セミの亡骸を捨てたらサイコパスの気持ちが分かった気がした
夏のある日。ひんやりと快適な温度が保たれた部屋の窓から灼熱のベランダに目をやると、セミの死体が仰向けに転がっていた。
虫が大の苦手な私は思わず硬直した。窓を隔てた先にある、かつて小さな生命体だったそれが私を襲ってくることはない。それでも私は、大きな恐ろしい魔物と対峙した子どもの気分だった。
毎日毎日ベランダのそれを確認した。
雨で流されないか、風に飛ばされないか、鳥や虫が捕食してくれないか。いつの間にか消えて無くなってくれたらいいのに、それはずっと、同じ場所に転がっていた。