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古代ローマ人な夜

※異国情緒なお写真お借りしました。
風呂上がりに炭火焼きを古代ローマ風に頂いた日記(長い)

6月の週末。庭の入り口にあるローズアーチの枝が邪魔だとクレームが入った。夫から。
飛び出したバラの枝から張られたクモの巣にひっかかって不快だと。

私や子供たちは、誰かさんのように高身長ではないので特に気にしていないのだけど。
そもそも君はめったに庭に降り立たないのに、と一瞬ムッとするけれど、ちょうどお隣との境界の草の茂りも気になってたとこだった。

お庭をキレイに保つのは私の役目。
一家でガーデニングなんぞ楽しむのは私だけだから。
なぜ夫は気にしたのでしょう。(伏線)

ガーデニングの基本は除草&剪定。

春のお洒落イングリッシュガーデンも、
日本の夏には伸び放題になりがち。
レシプロソー(電気のこぎり)と剪定ばさみを手に片付けていく。

生育旺盛なつるバラ「アンジェラ」。通行の邪魔になるところは全て伐採。
栄華を誇ったクレマチス「プリンセス・ダイアナ」もばっさり剪定。

クレマチスは品種によって強剪定・弱剪定の推奨基準があるのだけれど
切らないよりは切ったほうが秋の開花が期待できるようです。(何かの栽培書の受け売り)

一通りキレイにして枝をゴミ袋にまとめ、ウッドデッキに腰掛け一服していると、
見計らったかのように、夫が耐火レンガの簡易バーベキュー炉で炭火を起こし始める。
甚平など着込んで粋な職人風だ。

最近私よりもご活用なさっているかもしれない。
炭火で肉を焼きながら一杯やるのが楽しいみたい。
そんなご熱心な姿にくすりとしながら。

汗だくになって作業したので私もお腹が減った。
とりあえず軽いビール(バーリアル緑)で喉を潤し、
川を遡上するサケを待つヒグマのように、タレ味の焼き鳥が焼けるのを待っておこう。

バーリアル緑
ベストプライスの逸品

まだ日が高い6月の夕べ。
涼やかな風に混ざる炭火の香りが心地よい。

ここで、先ほどからちょこまかとくっついては泥遊びしていた末っ子のベビィ(3)から突如「おうち帰る」宣言。

こんなに途方もなくドロドロのままでは家に上げられない。
「赤ちゃんを風呂に入れてくるわ」と泣く泣くバーベキュー会場を退場。

かくしてママと赤ちゃんは夕方のお風呂でさっぱりし、
パジャマ姿で扇風機にあたりながら一階の寝室の窓からお庭の炉端大将を眺める。
(バーベキュー炉と寝室の掃き出し窓は少し離れて向かい合う形になっている。)

おもむろに窓を開け声をかける。
「もし。そこのお方、お肉を頂けません?」

キャンプ用のステンレスの皿に盛られた香ばしいタレ味焼き鳥。

窓際のベッドに枕を重ね、カウチのように背もたれをしつらえて寝そべりながら頂く肉の美味さといったら!
「ワタシ今、古代ローマ人の気分よ」お行儀が悪いのも言い様である。

「満腹でも吐かなくていいからね」

古代ローマの宴会は贅を尽くしたもので、フラミンゴの舌やラクダの蹄など遠方の珍しい食材を集めた料理が振る舞われ、貴族達は寝そべりながら食事を摂っていた。
満腹になっても食べ続けるためにクジャクの羽でのどをつついて吐き、また食べ続けたそうな。

なんと美食を極めし退廃的な貴族たち。
そんな古代ローマ人についての教科書の記述を信じていた。
現在の学説では、寝そべるのは稀で、わざと吐くというのは誤解ではないかというのが有力だそうだ。
しかし欲にまみれた倒錯行為なのにクジャクの羽ってのがなんともエレガント。

さて食事中に吐くとか気持ちの悪い話をしてしまったが、
そろそろメインの牛もも肉も焼き上がったようだ。
(ローストビーフ用なのでお手頃価格で脂身少なめ)
これが焼けると古代ローマ貴族も炉端大将も、撤収してダイニングで座ってモダンに頂くことにする。

七本槍[石田三成]とイタリア赤ワイン

お供はローマつながりでイタリア赤ワイン[コンテント・ヴィーノ・ロッソ]
高そうだけどamazonワイン福袋の一本。(お値段、戦国の智将の三分の一)
シラーズとサンジェベーゼというぶどうの組み合わせでしっかりとしつつもフレッシュ&フルーティな味わい。

安いお肉も炭火で焼くと高級感マシマシ。
噛みしめる赤身の旨味とのマリアージュと楽しむ。

さてこの話。どこにオチを持ってこようかと思ったのだが。

さっきまできみが一番搾り糖質ゼロを飲んでたのを見ていましたよ。
私もバーリアル糖質オフだったけどね。

お互いもう若者とは言えない年齢にさしかかってきている。
焼く肉も最近じゃめっぽう脂身少なめ・赤身中心だ。
お酒もさっぱり系、食も細くなってきたのに贅肉は増えるばかり。

ずいぶん歳を取って遠くまできた気がするけれど、
暮らし向きは一向に楽にならないし、
原発反対だなんて、申し訳ないけど反対せざるを得ないほど物価上昇に怯えている我々はとても古代ローマ貴族にはなれそうもない。

ろくな贅沢も自由もないが、それでも汗水垂らしながら働き、休日にはささやかな美食を楽しむこの日々を微笑ましく思う。
人生のメインディッシュがきみのお手製炭火焼というのもまあ上々だ。
いつかローマ貴族に転生しても(するのか)この日々が楽しかったとか言っちゃうぜ。

と良い感じで締めようとしたけど
お風呂入ったのに再びお庭に飛び出して泥遊びしだしたベビィを
二度目の風呂に浸ける。靴にも砂詰めやがって💢
これが親の現実。


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