大学卒業後の性格と仕事の成功
以前は,「パーソナリティ(性格)というものは生涯を通じてある程度不変なもので,変わらないものだ」と考えられていたのですが,これまでの研究の中で次のようなことが明らかにされています。
◎パーソナリティは人生全般にわたって変化する
◎特に若い成人期くらいまでの時期は,一定の方向に変化しやすい
◎社会的に成熟する,その文化の中で望ましい方向への変化が生じやすい
◎仕事,家族,地域社会場面などでの参加や社会的役割の移行がきっかけとなりやすい
典型的なのは,学校を卒業して仕事をしはじめるという移行です。この移行によるパーソナリティの変化を示す研究は,くり返し報告されています。
キャリアとの関連
パーソナリティの発達とキャリアの成功との間の関連を検討するうえで,いくつかの問題点もあります。
◎大部分の縦断的な調査は,調査の間に数年間の間隔があり,長期間にわたる変化を追跡する。パーソナリティが短期間で変化するのか,その変化がキャリアにとって有効であるのかを検証することが難しい。
◎縦断的な調査はサンプルの欠落を生み出しやすいため,一般化可能性の問題が指摘される。また,比較的調査しやすい集団から得られたデータである場合が多い。マイノリティや社会経済的地位の低い集団から得られたデータは少ない。
新卒者の調査
特定の大学の卒業者を追跡することにも意味があるのですが,それだけだとやはり国全体で見たら偏ったサンプルになってしまいます。そこで,大学生サンプルとより広いサンプルを対象として調査を行い,比較していくことが有効かもしれません。これまでの研究で得られた知見との比較もできそうです。
実際に,数千人規模で学校卒業後1年以上にかけて5回に渡る調査を行った調査を分析した結果が,報告されています。こちらの論文を見てみましょう(Short-term personality development and early career success: Two longitudinal studies during the post-graduation transition)。
ここから先は
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?