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デベロップメントコーチ兼クラブアドバイザーに就任し、Bリーグ・大阪エヴェッサを支える想い。

 2023年7月25日、Bリーグの大阪エヴェッサとデベロップメントコーチ兼クラブアドバイザーとして契約した今野翔太さん。現役を引退した今、セカンドキャリアとしての今後に対する考え方や、コーチとして大阪エヴェッサに対する思いを伺ってみました。

――デベロップメントコーチとはどのようなお仕事ですか?

 これからのシーズンを通して確立されていくコーチ業だと思います。シーズンを戦っていく中で、それぞれがチームにとって必要なことは変化していくこともあるので、その時々にチームに貢献出来ることを考えて行動していきたいと考えています。
 今(8月下旬)の段階ではアシスタントコーチに少し近いポジションで、練習中に選手の動きで特に気になることがあれば声をかけたりしています。練習前のコーチミーティングではその日の練習内容でポイントとなることを共有し、それに沿ったポイントを選手に伝えることや、練習前後には選手のワークアウトをサポートするなど、それがこの夏の主な仕事ですね。
 Bリーグが開幕したらホームゲームをメインに、ビデオ分析のサポート、相手チームのスカウティングなども担当する予定です。

――大阪エヴェッサの外国人ヘッドコーチ、マティアス・フィッシャー氏とはどのようにコミュニケーションを取っていますか?

 僕が引退する前の2年間、西宮ストークス (現:神戸ストークス)、マティアスヘッドコーチの下でプレーしていましたし、その時からコーチの指導法やマインドがすごく好きで尊敬していました。すごく人間味のあふれる方で僕は信頼しています。ですから大阪エヴェッサでも、西宮ストークスでやっていたようなフィロソフィーや考え方がベースにあるので、とてもやりやすいです。コーチの英語の発音は綺麗で聞き取りやすく、コミュニケーションが取りやすいです。

――選手からコーチへと立場が変わりました。指導者になって気づくことがあると思うのですが、その点についてはどのようにお考えですか?

 選手にどう伝えるかを考えた時に、選手時代に感じた『コーチにこう言われていればみんなが動いたのに』とか、『こういう指示ならプレーしやすかったのに』とか、『こう言って欲しかった』などが根底にあるので、そういった意味では、選手時代の経験を踏まえて細かいところを伝えていけるんじゃないかと思いますし、より選手に近い目線でのコーチングが出来ると思っています。

――ところで、現役だった頃に引退した後のセカンドキャリアについてはどのように考えていらっしゃいましたか?

 僕には以前からやりたいことがたくさんあって、その中で一番やりたいことをまず現役中に始めたのですが、それは自分のバスケットボールコートを持つことでした。僕が子どものころは『バスケがうまくなりたい』『練習がしたい』と思ってもできる場所がなくて、公園の壁にボールをぶつけたり、電信柱に向かってシュート練習をするような時代でしたから、いつか子どもから大人までが楽しめる場所を作りたいという思いがあったんですね。そういう場所がたくさん増えたらいいなと思ってそういう活動もしていましたし、選手が引退後にスクールやチームを立ち上げて指導者の道に進む人も多くなってきましたが、僕は現役中からやれるならやってみようという気持ちでいたんです。そういう思いがあったので、自前のコートを東大阪市に作って、西宮ストークスに所属していた時にはバスケットボールスクールも始めました。

現役時代のプレー風景

――今野さんは現役を引退して1年。現役時代にコーチに求めていたこと、こんなアドバイスが欲しかったなど、どういったコーチがいいなと思っていましたか?

 自分に与えてくれる役割をハッキリさせてくれるコーチの下ではとてもプレーしやすかったですね。色んなことを複雑に求められてしまうと、選手はどうしたらいいのかと、クエスチョンマークが多くなってしまいます。もちろんプロなのでコーチに求められることを全力で取り組むのは当然なのですが、シンプルなことをシンプルに伝えてくれるコーチが1番プレーしやすいですし、プレーに集中出来ます。
 僕の場合、キャリアの最後のほとんどはディフェンスでの役割が多かったのでそこにフォーカス出来ましたし、そこにプラスして「オフェンスでも3点、4点ぐらいだけどチームにとって貴重な得点を取ってこれれば」と思いながらやっていました。(本音は10点は取りにいくぐらいの選手でいたかったですけど。笑)そうすると、重要な時間帯にディフェンスを任せてもらって出場することも沢山ありました。
 ですから、僕がコーチに求めていたのは選手としての役割をはっきりと伝えてくれるような指導です。

――これからプロチームでコーチをするあたり、今野さんの理想とするコーチ像、思い描いていらっしゃる方、こういったコーチになりたいという目標はありますか?

