系夫「レシピにこんにゃくをチリチリになるまで炒めるって書いてあったから」

理科系夫「時間が書いてなかったから」

あつこ「いったい何分間炒めたの」

理科系夫「29分」

あつこ (言葉が出ない)

理科系夫「チリチリと言うのは、表面に水分がなくなる状態だと思ったので」

理科系夫「なかなか水分がなくならなくて」

あつこ「これ、こんにゃく、ずいぶん縮んでいるんじゃない?」

理科系夫「そうだね、縮んでしまった。なんだか満足がいく出来上がりにならなかったから。
自分だけで食べることにした」

あつこ「29分!
よくそんな長い間できたね」

理科系夫「だって頑張ったよ。
何分間炒めるのか、ちゃんと書いてなくてわからないよ」
(不満げに)

そうだった。
理科系夫は
●さっと炒めるって何分間炒めるの
●塩ひとつまみって何グラム?
と真面目な顔で質問してきて、困ったのだった。

あつこ(こらえきれず笑ってしまう)
「あ、でも!
フライパンが痛んでないかどうか心配だわ」

理科系夫「そんなの大丈夫でしょ。
中にものが入って炒めていれば。」

あつこ「炒めすぎ。
あのフライパン、頑張って買ったフィスラーだから大事にしてるの」

理科系夫 (ちょっと気分を悪くしている。)

ーーーーー

あつこ「わかったから。
ちょっと食べてみるね」

30分ちかく炒めたこんにゃくは
縮んでいて
コリコリ。

思ったよりも不味くなかった。
お酒のつまみには、向いている。

あつこ「なーんだ、思ったほどまずくないよ」

理科系夫「なら、よかったけど。(ほっとしている)
あいまいな書き方は困っちゃうよ」

あつこ「ふふふ、チリチリに炒める、か。
ふふふふ」

理科系夫「笑いすぎ」

あつこ「だから、料理には適当にやる、っていうのも必要なのよ」

理科系夫「再現性がない。
同じものができなくて困っちゃうでしょう」

あつこ (黙ったまま、にこにこ)

ーーーーー

理科系夫「ボクはもう、こんにゃくのピリ辛炒めは作らない」(宣言する)

あつこ「ええー、作ってよ」

理科系夫「料理を好きで、やっているわけじゃなくて、必要で迫られてやってるから。
できるだけ手間がかからず、美味しく、再現性がないとできない」

あつこ(まさか、すねてる…?)

理科系夫「もう作らない」

あつこ「はいはい、わかった。
あ、この厚揚げのキムチチーズ、美味しいよ!」

理科系夫(ほっとしたように)
「よかった」

こうして
2人だけの夕食の時間が過ぎていく。

一生懸命作ってくれたんだよね。
どうもありがとう。

(トップ画像はネットからお借りしました。
実際の写真を撮るのを忘れて残念。)

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