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"空が高いと、ふと立ち止まって上を見る"|答えを急がず、曖昧なこと…

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"空が高いと、ふと立ち止まって上を見る"|答えを急がず、曖昧なことを、曖昧なまま考えた軌跡を残します。【毎週金曜日21時更新】

最近の記事

偏愛diary ―電話ボックス―

誰にでも、人には言わないけれど、どうしようもなく惹かれてしまう少し偏った「好き」はあると思う。 あまりにもマニアックでニッチだと、噛み砕いて説明しないとよく伝わらない。説明する機会もあまりないかもしれない。 ここでは、あえて偏った好き「偏愛」を深掘りして、なぜ好きなのかを考えて言葉にしてみようと思う。 ___________ 私は、電話ボックスが好きである。少しレトロな緑色の公衆電話が好きというわけではなく、電話ボックスのあの空間に、どうしようもなく惹かれてしまうのだ

    • 物語ドロップス ―無意識革命―

      あれ?スマホがない。 ついさっきまで手に持っていたのに。 台所に置いてしまっただろうか。 それともトイレに持ち込んだまま置いてきたか。 あるいは...... 1分後、スマホは僕の左ポケットから発見された。 こんなにも近くにあったとは、灯台下暗しとはまさにこのことだ。 無意識のうちにスマホをポケットに滑り込ませていたのだろう。 こういうことはよくある。 物を失くすときはだいたい気づかぬうちにどこかに置いて行ってしまうものだし、癖なんかもその類に入ると思う。 僕は整理整頓が好

      • 境界線をたどる ―窓と扉―

        リビングの窓を見ていて、不思議に思ったことがある。 外の光を入れる窓だけど、ベランダへ出入りするための扉でもあるからだ。 同じように街の中でも、窓と扉のどちらの役割も担っているガラスは結構ある。 その光景は一般的であるし、今まで当たり前のように使ってきたけれど、ひとたび2つの役割を認識すると、たちまち気になってしまう。  どうして窓と扉は一緒に出来るのだろうか?そもそも、それぞれの役割で重複点があったのだろうか。窓と扉の境界線は、どこにあるのだろうか? 私の感覚では

        • 空想コトバ手帖 ―桜編―

          いつの間にか暖かくなり、春の到来を肌身で感じる今日この頃。 この時期、多くの日本人が楽しみにしているもの。 桜。 普段、特別花に興味はないが、桜の開花情報は気にしてしまう。 そんな人も多いのではないだろうか。 そもそも天気予報で開花情報を大々的に知らせる花は他にない。 やはり、一斉に花を開かせる様子、すぐに散ってしまう儚さが人々を引き付けているのだろうか。 かく言う私も桜が好きであり、毎年楽しみにしている一人である。 ともかく、国花にも指定されているように、桜は特別な花だとい

        偏愛diary ―電話ボックス―

          "私の物語だ"と思える本と出逢った時

          本を読んだとき、「共感」という言葉を超越して、もはやなにかに溶け込んでいくかのような感覚に陥ったことはあるだろうか。 「四月になれば彼女は」という小説を初めて読んだのは5年前の夏だった。 大好きな先輩の最近読んだ良かった本という事前情報だけで手に取り、ただ、読み始めたらとまらなかった。 "これは私の物語だ"と思って、心が揺れた。 2024年3月22日から実写版映画が公開されたとのことで、まだ映画は鑑賞できていないけれど、この物語への想いを綴りたい。 ※大きなネタバレ

          "私の物語だ"と思える本と出逢った時

          卒業とわたし

          3月ももう後半、このシーズンになると自分に関係があろうともなかろうとも、「卒業」というワードを目にする機会が増えてくる。 日本に住んでいる限り、誰もが経験したことのある卒業。 しかしそこから何を思うかは人によるだろう。 人との別れが悲しいと思う人もいれば、やっと卒業できると思う人もいるだろうし、これから始まる新しい生活に不安がある人もいれば、楽しみで仕方のない人もいるかもしれない。 ただ世間一般に認識される卒業といえば、少し悲しい、涙耐えやらぬものであることがほとんどだ。

          歌えば音楽、読めば文学 ―スピッツ「若葉」を読む―

          音楽を聴いて、"この曲いいな" と感じる時、私たちは一体何を捉えているのだろうか。 メロディー、ハーモニー、演奏者の表現、テンポ、曲調、歌詞、その時の自分の気持ちや体調…。 音楽はとても複合的で、直感的に "いいな" と感じたものを具体的に言い尽くすのは容易ではない。 なんとなく聴いて、なんとなく "いいな" と感じる。この曖昧さこそ芸術なんだろうなぁ、と思いを馳せる。 そう思うと、演奏する側も聴く側も、なんだかとても高度な作業をしている気がしてくる。曖昧さの中に伝えた

          歌えば音楽、読めば文学 ―スピッツ「若葉」を読む―

          思考に休息を ―お散歩ふりかけ―

          思考に休息を与えたことがあるだろうか。 生きている限り何をしていようとも思考は我々の身から離れることはなく、常に付きまとっている。 楽しくなるような、心躍るような前向きな考えだけで頭の中をを満たすことができれば苦労しないが、それはなかなかに困難なことだ。 次の仕事がうまくいかなかったらどうしよう。春からの新生活が不安で仕方がない。過去のあの失敗はどうすればよかったのだろうか...... 考えれば考えるほど深く沈んでいく思考を止めるために、YouTubeなど簡単に消費できる

          思考に休息を ―お散歩ふりかけ―

          自己紹介|atriumについて

          人々の行き交う混雑した場所では、その場で立ち止まってしまうと人とぶつかる。 お互いを華麗に避けながら、みなせかせかと歩いてゆく。そんなに急いでどこへゆくのだ、などと思いつつ、私も、同じように人混みを足早に潜り抜けてゆく。 自分の足音などは聞こえない。なんだか、自分の心まで足音のようにかき消されてしまいそうだ。 _____________ ある美術館の展示に行った時、一部のエリアだけ天井が高い吹き抜けの空間だった。 そのエリアに足を踏み入れた人はみな、ふと立ち止まり、上を

          自己紹介|atriumについて