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本と服と深夜ラジオと文学が好きです

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  • コルクラボ ガーデン [CORK Lab GARDEN]

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    「コルクラボのメンバーが書いたコルクラボに関するnote」を集めたゆるーいマガジンです #コルクラボ

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これまでに書いた文章

蓼食う本の虫「太宰治と私」 ぶんしょう社かがみよかがみ 天狼院書

    • かさぶた・生活の延長線上にある死

      恋人と別れて3ヶ月も経つと、もう恋人がいたときの感じを忘れてしまう。 父が亡くなって3年も経つと、父がいたときの感じを忘れてしまう。 人間とは薄情というか忘れっぽいというか。 でもそれは生きていくために必要な薄情さだと思う。血がどくどくと流れる湿った傷はいずれ乾きかさぶたになる。 そろそろ自分の映画の企画を考えたいなと思っている。最近ビクトル・エリセのエル・スールとコゴナダのアフターヤンという映画を観た。 どちらも、もうこの世にはいない人のまなざし、や記憶というモチーフが出

      • 父の記憶とメルカリ

        実家の片隅に古いがよく手入れされたフィットネスバイクが鎮座している。母はダイエットのために、祖母は数年前に手術した膝のリハビリのために時折漕いでいるらしい。 このフィットネスバイクには今はもう亡き父の命で私がメルカリで購入し、父が出品者のもとに受け取りに行ったという逸話が隠されている。 思えばあれが最初で最後の父との連携プレーであった。 長く続いた反抗期もついに終わりを告げ、そろそろ親孝行でもするかと思った矢先、父はあっけなく亡くなってしまった。その少し前に、祖母が膝を悪く

        • 流動的な部屋

          人ってみんな霧みたいなものを纏っていて、誰かに会うと自分の纏っている霧とその人の霧が融合してまったく新しい霧がうまれる。 いや部屋?部屋のほうが近いかもしれない。なんかこう、流動的な部屋みたいな、視覚的に表現すると粒子でできた部屋みたいなものを背負ってみんな歩いていて他人と一緒に過ごすことでそれが融合する。ふたりもしくは3人以上で居心地良い部屋を作れる人にときたま出会うと嬉しい。 他人と一緒にいると夜も拡張する。自由を感じる。 ひとりでいる時よりもずっと自由だと感じる人と最近

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        記事

          悪は存在しない

          悪は存在しない、まったくといっていいほど消化できていないんだけど、冒頭の流れる木々を歩きながら眺めるように下から撮っているシーンが観れただけで私の人生で映画というものに触れていてよかったと思った。やっぱりとんでもなく画が美しい映画って、風景とか登場人物が無言でなにかの作業をしているところだけを3時間お腹いっぱい観たいなという気持ちになるな。あの薪割りのシーンだけでご飯三杯は余裕でいける。終わったら無意識のうちにパンフレットを買っていて映画館を出た記憶がない。 なんだかその後の

          悪は存在しない

          起こっているフリ・マックの紅茶・映画館

          久しぶりにお母さんが子どもを叱っているのを間近で見た。子どもの頃、親に怒られるとこわくて悔しくてイライラして泣きたかった、そんな気持ちを思い出した。今ならこのお母さんはほんとうはそんなに怒っていなくてほとんどパフォーマンスなんだということがわかる。子どものため。子どもにそれはやっちゃダメなんだと身体で覚えさせるために怒っているフリをする。 ブンミおじさんの森、ながら見してたら全然わからなかった。映画は全身で観なくちゃいけない。構図とか空気感とか全体に漂うしっとりした雰囲気は

          起こっているフリ・マックの紅茶・映画館

          戯曲・劇中劇

          八日目の蝉を戯曲になおしている。前半は誘拐犯である希和子の独白なのであるが、セリフを書き起こし、行動をト書きに起こす中で、不思議なものでまるで自分も希和子と一緒に旅をしているような、まるで希和子になったような気持ちになる。 今まで一度も母親になったことはないのに、庇護しなくてはいけない小さいものを抱えているような。希和子の目線で世界を見ている。こんなことがあるとつくづく、脚本を書くというのは身体的な行為だよなと思う。 ガープの世界の悲劇的な劇中劇が大好き。 泣く女。シカゴを

          戯曲・劇中劇

          故人との関係性・自由と逃亡

          異人たち。タワーマンションで孤独な生活を送っている脚本家のアダム。家族の物語を書いている。アダムが12歳の時に両親は亡くなったので家族の記憶は遠く薄れていた。ある日、思い立って自分が生まれ育った郊外の家に行ってみると死んだはずの両親が生活していた。アダムと両親は久しぶりの家族の時間を楽しむ。 アダムの性自認はゲイであり、同じマンションに住むハリーと恋人のような関係になる。両親との関係、ハリーとの関係がどう変わっていくのか。 みんながやっているようにあらすじを書いてみたが、意