 ちゃんとした言葉と、ちゃんとした行動・マインドで伝えられるような指導者になりたいと思います。例えば小学生や中学生だったら、その子の力を一つひとつ見極めて、その中から『君はこういう感じだから、今はこれに取り組んだ方がいいんじゃないか』などアドバイス程度にして、『これをしなさい』というような強制的なことはあまり言いたくないです。その子の可能性の幅を潰したくないですから。
 しかし、プロ選手の場合はチームでの役割がはっきりしているので、『これを求められているのだから、これをやらなければいけないよね』というシンプルな言葉で伝えたいと思います。

――もし何かに特化した指導をするなら、今野さんは何を主に指導したいですか?

 やはり、ディフェンスですね。僕自身ディフェンスが得意だったというよりもディフェンスが好きだったんです。プロの世界であれば基本的にオフェンスが得意な選手が集まりますが、そんな選手でも伸び悩む時が絶対にあるんです。そこで、試合に出られない時に『頑張ってディフェンスでの評価を上げて出場時間を勝ち取って、オフェンスも上手になったらいいよね』という指導を僕は受けていたんです。
 だからなかなか試合には出られなかったんですけど、ディフェンスで出られるようになるにつれて、いつの間にかオフェンスも上達して、バランスも良くなったという感じでした。

――大阪エヴェッサのバスケットボールについてもお聞きしたいのですが、今シーズンはどのようなチームになっていきそうですか?

 まず大阪エヴェッサには『個に頼らずチーム全体で点を取ったり、守ったりしよう』というチームのマインドがあります。ですから、一人に頼りすぎないように、個々に目を向けて僕もコーチングをしていきたいと思っています。
 マティアスヘッドコーチも、「練習中は常にゲームライクでいこう」と常にプレーのインテンシティ(強度)を求めています。トップに立つヘッドコーチが求めているマインドを、一緒にサポートしていくのが周りのコーチ陣の仕事だと思いますから、ヘッドコーチが求めていることにはプライドを持って選手に伝えていきたいですね。みんなプロ選手ですから、自分自身のバスケットボールの感覚や考えがある中で、それが右に行ったり左に行ったりしてチームが良くない方向に向かわないように、選手の表情や言動や行動も細かく見ていきたいと思っています。
 チームが負けたりするとチームの雰囲気が悪くなり、時には批判や文句が出ることもあるのを経験上分かっていますので、出来る限りチームが1つの方向を向いて戦い続けられるように行動していきたいと思っています。

――デベロップメントコーチ兼クラブアドバイザーとしての意気込みをお願いします。

 気張ってはいないんですが(笑) 移籍で大阪エヴェッサを離れた時から、いつかまた大阪エヴェッサに戻ってきたいと思っていました。もし戻れたら何か一つでも貢献したい、何かできたらいいなと思っていた時にデベロップメントコーチ兼クラブアドバイザーとしてオファーをいただきました。プロ選手として12年も過ごし、育ててくれたこのチームでどんな立場・役職であっても本当に力になりたいと思っています。

――最後にファンの皆さんに『バスケットボールのこんなところを見てください』という、観戦においてのアドバイスを一言お願いします。

 どうしてもオフェンスばかりを見てしまうと思いますが、ディフェンスも是非ご覧になって欲しいと思います。といっても展開の早いスポーツですので、細かくまでは見れないかもしれませんが、ディフェンスあってこそのオフェンスですし、オフェンス以外のところも是非ご覧になってもらって、バスケの楽しさ、面白さを感じてもらえれば嬉しいです。
 例えば、よくある言葉ですけど、『ディフェンスで流れを呼び込んだ』とか、『リバウンドをハッスルすれば流れを呼び込むことができる。それを頑張ろう!』という美学的な言葉を聞いたことがあると思います。それは実際の試合においても本当にあることです。ですから、数字には残らないけれど、プレーで流れを呼び込むためにハッスルしている選手のプレーも見ると楽しいですよ。

<プロフィール>
今野 翔太 こんの・しょうた
生年月日:1985年3月29日/出身地:大阪府摂津市/出身校:大阪学院大学/選手歴(Bリーグ):2007-13大阪エヴェッサ、2013-14信州ブレイブウォリアーズ、2014-20大阪エヴェッサ、2020-22西宮ストークス(現:神戸ストークス)/2020年9月よりバスケットボールスクールをスタート/2022年7月に現役引退を発表し、今夏からプロ選手生活15年の経験を基に大阪エヴェッサのデベロップメントコーチ兼クラブアドバイザーとしてプロの現場に携わっている。


2023-24シーズンスローガン



※2023年8月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。
 西宮ストークスは、2023年より神戸ストークスに名称変更しております。

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