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サイバーステップ初?のおバカゲー移植においてオミットされたヒロイン問題(ネタバレ感想&エロ要素有)


前書き

 サイバーステップが移植するエロゲーの改変は多岐に渡る。キャラクターや舞台設定の変更、シナリオ自体の改変、キャラグラやスチル絵の刷新など多種多様な変更が行われるのだが、今回はその中でもとりわけ珍しい『原作からキャラクターの立ち絵やイベントをオミットする』という改変が行われた作品について取り上げていきたい。

 今回紹介する作品は2024年4月25日に配信された『救済!粛清サークル ~The Purge Club~』だ。原作は2014年3月28日にスワンアイから発売された『私たち・花のオシオキ部!〜やられたらヤり返す…エロ返しだ!〜』(公式サイト。18禁なのでアクセス注意)。原作タイトルからして分かると思うが、ドラマ『半沢直樹』のパロディだ。半沢直樹の第1期は2013年のドラマなので、まあギリギリ死語にはならないタイミングだろう。
 ちなみにこの原作もシオリノコトハと同じく10年以上前のゲームであるため、当然のように対応OSがWindows8までである。

 いつものように元になったゲームを原作、PandaShoujo製はPS版と記述する。この記事を書いている時点でPandaShoujo作品としては最新作である事を鑑みて、致命的なネタバレは無しでいこうと思う。

原作について

 原作のあらすじ

学園で起こる事件にズバッと仕返し!?オシオキ部!

教師によるセクハラ、先輩のイビリ…
中には泣き寝入りしてしまう人達も多いが…そんな人達の代わりに仕返しをするのがオシオキ部だ!!

学園では成績優秀で人望も厚く、人の先頭に立つ様な人物…
そんな小鳥遊 成菜だが、本当は超人見知りで気弱な子。
周りに勘違いされたまま彼女は祭り上げられ…そんな中でオシオキ部が設立してしまう。
気弱な彼女に一任された、仕返しの依頼の数々を…彼女達は一体どうするのか!?

公式サイトから引用

 サイバーステップが移植する原作はブランドの方針が似通っているせいか、基本的に雰囲気が重かったり、エロ方向に特化しすぎていて細かいことを考えるのが野暮だったりといったゲームが多い。しかしこの原作はおバカなノリのゲームである。これはサイバーステップが取り上げる題材としては結構珍しいことだ。全編通してアホな展開がずっと続くので、これまでのPandaShoujo原作に慣れている人ほど驚くと思う。

 登場人物の紹介に入りたい。全員で6人いるのだが、原作はよく言えば個性的、悪く言えば癖が強いキャラクターデザインをしている。PS版はここ最近の作品同様生成AIでリファインしているためなんとも無個性なデザインになってしまったが、原作に関して言えば好き嫌いが分かれそうな絵柄になっている。ちなみに原作とPS版ではキャストが全員変更になった。

  • 小鳥遊 成菜(たかなし せいな 原作CV:柿沼るい PS:奥寺かすみ) 成績優秀で人望も厚い女子学生。本来は気弱だが、頼まれたら断れない性格のためあれもこれもと相談に乗っていたらいつの間にか人気者になり祭り上げられていた。彼女の人気を妬んだ学生会長の策略によってオシオキ部の部長にさせられてしまう。

原作成菜。服装といい髪型といい独特のデザイン
PS版成菜。どことなく宝石の姫騎士のシェリルに似ている
  • 天内 姫夏(あまうち ひめか 原作CV:さとうもも PS:犬神ひなた) 成菜たちの通う西伊勢学園の学生会長。唯我独尊タイプで、何かというと「天内・○○・姫夏」と自己紹介する。○○には自身を褒めるための英単語が入る。グレートとかエレガントとか。気に食わないことがあると学生会書記に窓から飛び降りるよう命令する癖がある。嫉妬深く、人気のある成菜をハメるためオシオキ部の部長に任命する。

原作姫夏。これもやっぱり独特
PS姫夏。ボイスはこっちの方がイメージに合っている
  • 豊田 郁葉(とよた いくは 原作CV:箱森ゆめ PS:桜乃たると) クラスの委員長兼風紀委員。真面目で責任感があるが、意外と融通が利く上に結構打算的な性格。明るくノリもいいタイプで、気になった相手に対しては積極的にアプローチを仕掛けてくる。料理の腕は微妙だが、見てくれはともかく味は悪くないらしい。初登場時にパンツ丸出しのスチル絵が入る破天荒っぷりを見せつけてくる。