          故人との関係性・自由と逃亡

          削片

          関西にいる時、自分が関西弁を喋れないことがコンプレックスだった。どうにも表現したいニュアンスがあの関西弁のイントネーションでしか言えないことがままある、と東京にいる今でも思う。 使う言葉の温度が同じくらいの人と出会いたい。 久々に体調を崩して家に閉じこもっていた。 いつものように映画を観る。一歩も外に出ないと気持ちまでうちにこもってしまって、ぼんやりとした将来への不安とか昔あった嫌だったことで部屋が埋め尽くされてしまう。天気が悪いのも良くない。 映画をたくさん観たい。観

          最近観た映画

          フィルマークスってあれに似てるな、あの図書館の貸出カード。観た映画をクリップしたら、またコイツいるじゃん、みたいな。フィルマークスは令和の図書カード。 中村屋酒店の兄弟は色使いが好きだった。全体的に彩度低めで、いかにも田舎にありそうな実家感。 やっぱり外で煙草を吸うシーンは画になる。 家族も大人になるとお互い気を遣ったり、優しくしたり、昔よりずっと他人みたいになるんだよな。 パストライブス。人は人生にドラマを求めているし、よくよく目を凝らせばドラマは至るところに転がってい

          最近観た映画

          夜とウォークマン

          はじめてウォークマンを買ったのはたしか中2の時だった。いま思い返しても、あの時期がいちばん人生が辛かった。 甘い予感がしたものだ。もしかしたら私はこの小さな鉄の板によって救われるかもしれない。 夜布団の中でイヤホンを耳に刺して音楽を聴いた。 そこにはひとりの世界があった。 そうか、私はこれから先どんなことがあってもいつだってこの場所に帰ってくることができるのだと思った。この場所だけはなくならない。 たぶんあれが、初めて「夜」を手に入れた瞬間だったように思う。

          夜とウォークマン

          新しい仕事・ソラリウム

          最近、副業として新たなことを始めた。まったく土地勘のない領域の仕事である。 そして師匠は何も教えてはくれない。大量の資料を与えられ、読んで、みて勝手に学べというスタンス。 社会人歴もある程度重ねるとどんな仕事でもなんとなく進め方とか、依頼主は何を期待しているのかというのがわかってくるものだ。 しかしこんなに初めての仕事だとその解像度があまりにも低い。 たぶんまだこの領域の「言語」を知らないからだ。 会社とかで新しい仕事をする時はやる前に必ず言葉で成果物のイメージをすり合わせる

          新しい仕事・ソラリウム

          関係性を都度修復しながら維持する営み

          出来事や人間同士のやり取りといったあらゆる事象は言葉で説明するにはあまりに多面的で多くのものがこぼれ落ちてしまう。言葉を尽くすほどに実態とはかけ離れたものになってしまう。 私とあなたという最小単位ですら、その関係性や二人の間で交わされた会話についてあとから思い返してみてもつ印象は私とあなたそれぞれで異なる。 夫婦を夫婦たらしめる、家族を家族たらしめるものとは一体何なのだろうか。落下の解剖学に出てきた家族に関しては、家族のかたちが見えなかった。既にひとり欠けていたこともあり

          関係性を都度修復しながら維持する営み

          映画好きからの映画の誘いに騙されるな

          「映画館に映画を観に行く」というのは「レストランでディナーを食べる」とか「遊園地に行く」といったいわゆる定番のデートプランのように思われるが、映画好きにとっての「映画館に映画を観に行く」行為がどういった意味合いかというと「会社近くの定食屋にランチを食べに行く」に近い。日常的にあまりに自然にやっているのでなんの特別感もないのだ。 気になる異性から映画に誘われた時、そいつが映画好きかどうか、つまり無意識に週3くらい映画館に通っている奴なのかは確認する必要がある。 映画好きからの誘

          映画好きからの映画の誘いに騙されるな

          人間関係

          カウボーイビバップ、好きなんだけど24話が特に美しくて好きだ。 フェイはずっと喪失感を抱えていて、それははるかむかし故郷をなくして、なくしたという記憶すら失っていたからであった。 思い出したときには故郷はなかった。 誰しも同じような気持ちになったことがあるんじゃないかと思う。 同じ船で旅をする仲間達はフェイたちの不在を認識するが、特段悲しみはせず不在の彼女たちのために残しておいた食事を食べる。 お互いを尊重し合う人間関係だけが素晴らしいのではないと思う。 存在を認識する。必要

          人間関係

          人間の同一性

          人間は変化し続けるものだと思う。考えも反応も性的指向も姿形だって一秒ごとに変わる可能性をはらんでいる。 ではその人をその人たらしめるものとは一体何なんだろう。約束、一緒に過ごした時間の記憶、こちらを見る眼差し、面差し、触れたときの感じ。 そういったかすかでゆらぎやすいものが混ざり合って私たちはその人をその人であると認識している。それはとても不確かである。 アナは父の声をよく覚えていると言っていた。瞳を閉じて「私はアナよ」と言ったのは父の眼差しではなく、声によって再会したかった

          人間の同一性