見出し画像

休日はダラダラしたっていいじゃない

本記事は、天狼院書店様のメディアグランプリに掲載いただきました。

「休みの日は何をしていますか?」
この質問に自信をもって答えられる人はどのくらいいるだろうか。

―午前中はヨガに行ったあと、流行りのオーガニック・カフェでランチ。家に帰って簡単に家事を済ませたら、オンラインの英会話レッスン。夜はワインのペアリングが楽しめる絶景テラスで恋人とデート。

そんな予定ギッシリの休日を過ごしている人もいるだろうが、「ダラダラと、特に何もしていない」人も多いはず。

しかし、数年前までの私は、休日に予定がないことにコンプレックスを感じていた。それは間違いなくSNSの影響だ。FacebookやInstagramには、話題のスポットで友達との自撮りをアップするキラキラ女子や、趣味のランニングで〇km走った記録をアップするアクティブ男子、得意の料理を家族で囲む幸せいっぱいのファミリーの投稿であふれていた。

自分はといえば、みんなに共有できるような趣味もない。友達も多くないし、彼氏もいない。平日にたまった家事をこなし、スマホをいじり、YouTubeを見たり、ネットをザッピングしたりしているうちに夕方になり、スーパーに買い物に行って夕食を食べて、またスマホを見たりしているうちに一日が終わる。
そんな、何の生産性もない休日を過ごしていた。
そんな自分が嫌だった。
休日を無駄にしているダメ人間、と自分を責めたり、自分の人生はつまらないものだ、と劣等感を感じたりしていた。そして何より、他人からもそう思われているのではないか、という思い込みがあった。

充実した休日を過ごしている人って思われたい。
そして、そんな私をSNSで「いいね!」してもらいたい。
そんな見栄と承認欲求に支配されていた。

だから休日に無理やり予定を作るようにした。
ある時は、たいして興味もない美術館のイベントに行った。ゆっくりと絵を眺めるふりをするが、そもそも芸術に疎い私は何の感想も浮かばない。お土産コーナーでなんとなく選んだ「映えそうな」ポストカードを買い、写真にとってSNSにアップする。
またある時は、行列のできる人気のカフェに行った。1時間ほど並び、1皿2000円もするランチプレートを注文し、ベストセラーの文庫本を並べて「カフェで読書」とSNSにアップする。実際はスマホで写真の加工に忙しく、本は1ページも読んでいない。

多趣味な自分。感性豊かな自分。
そんな自分を演じていた。
SNSの「いいね!」の数だけ、自分のランクが上がっているように感じていた。
今思えば、なんて薄っぺらで、滑稽で、惨めなのだろう。
SNS上の私の休日が、虚像であることもバレていたかもしれない。そう思うとますます恥ずかしいし、情けない。

そんな「充実した休日ごっこ」をやめることができたのには、2つ理由がある。

1つ目は、SNSの投稿頻度を減らしたこと。
それまでは平日・休日に関わらず、頻繁にどうでもいいような情報を投稿していたが、本当に面白いことや伝えたいことがあった時にだけ、投稿するようにした。普段から「あまり投稿しない人」になってしまえば、休日に何の投稿が無くても不自然ではない。そして次第に、投稿するためにどこかに行く、という行動も必要がなくなった。
SNSと距離を置くことで、SNSが自分の全てではない、ということに気が付いた。SNSは自己アピールの場ではなく、友達や知り合いとゆるくつながる場である、と考えれば、自分の休日の様子をわざわざ知らせる必要もない。
周りの人を見ていても、毎日何かしら自分のことを投稿している人よりも、休日の過ごし方が謎な人の方が、ミステリアスで興味深いのではないか。

2つ目は、自分に都合のいいように考えること。
ポジティブ思考と言えば聞こえはいいが、そんな大層なものではない。
例えば、予定もなく過ごしている時間を「ダラダラしている」ではなく「時間を贅沢に使っている」と思うようにした。
「昼まで寝ちゃった~。半日無駄にした~(泣)」と思わず、
「9時間も眠れて幸せ!美肌には睡眠が大事!」と考えるようにした。もちろん、活動的に過ごすのも素敵だが、のんびり、ゆったり過ごすのも、大人の余裕があると言い換えられないだろうか?
そうやって半ば強制的にでも、自分を甘やかし、自分を許すようになると、いつの間にか本当にそう思えるようになってきた。いい意味でテキトーになり、身体的にも精神的にもリラックスすることができた。

承認欲求には、自分への評価に対する欲求である「自己承認欲求」と、他者から認められたいと願う「他者承認欲求」がある。
以前の私は、SNSで「いいね!」をもらうことによって他者承認欲求を満たそうとしていたが、偽りの自分に対して自己承認欲求が満たされることはなかった。
それが、他人と比較せず、他人の目を気にせず、自分の思うがままに休日を過ごすようになり、心の余裕が生まれたことによって、自分を認められるようになった。

そもそも休日は、休むためにある。
そして休日は、自分や家族のためにある。
誰かに見せる必要なんてない。
幸い(と言っては不謹慎だが)、最近は緊急事態宣言で外出もままならない。梅雨も明けて、外は暑い。今こそ堂々と、家でダラダラ過ごそうじゃないか。
エアコンの効いた部屋でアイスコーヒーでも飲みながら、思いつくままに自分の好きなことだけをして過ごす休日。控えめに言って最高。

さあ、もうすぐ夏休み。
自分のための休日を、自分らしく、大事にしよう。

この記事が参加している募集

休日のすごし方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?