ヒューマンHDの社外取締役に就任した企業案件を専門とする弁護士の横顔。
2023年6月、ヒューマンホールディングスの社外取締役に新しく就任した南 靖郎さんは兵庫県出身の弁護士です。専門は企業の事業再生。近年ではその知見を生かし、数多くのM&Aも手掛けています。元高校球児だったという南さんに、弁護士を目指したきっかけから社外取締役としての意気込みまでを語っていただきました。
——弁護士を目指したきっかけを教えてください。
高校1年のときの担任の先生が、熱血タイプでとても好きだったんです。3年生の選択授業で、その先生が教える科目を取りました。それが「法学入門」という授業でした。授業を通して法律のおもしろさに目覚め、大学では法学部へと進学しました。その頃から弁護士になることを目指していました。
——司法試験は苦労されたのでしょうか。
もう二度と受験したくないと思えるほど勉強しました(笑)。私が受験した当時の合格率はわずか3%。絶望的な数字に思えますが、それでも前向きにがんばっていれば合格できるはずと考えていました。それは、小学生の頃から続けていた野球のおかげです。がんばって、努力して、練習を積み重ねたおかげで、高校では甲子園まで行くことができたんです。その経験が「やればできる」という思いへとつながり、司法試験でも役立ちました。3度目の正直でようやく合格したんですが、野球で培ったねばり強さのおかげで、あきらめようと思ったことは一度もありませんでした。
——ご専門の事業再生は、どのようにして選ばれたのでしょうか?
正直に言いますと、私が自ら選んだわけではないんです。弁護士法人に入所したとき、隣のデスクにいらっしゃった先輩が事業再生を専門にしており、その案件をサポートすることが多かったんですね。それで、自然と私も事業再生を専門とするに至りました。弁護士に登録し、今年で16年目。振り返れば事業再生を専門にしたことは、運命的と思えるほど私に合っていたと感じています。
——事業再生を扱うことのやりがいを教えてください。
売上げが右肩下がりで借金まみれ。事業再生とは、シンプルに言えばそうした企業を立て直す仕事です。人間で例えるなら生死がかかっている案件です。成功すれば企業は生き続けますが、失敗すると死んでしまう。非常にプレッシャーのかかる案件ばかりですが、そのぶん成功したときはクライアントから本当に感謝されます。案件を終えたあとも、その企業の顧問弁護士になるなど一生のつきあいになることが多い。とてもやりがいのある専門分野だと思っています。
——お仕事のモットーを教えてください。
依頼者に寄り添うことです。その姿勢は弁護士になった時に先輩から教わりました。当初は意識していましたが、いまはすっかり無意識に行っています。依頼者に寄り添うことは、表面的な意向に沿うという意味ではありません。ときには依頼者にとって耳の痛い内容を伝えなければならないケースもある。依頼者は受け入れがたいかも知れませんが、だからと言って依頼者に迎合はしません。依頼者のためになることだと、信念を持って助言を行っているからです。それが私の考える寄り添い方なのです。
——このたび、ヒューマングループの社外取締役に就任されることとなりました。オファーがあったときは、どのようなお気持ちでしたか?
私を必要としてくれているのだから、大変ありがたいお話だと思いました。他の企業でも社外取締役を務めており、また職業柄、経営者へアドバイスを行うなど企業コンサルの側面も持ち合わせています。ですから同じ仕事の範疇として、「社外」という一歩引いた立場から、これまでに培った知識と経験に基づいた助言を行っていきたいと考えています。
——ヒューマングループには、どのような印象を持たれましたか?
もちろん社名は知っていましたが、お話をいただいてから、改めて企業研究をしました。いろいろな事業を展開されているのでまだ本質まで理解できていない気もしますが、多角的な事業展開は非常に興味深いビジネスモデルだと感じています。似ている企業はあっても、同じ事業展開をしている企業は見当たらない。そこが大きな強みなのではないでしょうか。
——弁護士というお立場から、社外取締役としてどのように貢献できるとお考えですか?
現実に起きている事象を踏まえたうえで、法的根拠に即した実のあるアドバイスをすることが重要だと思っています。弁護士には、アカデミックに、理屈っぽく形式的な指摘ばかりをする人もいます。それでは、依頼者はどうしたらいいのかわからない。私は実務家ですから、そのようなことがないよう、現実の世界で行動に移せるような具体的なアドバイスをしていきたいと考えています。
——これまで多くの企業をご覧になった経験を通じて、企業が生き残っていくために必要なことは何だと思われますか?
業績が下がり民事再生の申し立てを行った企業では、社員の皆さんが大きなショックを受けます。そうした中、一部の会社では数人の従業員から「現状を嘆いてもしょうがない。できることからやっていきましょう」と前向きな発言を聞くことができます。そうした社員に引っぱられ、みんながお互いにがんばろうと声をかけあうのです。その結果、再生を果たす企業も多い。
そんな会社に共通しているのは、平時から経営者と従業員がコミュニケーションをとれていることです。ワンマン経営やパワハラなどが横行する会社では、そうした従業員は出てきません。普段からコミュニケーションをとれている会社は、ピンチのときにも強いものです。いかに平時の行いが大切かということですね。
<プロフィール>
弁護士
南 靖郎さん
弁護士法人 淀屋橋・山上合同
ヒューマンホールディングス株式会社 社外取締役
※2023年6月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。
<ヒューマンホールディングス株式会社・会社概要>
ヒューマングループは、教育事業を中核に、人材、介護、保育、美容、スポーツ、ITと多岐にわたる事業を展開しています。1985年の創業以来「為世為人(いせいいじん)」を経営理念に掲げ、教育を中心とする各事業を通じて、労働力不足、高齢化社会、待機児童問題など、時代とともに変化するさまざまな社会課題の解決に取り組み、独自のビジネスモデルを展開してきました。
人と社会に向き合い続けてきたヒューマングループは、いま世界全体で達成すべき目標として掲げられたSDGs(持続可能な開発目標)にも積極的に取り組んでいきます。SDGsへの貢献を通じて、「為世為人」の実現を加速させ、より良い社会づくりに貢献していきます。