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コロナでどう変わった?精神科作業療法の集団活動

精神科作業療法士歴6年目のくのいちです。

今回は、精神科作業療法とコロナについてお話をしたいと思います。病院によっても違うと思いますので、私の病院で起きた変化をお話いたします。最初は作業療法についてのご説明をしていますので、この記事を読んでいらっしゃる方がOTの方なのであれば、目次の「コロナ禍に入ってからの変化」からご覧くださいませ。

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作業療法士が意味している「作業」について

作業療法士と聞いたことはあるけど、よくイメージが湧かないという方がほとんどだと思います。

よく、「作業療法士」と聞いて、「なんか編み物とか工作するの?」と思われることがあります。しかし、作業療法士が意味している「作業」は、「手工芸」という意味ではありません。作業療法士という言葉の中に入っている「作業」は、起きてから寝るまでに行っている全ての活動のことを言います。

食事・更衣・整容・入浴・排泄・移動・コミュニケーションなど、全てのことを「作業」と呼んでいます。

作業療法士はこの作業を、治療のための道具として利用しています。

作業療法には4つの領域があります。身体障がい・精神障がい・発達障がい・老年期障がいです。この中でも、精神に携わっているというのが作業療法士の特徴と言っても過言ではないでしょう。

心と体の両面からサポートする、それが作業療法士です。精神科の作業療法には個別のリハビリと集団のリハビリがあります。


精神科作業療法には個別と集団がある

精神科には個別の作業療法と集団活動の両方があります。患者さまの症状や目的、性格、本人の意欲に合わせて、その方に必要な活動を選びます。

具体的な活動項目は

【個別】
手工芸、折り紙、塗り絵、編み物、貼りえ、書道、レジン、クラフト、アンデルセン、陶芸、絵画、散歩など

【集団】
風船バレー、サッカー、茶話会、スポーツ、散歩、カラオケ、合唱、体操、料理、園芸、バス旅行、その他のレクリエーションなど

↑ 場合によっては同じ活動でも個別と集団を使い分けます。例えば散歩。対人緊張が強い時は作業療法士と2人で散歩をするので個別の活動ですが、集団に慣れていく時期に他の患者さまも一緒に散歩に行けば集団になります。患者さまのゴールによって活動の中身を変えていきます。

その他精神科の作業療法では認知行動療法やSST、心理教育等に力を入れている病院もあります。


コロナ禍に入ってからの変化

コロナ禍で作業療法に大きく影響が出たのが集団活動です。

・他患との物品共有がダメになった

風船バレーの時の風船、カラオケの時のマイク等、不特定多数の患者さまが触る物の共有はNGになりました。作業療法の前後では必ず全員手指消毒を行います。活動中に使用した物品に関してはアルコール消毒をして元に戻しています。

物品の利用が制限されることで、活動内容に工夫が必要になり、かなり頭を使います。レクリエーションのマンネリ化・・・。ぜひ、「うちの病院ではこうしている!」というご意見をいただけたら嬉しいです。


・活動時に距離を大きく取るようになった

物品を用いない活動(体操や合唱など)を行う時も、人と人との距離は常にあけるようになりました。患者さま同士の距離が最低1.5mと決まっています。だからだいぶ広い場所でも、いっぱいいっぱいになります。それに、後ろまで声を届けなくてはいけませんから、常に全力の大きな声を出します。もちろんマスクをつけているので、かなり息苦しいです。

難聴の方とお話する時は口を大きく開けて話すことでコミュニケーションを円滑にしていたのですが、マスクをつけているのでそれも難しくなっています。


・体調不良時は即作業療法不参加

少しでも体調が悪い時は患者さまが作業療法に参加してはいけないことになりました。熱がなくても、調子が悪い時は不参加です。今まで、認知症治療病棟では1回断られても誘い方を変えて3回くらい積極的に誘っていたのですが、そこまでの、良い意味でのしつこさがなくなりました(^-^;


