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空想コトバ手帖 ―桜編―

いつの間にか暖かくなり、春の到来を肌身で感じる今日この頃。
この時期、多くの日本人が楽しみにしているもの。
桜。
普段、特別花に興味はないが、桜の開花情報は気にしてしまう。
そんな人も多いのではないだろうか。
そもそも天気予報で開花情報を大々的に知らせる花は他にない。
やはり、一斉に花を開かせる様子、すぐに散ってしまう儚さが人々を引き付けているのだろうか。
かく言う私も桜が好きであり、毎年楽しみにしている一人である。
ともかく、国花にも指定されているように、桜は特別な花だという共通認識が日本人の中にできているのは間違いないだろう。

こういう背景もあってか、桜に関する用語はたくさん存在する。
桜吹雪、桜狩、桜前線、桜色......
ここに挙げだしたらきりのないくらいであり、もはやゲシュタルト崩壊しそうになる。
さらに桜そのもに関係なくても、名前に桜を用いることもある。
桜花賞という競馬の賞の名前にもなっているし、桜が咲くころにとれるイカのことを、わざわざ桜烏賊さくらいかなんて呼んだりもする。
日本人の多くに愛される花として、様々な言葉や名前に「桜」が含まれているのだ。

そこで、私も桜を含む言葉を新しく考えてみたら面白そうだと思い立ち、いくつか考案したので下に記していく。

桜週間  ーさくらしゅうかんー
4月1日からの一週間のこと。
毎年桜が咲くおおよその時期であることに加え、新生活のスタートとなる初めの一週間を桜の開花に例えようという試みである。
問題点としては、毎年必ず4月の第一週に桜が咲いているわけではない点だ。

桜金  ーさくらきんー
4月最初の金曜日のこと。
華金という言葉にならって、4月最初の金曜日は桜にしてみないか、という提案。
新社会人にとっては、働き始めて初めての金曜日であり、特別感を出すのにうってつけなネーミングだと思う。
しかし、先ほどと同じく毎年桜が咲いている保証がないうえ、語感も華金と比べると悪い気がする。

桜組  ーさくらぐみー
警察のこと。
警察のシンボルマークが「桜の代紋」と呼ばれていることから考えてみた。
日本の秩序を保つ組織が桜を背負っていたら、それはなんだかかっこいい気がするのは私だけだろうか。
しかし実際のところシンボルマークは桜ではなく、旭(朝日)をイメージしたものらしい。
さらに桜組という名前は、どこかの歌劇団にいそうだし、園児も所属していそうでありながら、極道の気配も感じる不思議な名前なので安易には使用できなさそうなのが残念だ。

桜文  ーさくらぶみー
桜を題材とする季節の挨拶を用いた手紙のこと。また、桜の話題を取り扱った手紙のこと。
4月に送られる手紙には季節の挨拶として桜を文章に登場させることがある。それらに名前を与えようという試みだ。
桜の話題とともに、桜の花びらを一枚手紙とともにお届けしたら素敵だな、と想像してみる。

勇み桜  ーいさみざくらー
その木の中で一番最初に咲く桜の花こと。
なんだって一番最初にやることは勇気がいるもの。桜だってそうかもしれない。その勇気を称え、このような名前を贈りたい。
ちなみに、勇み足ともかかっており、一番最初に咲くことをフライング気味だと捉え名前に込めた。

以上の五つの言葉を考案した。
新しい言葉考えるにあたって、桜のあらゆる状況を思い浮かべた。
その中で、あ、このシーンに名前を付けたらどうだろうか、という場面がたくさんあったのだが、そのほとんどが既に名前が付けられていて感心した。

例えば花見の時に座る席やレジャーシート。花筵はなむしろという名前が既にある。
他にも桜が水に映る様子や(桜影さくらかげ)、夜の桜が月の光を反射しぼんやり明るく見える様子(花あかり)、花見に行って疲れることまで名前がついている(花疲れはなづかれ)。

おいおい日本人は桜が好きすぎるって、と思わず突っ込みたくなるほど、桜に関する言葉はたくさんあるのだ。
ただ、自分で新しい言葉を考えることによって、日本語の美しい部分に少しだけでも触れることができたような気がして嬉しく思う。

最後に桜と関係あると言えるか微妙なラインの言葉を考え付いたので、それを紹介して終わりにしようと思う。

サクラ吹雪  ーさくらふぶきー
行き過ぎた広告や宣伝によって、客が離れて行ってしまう様。
客のふりをしてイベントの盛り上げや、商品の売り上げを上げるために雰囲気を偽装する人を指す隠語から。
例:あの漫画は原作の人気は凄まじいものだったのに、実写映画になったとたんサクラ吹雪となった。

text : paul
鳥と幾何学模様が好き。


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