原作郁葉。どうでもいいがこの背景は別作品でも見たことがある
PS版郁葉。だいぶ癖が減った
  • 駒田 奈々歌(こまだ ななか 原作CV:小椋ちよ PS:有栖ねね) 成菜の後輩で、オシオキ部3人目のメンバー。成菜のことが大好きで何かというとくっつきたがる。何故か猫耳カチューシャを付けており、普段から会話の中にニャーニャーと鳴き声を混ぜてきて猫っぽい。過去のトラウマから男性が苦手だが、作品のノリ的に割と軽く流される。

原作奈々歌。何故猫っぽい言動をとるのかは不明
PS版奈々歌。猫耳カチューシャどこ行った?
  • 高木 蓮李(たかぎ はすり CV:箱森ゆめ) クラス担任の美人教師。真面目でパッと見はキツいが実際は学生に対して優しい。可愛い物が好きで、寝るときは熊のぬいぐるみを抱いているらしい。PS版移植に際して立ち絵とイベントをカットされたヒロイン

蓮李。意外とお茶目なところもある
  • 宮内 秀明(みやうち ひであき) 主人公。成菜の幼なじみで一番の理解者でもある。元々気弱な成菜が頼られすぎて無理していることを心配していた。成菜が心配でオシオキ部の2人目のメンバーとなる。変態だがそれなりに節度はわきまえている。

 以上である。学生会の陰謀によってオシオキ部なる謎の部活の部長にされてしまった成菜と秀明だったが、後輩の奈々歌も加えた3人で日々舞い込むオシオキ依頼をこなしていくことになる。
 基本的には困っている生徒や教師からオシオキ部に「○○をなんとかして欲しい」と依頼が舞い込む→事態解決・オシオキの繰り返しであり、その際に選択肢に応じてヒロインとのエロシーンが入ったり入らなかったりする。
 依頼の解決方法及びオシオキは本当に馬鹿馬鹿しいものばかりである。

  • 秀明が体を白く塗って教室の壁に擬態して窃盗犯を捕まえる

  • 秀明が生理用ナプキンに自分の手首を切った血をかけて使用済みに見せかけ不審者を釣り上げる

  • 媚薬を使って女子生徒に手を出す悪質な学生を学校の時計塔から全裸で吊るす

  • 昼休憩にメタルを流すのをやめさせようと試みたら床に撒かれていたオイルで転んでコンポごと破壊する

 こんな滅茶苦茶な展開が釣瓶打ちされる。このノリについていけるかどうかでこの作品の評価が変わってくると言っても過言ではない。ちなみに依頼解決やオシオキ以外にも馬鹿展開は大量に存在するので、人によっては胸焼けがしてくるかもしれない。秀明たちが通う西伊勢学園は進学校らしいが、その割に変質者と頭のおかしい人間が大量に出てくる。

ちなみに警備員も警備員である

学食を取り合ってFPS部と極道部とスプラッター部が三つ巴の抗争を繰り広げ、軍用ヘリが食堂内に突っ込みBB弾や日本刀やチェーンソーで学生に怪我人が出る』というシナリオを許容出来るかが分水嶺になるのだろうか。あと登場人物がやたらゲロを吐く

FPS部と極道部とスプラッター部の部長
スプラッター部の部長の使うチェーンソーのSEが異常にうるさい上に長い
作中で3人くらい吐いてる

 EDについてはどのキャラもそれなりに一波乱を迎えつつもハッピーエンドを迎えるものばかりだ。一部キャラのルートによっては途中の選択肢をミスするとバッドエンドになるのだが、単なる分岐に過ぎないためシナリオやCGのコンプリート用という意味合いが強い。ちなみに各ルートに入ると(奈々歌ルート以外は)基本的に他のヒロインが空気になる。
 ルートによっては諸悪の根源のキャラクターを屋上からダイブさせるオシオキをやっているのだが、死んだかどうかは定かではないし登場人物も気にしていないというアレな展開を迎える。
 それにしても、蓮李ルートは他キャラに比べて多少エロシーンが多い以外取り立てて問題があるような内容には思えなかったのだが、なぜPS版移植にあたって存在がオミットされてしまったのだろうか?

PS版について

 実際に移植されてみてどうだったのか。大筋では変わっていないのだが、前作『ココロシャッフル - Spirit Swap -』と同じく舞台が『学園』から大学になっている。西伊勢学園は西伊勢大学になったのだ。
 しかし相変わらず異様に管理された学校生活を送る羽目になる。クラス分けがあり、指定された席があり、担任がおり、ホームルームがあり、プール開きがあり、クラス全体の時間割がある。そんな大学があるだろうか? 学校や学部、学科によってはあるのかもしれないが、それを一般的なキャンパスライフと呼ぶのはどうにも据わりの悪い感覚がある。この辺を手入れしないならいつもの『学園』で良かったのではないだろうか。

 また生成AIで描き直されたスチル絵にも違和感がある。原作、PS版とも最初に学生会にはめられて窃盗犯を誤認逮捕した後、成菜は姫夏たち学生会に対して啖呵を切って戦いを挑む。その際の原作の成菜は自信がなく表情は引きつり、突き出した指が曲がっている。テキストの通りだ。しかしPS版のスチルでは原作と同じテキストなのに自信満々でまっすぐ指を突き出している。グラフィックが合っていない。

原作のシーン。自信が無いため顔が引きつり指が曲がっている
PS版のシーン。弱々しくくの字の様にまがってしまっている指どこ?