その日の状況を見て活動内容を入れ替える

私が勤めている病院では病院独自のコロナの緊急度のステージがあり、一番高いステージではOT活動が全面的に中止となっています。5段階ステージです。そのステージが日によって変わるので、活動内容を組み立てていても、当日に変更になることが当たり前になりました。熱発者が多い時や体調不良者が多い時なども急遽内容の変更や、活動中止になっています。とにかく臨機応変な対応が必須です。


・院外活動はことごとく中止に・・・

バス旅行や外気浴など、屋外での活動がことごとく中止になっています。他の病棟と関わるような、運動会や病院全体でのイベントも中止です。理由の1つは、移動があることで感染リスクが高まるということと、看護師さんたちが体調不良者のケアで追われ、手一杯になっていることです。

田舎の精神科なのでまだ病院内で感染者は出ていないのですが、37.5℃以上の熱発が続く患者さまやスタッフがいるとPCR検査をすることになっているので、看護師さんたちは業務が増えています。高齢の患者様は抵抗力が弱いので、結構な頻度で熱発します。ですから結構な頻度で検査をしています。

直接コロナの感染者は出ていなくても、一人一人の看護の負担は増えているなと感じています。



コロナ禍の作業療法の対策

様々な制限を受けるようになりましたが、それでも患者様の楽しみを奪うわけにはいきません。できる範囲で対策を取って集団活動を行っています。

・物品を使い捨ての物にする

例えば、玉入れの際のお手玉を、新聞紙をまるめた物を使うようになりました。新聞紙なので活動が終わればすぐに捨てることができます。お手玉を使うよりも衛生的です。棒体操の時の棒は、管理栄養士さんに協力を得て、とにかく沢山のサランラップの芯を用意しました。体操が終わると処分をします。


・院内の飾りつけを豪華に

院外活動がなくなってしまったため、季節を感じることができるような飾りつけをしました。七夕の時には竹を、クリスマスの時は模造紙にツリーを書いて、病院の柱に貼り付けました。毎月病棟の飾りを変えます。病棟によっては患者さまの異食が心配され、そういった飾りつけができないところもありますが、できる範囲で少しでも季節感をと思ってやっています。


・個別の活動を充実させる

集団活動が急遽中止になった時は、状態が気になる患者さまのところに個別の作業療法に行っています。時間が限られているのでできるだけ均等に皆様と関わりたいと思っているのですが、正直それもなかなか難しいです。しかし少しでも患者さまがQOLを上げることができるように、積極的にお話しにいきます。


さいごに

作業療法の充実という面では、コロナ禍では寂しいものを感じます。しかし、こうやって私の病院のように、まだ感染者が出ていない病院でも、コロナの影響で医師・看護師をはじめとする医療従事者の負担は増えています。

作業療法を行いたいのはもちろんですが、いち病院のスタッフとして、できる範囲で他の職員のサポートもしていきたいと思っています。全員で助け合うべき時です。

入院患者さまも病院の中でもの足りない思いを感じていますが、皆様コロナについては納得とご理解をいただいています。イベントがなくなることで不穏になる患者さまはおらず、感謝しています。患者さまも含めて、病院が一丸となって戦う日々が続いています。

1日も早くコロナが収束して、皆で楽しく活動できる日が来ることを祈っています。


ここまで読んでいただきありがとうございました。あなたの周りではコロナによってどのような影響が出ましたか?また、その対策はどうされていますか?ぜひコメント欄やTwitterへのコメントなどで教えていただけると嬉しいです。


【活動紹介】

CAMPFIREコミュニティ

病院内だけでなく、地域で作業療法を行っていくために、切り絵作家として独立したいと思っています。精神障がいや発達障がいのグレーゾーンの方を支援していきたいと思っています。この活動を応援してくださる方がいらっしゃいましたら、詳細をご覧いただけると嬉しいです。↓



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記事を読んでくださりありがとうございました。辛い思いをしている人が少しでも楽になりますように。