 なお、この後原作にあったOPはカットされている。割と気合いの入ったOP映像で結構好きだったため、なくなってしまったのは残念である。
 基本的な設定は原作準拠なのだが、一応移植に際していくつか改変された設定がある。

  • 窃盗犯が盗む物が秀明の履いた女物の下着から着用していた靴下へ

  • 女性の下着を盗む変質者が限定キーホルダー好きのヤンキーへ

  • 郁葉の設定が『中学・高校と委員長をやっていたから今でも委員長と呼ばれている』ことに。自分でも委員長だと思い込んでいる。ちなみに初登場時の名前のふりがなが間違っている

「あいな」ではない。原作もPS版もちゃんとふりがな付で「いくは」と書かれている
  • オシオキはシカエシじゃない、という台詞が入った。個人の恨み辛みを晴らすためにオシオキするのは違うのではないかと秀明は考える

  • 海外製の媚薬を使って女子に手を出していた男が海外で催眠術を習ってきて、女子に「お兄ちゃん」と呼ばせるように

 ただ、蓮李のシーンをカットしたのにテキストを差し替えていないせいか話の整合性がうまく取れておらず、プレイしていると「え、どういうこと?」となるシーンが入ってくる。先生との幽霊騒動とは一体何だったのか、原作をプレイしていないと分からない。

作中で語られることのない「先生との幽霊騒動」

 エロシーンをカットするのはいつものことだが、テキストだけ差し替えて音声はそのままみたいなところがあるため、やたら艶っぽい声を上げながらノートに文字を書き連ねる奈々歌みたいな異様な状況が出てくる。
 ただそれ以外のエロシーンはほとんどまるごとカットされており、奈々歌のシーンだけ妙に浮いている。成菜と姫夏のヌルヌルローション尻相撲対決も単なる手押し相撲になってしまったため、馬鹿度が下がってしまった。
 エンディングに関しても原作と大幅に違うようなことはなく、少々ブラッシュアップされたり黒幕を学校の屋上からダイブさせる展開がなくなったりと行った程度の改変しか行われていない。

カットされたエピソードとその理由

 前述の通り、オミットされた蓮李のルート及び彼女の個別エピソードは取り立てて問題のある内容とは思えない。ネタバレになるが解説してしまおうと思う。

蝕みの面事件
 蓮李が残業をしていると、一日に一つずつ私物が無くなるという事件が起きる。校内には蓮李と警備員以外誰もいないので、他の人間がやったとは思えず幽霊の仕業ではないかと思った蓮李がオシオキ部に相談に来る。
 西伊勢学園には『蝕みの面』と呼ばれる怪人が現れるという怪談があった。般若面を被った謎の人物で、気に入った女性の私物を毎日一つずつ盗み、最終的にはその女性の体すら盗んでしまうという。

蝕みの面さんのイメージ図。うーんダサい

 夜の学校で張り込みをする秀明たちの前に不審者が現れるが、それは警備員とどこからか入り込んだ別の不審者の2人だった。その2人が毎日のように蓮李の私物をかすめ取っていっていた、というオチである。ちなみに『蝕みの面』は本当に存在し、不審者の片方の服を剥ぎ取ってどこかへ去っていく。

『個別ED』
 最近校内で調子に乗っているヤンキーグループがいた。グループのリーダーは理事長の息子であり、権力を笠に着てやりたい放題をしている。彼らにオシオキすることになった秀明だが、リーダーは思った以上に小物だった。しかし権力が大きいゆえなかなかオシオキが上手く行かず、秀明はヤンキーグループとトラブって怪我をしてしまう。蓮李に何度か介抱してもらいながらいいオシオキ方法を考える秀明。
 トゥルーエンドだとリーダーの家に乗り込んで母親と直談判、家では猫を被っている息子が学校でどのような態度を取っているのか確認してもらい、リーダーは丸刈りにされて京都と奈良の寺めぐりの旅に出される。ちなみに理事長は婿養子なので嫁には頭が上がらず反対出来ませんでした。後は秀明と蓮李がくっついてめでたしめでたし。
 バッドエンドだと秀明と蓮李がいい仲なのが理事長にバレてしまい、蓮李は学校を辞めて田舎に帰る。なぜか秀明もついてきて、蓮李の故郷で二人して農業をやって終わり。「最近は野菜プレイにはまっている」らしい。馬鹿野郎共であるがバッドエンドなのに謎の読後感の良さがあった。

 エロシーンさえカットすれば普通に差し込めるようなイベントだろうに、何故削除されてしまったのか。原因は想像するしかないが、多分コストカットなのだろう。PS版には原作にあったOPや目パチもないし、衣装の差分もない。予算をかけないで移植したいという思いから蓮李はオミットされてしまった。そう考えるのが妥当ではないだろうか。

余談

 ちなみに原作は某KOTYe2014年にエントリーされている。選評自体はそれなりに頷けるところもあるのだが、さりとて「○○だからこのゲームはクソゲーです」と断言するには少々主観がキツすぎるし、何より欠点がやたら針小棒大に書かれていて大げさすぎる。何でもかんでも『これはバカゲーだから』で済ませるのはセコいやり方かもしれないが、荒唐無稽な展開がずっと続いていたのにあれこれ取り上げて『これはありえない・現実的ではない』と言い出すのはフェアではない。実際にゲーム内でそういう展開があっても許容される程度の雰囲気や空気作りは出来ていた。
 また、ギャグが肌に合わないのは個人のセンスによるため仕方ない部分があるが、ゲーム内容をちゃんと把握出来ていないのは大問題である。

このゲームを選評者以外でプレイした人がいたら教えていただきたいのですが、ハーレムルートラストの主人公と友人の掛け合いの意味がよく分かりません。

 多分、母親?か何か年上?のキャラクターの事を言っているのだと思うのですが・・・ひっそり、教えてください。

KOTYe2014 私たち・花のオシオキ部!〜やられたらヤり返す…エロ返しだ!〜 選評より

 名前を見れば分かることだが、それは蓮李ルートで出てきたヤンキーの母親のことだ。秀明がヤンキーの素行調査のため自宅を訪れた際、母親が年に似合わず若く美人で欲情するというシーンがある。名前が出てきた時点ですぐに「ああ、こいつあの母親と出来てたのか」と想像が出来る。選評するならちゃんとプレイしなさい。10年前の選評に今更グダグダ言うのも野暮なのかもしれないが。

 なお、このゲームはコミカライズ…というと語弊があるが、漫画になっている。タイトルは『ド天然生娘達がヤラれハメられ放題!?』。ゲーム内のグラフィックをコマ割りのように割り振ってフキダシに台詞をいれた、いわゆるアニメのフィルムコミックのような形式である。
 1話30ページほどの短編が各220円で全3話。キャラグラと名前だけは同じで設定は大幅に異なり、オシオキ部も出てこなければ秀明は単なる竿役としての立場でしかない。
 ゲーム自体の表情やポーズに差分が少ないため、ページのほとんどがコピペというすさまじい画面構成になっている。内容はというと、転校してきた宮内秀明君に言い寄られて各ヒロインが即座に股を開くというどうしようもないほど頭の悪いシナリオだった。これを全3話660円払って買うくらいなら、その分のお金で牛丼でも食べに行きましょう。

こんなもんは序の口だぞ

終わりに

 今回の検証作業は楽しいものだった。原作自体だいぶイカレているのもあったし、ヒロインオミットでPandaShoujoに出してくるサイバーステップの姿勢に思いを馳せることもあった。某KOTYeの選評にイラついたり漫画の出来が異様だったり、話題に事欠かない。BGMにいかにも半沢直樹っぽい曲がある(ご丁寧にタイトルも“倍返しだ!”)のもギリギリのラインを攻めていて笑えた。
 感想としては、原作は絵的な個性が強すぎるのとシナリオが荒唐無稽すぎて合う合わないがはっきりと分かれるものだと思った。個人的にはシナリオ自体は結構楽しめたが、キャラグラは合わなかった。PS版は学食での死闘は再現したのにそれ以外が大人しくなりすぎてチグハグな印象を受けてしまった。全年齢化するならするで、もっとアホみたいな展開を沢山入れてしまっても良かった。ただ、次の移植作品はもう大学を舞台にしなくていいと思う。あまりにも現実離れしすぎている。漫画版については何も言うことはない

 最後に、漫画版の一種類しかない宮内秀明君のコピペ画像の連打でこの記事を締めたいと思う。

宮内
秀明
女の子にジェットストリームアタックを仕掛けるぞ

 次回は記念すべき10回目となるので、同じくサイバーステップの記念すべき作品を取り上げたいと思う。

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